まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

上場前の株式の特定者への売却

2014-09-14 03:02:19 | M&A
株券上場前の第三者割当増資や売出は規制されていますね。即ち「企業の円滑な資金調達の要請に応えつつも、株式上場前に行われた第三者割当増資や株式移動による特定の株主の短期利得行為を極力排除し、株式上場制度の透明性・信頼性を確保する観点から」一定の規制を受けることになります。この事項に該当する場合には、上場申請不受理、受理取消、又は追加的情報開示が必要となる場合があります。例えば、今年2014.11.1を上場予定日とした場合、昨年の2013.4.1から上場予定日の前日10.31迄が制限期間となります。11.1を上場予定日とすると上場申請日は3か月前の8.1ぐらいまでに行う必要がありますので、実際上の制限期間は7.31ぐらいまででしょうか(上場申請したら動けなくなりますのでね)。しかし、制限期間と言っており「禁止期間」ではありません。ですから、短期売買禁止(上場日以後6か月のmandatory lock-up)と、透明性・信頼性を確保すれば可能ですね。透明性確保については、上場申請直前事業年度末日から遡る2年前の増資・売出・stock option行使、特別利害関係者等の株式等の移動の内容は、上場申請書Iの部及び有価証券届出書の株式公開情報にて開示が義務付けられています。

制限をクリアーするには、上記の①Lock-upと②開示が必要ですが、もうひとつ重要な事項があります。それは価格です。上場のときの公募・売出価格はブックビルディング(+入札により価格を決める方式もありますが、あまり行われていないと思います)により決まりますので、いくらになるかわかりません。第三者が上場前に購入する価格が、高ければ購入者は損しますし、安ければ得をします。でも問題は、この取得価格が上場時の価格形成をゆがめてしまうという重大な問題があります。

○ では、上場前に第三者へ株式の一部を売却するにはどうすればいいでしょうか。例えば、グループ会社で100%近い株式を保有しているけれども、有力事業パートナーに20%ぐらい売却して、上場後の事業の方向性と上場価格を有利に展開したいとか、上場前に株式を売却して譲渡益を得たいという場合ですね。それには、一工夫して、SPCを設立して、売却企業は一定額でそのSPCに株式を売却して、買主の取得価格は上場時の公募売出価格にすればいいのですね。具体的な方法について見てみましょう。

1) まず、20%ぐらいを長期保有・事業参画を考える、買主・買収企業を探すことですね。Majorityを売却すると上場できなくなりますから、20%ぐらいですね。上場すれば2位ぐらいの株主になりますから、経営にそれなりに影響を及ぼせますし、将来売主企業の体力が落ちたら徐々に買い増して、30%ぐらい保有すれば、株主分布にもよりますが、筆頭株主になれば、かなり経営をcontrolできますね。

2) 次に、SPCの設立ですね。このポイントは、欧州系等の銀行に頼んで、Charity Trust等の方法で、売主企業と関係が無い第三者企業として例えばUS$1,000ぐらいの基本金(nominalな資本)で設立してもらうことです。第三者企業として設立しないと売主企業は連結で売却したことになりませんからね。

3) 買収者の買収実行として、SPCに「ユーロ円建他社(=上場予定企業)株式交換権付社債(Exchangeable Bond)=EB」を発行させ、その全額を買収会社にが引受ます。この社債の主な条件は以下ですね。
① 公募売出価格がx円以上となったときは、上場日の前日までに公募売出価格で、社債額面を除した株数で強制的に上場企業の株式に交換する。
・交換価格は、x円≦公募売出価格≦Y円
・公募売出価格がY円超の場合は、交換価格はY円
② 公募売出価格が、X円を下回ったときは、金融商品市場で株価がx円以上となった日に、x円を交換価格として強制的に交換する。
③ 社債の満期までに、上場しなかった場合、または上記②で強制交換できなかった場合は、満期日に上場予定企業の株式(売却企業がSPCに売却した株数全部)に交換される。従い、社債の償還は無く、買収企業は株式を取得して、予定企業の株主となる。

上記が基本スキームですが、実際はもう少し複雑ですね。上場予定企業の株券を、買主に譲渡担保に供して買主はEB取得時に会計上株式を取得したとみなすとか、株券をCustodianに寄託するとかのアレンジも付随的にあります。結構「おたく的」な取得方法ですね。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

