○ 取締役会非設置会社の取締役の規定を見てみましょう。
・348条(業務の執行)
1. 取締役は、定款に別段の定めがある場合を除き、株式会社(取締役会設置会社を除く。以下この条において同じ。)の業務を執行する。
2. 取締役が二人以上ある場合には、株式会社の業務は、定款に別段の定めがある場合を除き、取締役の過半数をもって決定する。
・349条(株式会社の代表)
1.取締役は、株式会社を代表する。ただし、他に代表取締役その他株式会社を代表する者を定めた場合は、この限りでない。
2.前項本文の取締役が二人以上ある場合には、取締役は、各自、株式会社を代表する。
3.株式会社(取締役会設置会社を除く。)は、定款、定款の定めに基づく取締役の互選又は株主総会の決議によって、取締役の中から代表取締役を定めることができる。
4.代表取締役は、株式会社の業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する。
5.前項の権限に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。
○ 上記の規定の問題点はなんでしょうか?
1) 取締役会非設置会社では、代表取締役を定めない場合は、取締役は、会社を代表すると規定されています。二人以上の場合は、各自会社を代表することができます。一方、取締役会設置会社では、取締役会の決議により、代表取締役を選定しなければならないですね。
⇒ 取締役会設置会社かどうかは、登記簿謄本(証明書)を入手しないとわかりません。即ち、「取締役」という名刺をもらったときは、代表権があるのかどうか分かりません。
2) 「代表取締役は、株式会社の業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する。」としています。代表取締役を定めない場合はどうなるのでしょうか?「取締役は会社を代表する」としていますから、取締役でも、同じと解釈できると思いますね。即ち、業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有しないと、会社が回りませんね。いちいち総会開く訳にもいきません。訴えられれば、応訴しなければならないですし、また反訴して争わないといけない場合もあるでしょう。
○ 会社法をきちんと理解している人は、世の中には少ないですね。また世の中の常識としては、「代表取締役」は、会社を代表するという理解です。即ち、「取締役」が代表権を持っているとは思っていません。なぜ取締役会設置会社と違う規定の仕方をするのでしょうか?勿論、旧有限会社法を取り込んだことから来ているのでしょうけど、規定の仕方に統一性と整合性がありません。
○ 取締役会非設置会社でも、業務執行権限・代表権の定めは、取締役会設置会社と同じ定めをしないと、無用の混乱を起しかねませんね。349条3項は、「取締役の中から代表取締役を定めることができる。」ではなく、「定めなければならない。」とすべきですね。そして、代表取締役のみが代表権を有するとすべきでしたね。今度の会社法は、おかしな規定がいろいろありますね。