○ 合併などに反対の株主には株式買取請求権があります。会社は請求があった株式を公正な価格で買い取らないといけませんが、「公正な価格」は売主・買主間では簡単に合意ができませんので、裁判所に価格の決定を求めることになりますね。今回は、日本の会社法に規定する株式買取請求権と米国の会社法(Delaware州)に定めるAppraisal Rights=株式買取請求権の話です。
○ 日本の会社法の場合、合併、会社分割、株式交換・移転、事業譲渡等のとき、反対株主には株式買取請求権が与えられます。手続きは以下ですね。尚、財源規制=分配可能剰余金がなくても会社は自己株を取得できますね。
① 総会招集通知を受領したら、決議される総会に先立ち反対する旨会社に通知
② 総会の決議のときに反対の議決権行使を行う
③ 合併などの効力発生日の20日前から前日までの間に、株式数等を示して会社 に買取請求する。簡易合併(消滅会社の株主への合併対価が存続会社の純資産の1/5以下等)の場合には、存続会社では取締役会決議だけでOKで、総会決議は不要ですね。会社は、効力発生日の20日前までに株主全員に、その行為をする旨の通知がなされますので、総会決議の無い場合には、上記の③のみとなります。
○ Delaware会社法では、262条(d)等にAppraisal Rightsが規定されています。手続きとしては日本とよく似ていますね。日本と異なる点は、(a)合併期日後に行使する。(b)マーケットアウトができる場合、簡易合併の場合などは、株式買取請求権が認められないということです。
① 総会の20日以上前に会社から株式買取請求権が行使可能であるとの通知。
② 決議される総会に先立ち反対する旨会社に通知、
③ 総会で賛成票を投じない。
④ 合併の効力発生日後10日以内に存続会社から合併が有効になった旨の通知を受け、当該通知の発送日より20日以内に買取請求権を行使。但し、例外条項があります。262条(b)(2)bでは、上場株は除く、又は2000人超の保有者がいる場合は買取請求権が与えられないとしています。
○ 米国の例外規定は面白いですね。楽天みたいに大量の株式ではマーケットで売ろうとするとすぐに暴落ですね。大量保有の場合はブロックディールで行えるように株主を見つけないと行けませんが、簡単に見つかるものでもありません。一方日本の場合は、当事会社への株式買取ですから価格さえ覚悟をすれば売れますね。といっても大量の株式の場合には、会社は買取資金をスムーズに手当できるかと言う点もきになります。
○ 問題は、「公正な価格」(fair value)ですね。会社側と売却株主側で折り合えるとは思えないですね。ということで日本でも米国でも裁判所に公正価格の決定をお願いすることになります。
商法時代は、「承認ノ決議ナカリセバ其ノ有スベカリシ公正ナル価格ヲ以テ買取ルベキ旨ヲ請求スルコトヲ得 」でしたが、会社法で決議との因果関係を問わないこと、即ち単に「公正な価格」にしたのは、合併のシナージー効果を適正に評価すれば、決議前に株価を上回ることもあるので請求した株主の利益になると考えた為ですね。しかし、Delaware会社法ではfair valueの決定に際して、全ての関連する要素(=all relevant factors)を考慮して決定すると定めています。しかし、合併遂行により生じ る価値を除くとしています(the Court shall determine the fair value of the shares exclusive of any element of value arising from the accomplishment or expectation of the merger or consolidation)。ですから商法時代の規定の発想でしょうか。