引っ越しました。

2014-09-06 14:06:36 | インポート

OCNのブログ人サービスが終了するので、↓こちらに引っ越しました。宜しくお願いします。

http://blog.goo.ne.jp/masaru320

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

インドネシアでの合弁会社設立

2014-09-06 00:32:46 | 企業投資

〇 インドネシアについて、会社法の監査役会(=Board of CommissionersKomisaris会)について、以前書きましたが、今回は、インドネシアへの投資・会社の設立について書きましょう。

 

〇 インドネシアへの外資の投資については、多くの新興国同様ネガティブリストがあり、外資の参入を禁止している業種や制限している業種がありますね。JetroWebでは、その邦訳を掲載していますので、まず事前チェックが必要ですね。制限業種でも、現地企業との合弁による進出はできますので、そういったことも検討する必要があるかもしれません。

〇 日本企業の典型的な進出方法として、現地企業と合弁会社を作っての進出の場合を検討してみましょう。即ち、現地企業と合弁で株式会社(Perseroan terbatas=PT)を設立する場合ですね。外国資本が入る企業をPMA企業(PMA=Penanaman Modal Asing = Foreign Investment Company)と言います。PMA企業は、まず投資計画等を作成し投資調整庁(BKPM)に投資登録申請書(Model1)を提出、投資承認通知書(SP/PMA)PMA設立登録証(有効期間6か月)を取得するのが出発点となります。投資計画には、まず、合弁契約書、その他現地パートナー企業の定款、納税登録番号、合弁会社が行う事業分野、プロジェクト場所、年間生産予定高、投資額(Rp/US$)、製造工程のフローチャート、使用原材料の種類その他の書類・資料を添付する必要があります。

〇 会社設立手続―概略の流れは以下ですね。

 社名申請→定款作成→設立公正証書の取得→居住者証明取得()→納税者番号(NPWP)登録(②)→PMA銀行口座開設(:資本金払込)→法務人権省に会社設立証書の承認申請()→商業省へTDP(Tanda Daftar Perusahaan=会社登録証)申請とその取得

 

 ① 必要書類=BKPM発行の投資承認通知書、事務所の賃貸借契約書、現地法人代表者の身分 証明書(外国人はPassport)等

 

 ② 納税者番号(NPWP)及び課税事業主認識番号(PKP)の取得:NPWP申請書類は、申請書、設立 証書コピー、居住者証明書、現地法人代表者の身分証明書、委任状、その後PKPの取得するときは、NPWP、事務所の賃貸借契約書が必要で、税務署による事務所査察も行われます。

 

 ③ 必要書類=BKPMからの投資承認通知書、設立証書コピー、NPWP

 

 ④ 申請代理は公証人が行います。承認申請受理通知後30日以内に、申請書類を提出します。申請書類は、設立公正証書の写し、NPWP、官報公告掲載手数料支払の領収書、非税国家収入領収書、資本金払込の銀行証明書ですね。 

 

⇒申請書類に不備が無ければ、法務人権大臣は電子署名のなされた承認書を発行し、登記簿に会社登記手続を行い、登記手続終了後に法務人権大臣より設立認可が下りた段階で、新会社は法人格を取得する。設立認可がおりてから14日以内に、法務人権大臣は設立認可に関する事項を官報に掲載します。

〇 各関係省庁への許認可申請:上記で会社はできますが、これだけでは事業を行うことはできません。 BKPMにおける輸入ライセンスの申請・取得(メーカは、API-P取得)、輸入ライセンス取得後、税関の輸出入業者として登録が必要です。また日本から駐在員が赴任しますが、外国人労働者のVisa取得が必要です。尚、原材料購入、部品輸入などの輸入ライセンス取得には、2-3か月ぐらいの時間がかかっているようです。また、その後に、BKPMより事業ライセンスの取得をして初めて事業が開始できるのですが、このライセンスはメーカの場合は工場稼働後なので、工場稼働がに1年かかるのなら1年後ということになりますね(但し、一時ライセンス制度もありますが)

○ 土地利用に関する許可の取得:メーカが合弁で、現地で土地を取得し工場を建設する場合は、以下の手続きが必要ですね。この部分は、Jetrowebを参考にしています。

 

インドネシア全国土の最高管理権は国家に帰属し、個人・企業は土地の権利を国の許可を取得した上で保有する形態をとっている。土地に関して取得できる権利は、 [1] 所有権(HM)、[2] 事業権(HGU)、[3] 建築権(HGB)、[4] 利用権(HP)、[5] 開墾権(HMT)、[6] 森林産出物採取権(HMHH)、[7] 賃借権(HS)、[8] 小作権(HUBH)、[9] 土地質権(HG)、[10] 滞在権(HM)、[11] 農地賃借権(HSTB)の11種類あり、[1][6] は国の許可が必要だが、[7][11]は当事者間で権利の移転・取得が可能である。

 

上記[1]-[6]で、PMA企業が利用可能な権利は以下の3つ

[2] 事業権(HGU=Hak Guna Usaha:国家に属する農地を貸借して開発する権利。期間は最長35年認められ、更新も可能。

[3] 建築権(HGB=Hak Guna Bangunan:土地の上に建物を建設・保有する権利。期間は通常2530年、必要な場合は地方政府に申請して更新できる。

[4] 利用権(Hak Pakai:国家ないし個人に属する土地を一定の期間、開発、利用する権利。期間は最長25年、さらに更新が認められる。

 

地域の指定、土地の指定、土地使用権の承認、建設許可の発給、公害関係法規に基づく許可は、各州投資調整局(BKPMD)でも行われる。 土地の権利は、国家土地局(Badan PertanahanNasional=BPN)の地方事務所により、土地台帳に登録された時点から有効。土地の権利移転は、その土地所在地の土地公証人(Pejabat Pembuat Akte Tanah=PPAT)が発行する証書に基づき行う。

 

新興国で事業を立ち上げるのは、結構手間がかかりますね。でも工場稼働後からが本格的勝負ですね。毎年、組合も強く、毎年23割も最低賃金が上昇していますので、人員計画・そのコスト上昇率などもしっかり検討しないといけませんね。

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

米国のASSET PURCHASE AGREEMENT

2014-09-01 21:17:18 | M&A
○米国のM&A契約のセミナーでは、通常Stock Purchase Agreementの説明がなされます。しかし、大企業が部門売却をして事業ポートフォリオの入れ替え等も多いので、Asset Purchaseも良く行われます。ということで、今回はAsset Purchase Agreementの構造と注意点を、一例を示して書いて見ましょう。基本的には、Stock Purchase Agreementと同じですが、重要な違いが3つぐらいあります。①まず譲渡資産・負債を確定しますが、米国では譲渡しない資産・負債も記載します、② Closing Dateに譲渡対価=買収金額が確定せず、事後で確定額の精算が行われること、それと③受皿会社にて、Employee Benefit Plan& Pension等を、従前の企業と同等なものを揃えないといけないということです。この3つは、別に米国企業の場合に限らず日本でも同じですが、日本だと、受皿の新設子会社を作っても、親会社の制度を比較的短い期間で受皿会社に準備できますが、米国では1から作らないといけない場合が多いのではないでしょうか。日本でも同じですが、年金などは構築から実施まで半年から1年かかりますので、その間どのようにするのか、譲渡側の会社とよく協議する必要がありますね。日本でも時々ありますが、従業員は全員1年間出向にして、その間に準備すること等も考えないといけませんね。


○Asset Purchase Agreementの構造
1章 定義(Definitions) & 解釈 (Interpretation)

2章 事業譲渡(Purchase and Sale of the Business=株式取得と部分は太字で表示。
2.1 譲渡資産 (Purchase and Sale of Assets)
2.2 非譲渡(除外)資産(Excluded Assets)
2.3 譲渡負債 (Assumed Liabilities)
2.4 非譲渡(除外)負債 (Excluded Liabilities)
(その他知的財産=IP等を譲渡する規定等)
2.5 譲渡への同意(Consents to Certain Assignments)
-別会社への譲渡なので許認可や重要契約が承継されないので、売主・買主協力して許認可承継(再取得)・契約相手方・第三者同意の取付け。尚、この規定を、Pre-closing Covenantsとして入れる場合もあります。
2.6 買収金額(Consideration)
2.7 クロージング(Closing) –買収金額の支払、売買当事者の受渡書類(Deliveries) =Exhibit記載書類の締結等、またClosing Date現在の承継資産・負債はClosing Dateに確定しますので、例えばClosing Date日のAudited BSを作成して、Closing日後60日以内に、双方確認した上で、差額金額の精算を定めます。Closingのときに、予定金額の100%を支払い、一部の金額をEscrow Accountで調整するときもあります。(Escrow Accountを設定する信託会社は結構高い手数料を取りますね)
2.9 買収金額の資産への割当(Allocation of Purchase Price =PPA)

3章 売主の事実の表明と保証( Representations and Warranties of Seller)
・売主・買主とも契約締結時&Closing日現在有効と規定します。
・株式買収と同じような規定として以下。
Organization and Qualification/ Authority/ Binding Effect/ Financial Statements / Absence of Certain Changes or Events / Compliance with Law/ Material Contracts (重要契約-一覧はScheduleで開示)/ Litigation/ Non-Contravention(環境規制を含む法令順守)/Taxes/ Title to Property/Consents/ Product Warranty/ Permits & Licenses/ No Conflict
・Asset Purchase特有の規定として以下。
Transferred Assets・Sufficiency of the Assets(土地・建物・機械設備等)/  Inventory/ Intellectual Property / Customer and Suppliers/ Employees(移籍予定従業員)

4章 買主の事実の表明と保証(Representations and Warranties of Buyer)
Organization and Qualification/ Authorization/ Binding Effect /No Conflict/
Sufficiency of Funds / SEC Filing等- 重要なのは、支払うお金がありますということだけ。+独禁法のファイリングを行いますということぐらいです。

5章 売主・買主の約諾事項(Covenants) – Closing前までに行うべきPre-Closing CovenantsとClosing後に行うべきPost-Closing Covenantsがあります。

【Pre-Closing Covenants】
Conduct of Business Prior to the Closing/ Covenants Regarding Information/
Update of Disclosure Schedules (移籍従業員の変動等)/ Access and Information
/ Consents and Filings/ Notification of Certain Matters/ Transition Services ・ Shared IP・License 契約のアレンジ(Closing日に締結)

【Post-Closing Covenants】
売主のNon-Competition/移籍承諾従業員の処遇 /税金(Taxes) =Straddle Periodの規定(Closing Dateまでは譲渡側、それ以降は譲受側負担の技術的規定)/Confidentiality (交渉時知り得た相手方秘密保持、移籍従業員の個人情報の守秘義務等)/ Use of the Seller Name (製品に付された売主名の当分の使用許諾)/買収金額の精算

6章 Closingの条件(Conditions Precedent to Closing)
6.1 一般的条件として、独禁法等の届出の効力が発生したこと。
6.2 買主の取引実行の条件として、売主の表明・保証がClosing日現在真実・正確であること、Pre-Closingの条件が満たされたこと(あるいは、買主がその条件を放棄すること)/ 必要な第三者との契約の承継に同意が得られたこと等を規定。
6.3 売主の取引実行の条件として、買収代金を受領したこと、買主の表明・保証がClosing日現在真実・正確であること、Pre-Closingの条件が満たされたこと等

7章 補償(Indemnification)-売主が表明・保証違反した場合、Covenants違反をした 場合、買主に対する補償額を規定。一件当たりUS$xx, 総額US$xx等と規定。買主もIndemnificationの規定がありますが、もっぱら買主保護の規定になります。
8章 解約条項等(Termination/Effect of Termination/Amendment and Waiver等)

9章 一般条項 (Miscellaneous Provisions) = Notices/ Expenses/ Entire Agreement/ Assignment/ Severability/ Governing Law/ Jurisdiction/ Waiver of Jury Trial/ Public Announcement/等

Schedules:-各条文の詳細なDisclosure Scheduleが添付されます。

Exhibits:ClosingDateに締結される、土地譲渡のDeed見本、受皿会社では直ぐに出来ない経理・人事・ITサービス等を当分行うTransition Services Agreement、IP資産譲渡契約書
案件によっていろいろ細かな規定を設けて、本文だけでも70-80ページになりますし、Disclosure ScheduleやExhibitsを加えると150ページにもなりますね。
コメント (3)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする