まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

取締役会非設置会社の代表取締役と取締役

2010-12-18 23:50:01 | 商事法務

   取締役会非設置会社の取締役の規定を見てみましょう。

348(業務の執行)

1.  取締役は、定款に別段の定めがある場合を除き、株式会社(取締役会設置会社を除く。以下この条において同じ。)の業務を執行する。

2.  取締役が二人以上ある場合には、株式会社の業務は、定款に別段の定めがある場合を除き、取締役の過半数をもって決定する。

349(株式会社の代表)

1.取締役は、株式会社を代表する。ただし、他に代表取締役その他株式会社を代表する者を定めた場合は、この限りでない。

2.前項本文の取締役が二人以上ある場合には、取締役は、各自、株式会社を代表する。

3.株式会社(取締役会設置会社を除く。)は、定款、定款の定めに基づく取締役の互選又は株主総会の決議によって、取締役の中から代表取締役を定めることができる。

4.代表取締役は、株式会社の業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する。

5.前項の権限に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。

   上記の規定の問題点はなんでしょうか?

1)  取締役会非設置会社では、代表取締役を定めない場合は、取締役は、会社を代表すると規定されています。二人以上の場合は、各自会社を代表することができます。一方、取締役会設置会社では、取締役会の決議により、代表取締役を選定しなければならないですね。

 取締役会設置会社かどうかは、登記簿謄本(証明書)を入手しないとわかりません。即ち、「取締役」という名刺をもらったときは、代表権があるのかどうか分かりません。

2)  「代表取締役は、株式会社の業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する。」としています。代表取締役を定めない場合はどうなるのでしょうか?「取締役は会社を代表する」としていますから、取締役でも、同じと解釈できると思いますね。即ち、業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有しないと、会社が回りませんね。いちいち総会開く訳にもいきません。訴えられれば、応訴しなければならないですし、また反訴して争わないといけない場合もあるでしょう。

   会社法をきちんと理解している人は、世の中には少ないですね。また世の中の常識としては、「代表取締役」は、会社を代表するという理解です。即ち、「取締役」が代表権を持っているとは思っていません。なぜ取締役会設置会社と違う規定の仕方をするのでしょうか?勿論、旧有限会社法を取り込んだことから来ているのでしょうけど、規定の仕方に統一性と整合性がありません。

   取締役会非設置会社でも、業務執行権限・代表権の定めは、取締役会設置会社と同じ定めをしないと、無用の混乱を起しかねませんね。3493項は、「取締役の中から代表取締役を定めることができる。」ではなく、「定めなければならない。」とすべきですね。そして、代表取締役のみが代表権を有するとすべきでしたね。今度の会社法は、おかしな規定がいろいろありますね。

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定款閲覧権の変な規定

2010-12-14 00:23:18 | 商事法務

    会社法「けち」シリーズです。今回は、定款の閲覧権についてです。法26条(定款の作成)では、「株式会社を設立するには、発起人が定款を作成し、その全員がこれに署名し、又は記名押印しなければならない。」と規定しています。

    31条(定款の備置き及び閲覧等) 1項では、「発起人(株式会社の成立後にあっては、当該株式会社)は、定款を発起人が定めた場所(株式会社の成立後にあっては、その本店及び支店)に備え置かなければならない。」としています。30条では定款の認証を定めていますので、この定款は認証済みの定款ということですね。

    312項には面白いといいますか、変な規定があります。「発起人(株式会社の成立後にあっては、その株主及び債権者)は、発起人が定めた時間(株式会社の成立後にあっては、その営業時間)内は、いつでも、次に掲げる請求をすることができる。ただし、第二号又は第四号に掲げる請求をするには、発起人(株式会社の成立後にあっては、当該株式会社)の定めた費用を支払わなければならない。」と定めています。1号は、閲覧請求、2号は謄本等の請求で、3号・4号は、1号・2号と同じ規定ですが電磁的記録の場合ですね。

    上の規定の括弧書を除くと、「発起人は、発起人が定めた時間内は、いつでも、次に掲げる請求をすることができる。ただし、第二号又は第四号に掲げる請求をするには、発起人の定めた費用を支払わなければならない。」⇒定款って発起人が作成するのに、何ですかこの規定は!例えば、原本証明付の謄本を発起人が入手するときは、原本証明を自分がして、お金を払って入手して下さいと書いています。自分の作った書類なのにですね。

○ 勿論、この規定の趣旨は、株主・債権者が請求したときに適用されますね。第二編 株式会社 第一章 設立 第二節 定款の作成の箇所に規定しているために、発起人を入れているのだと思いますが「株式会社の成立後にあっては、その株主及び債権者は、その営業時間内は、いつでも、次に掲げる請求をすることができる。ただし、第二号又は第四号に掲げる請求をするには、当該株式会社の定めた費用を支払わなければならない。」とすべきでしたね。

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不適切な取締役の権限規定

2010-12-11 23:13:40 | 商事法務

○ 取締役会設置会社は取締役会で代表取締役を選定・解職しますね(3622/3)。また363(取締役会設置会社の取締役の権限)には業務を執行する取締役としては「代表取締役及び代表取締役以外の取締役であって、取締役会の決議によって取締役会設置会社の業務を執行する取締役として選定されたもの(=選定業務執行取締役)」としています。

一方、取締役会非設置会社については、348条(業務の執行)で「取締役は、株式会社(取締役会設置会社を除く)の業務を執行する。」と規定し、また349条で「取締役は、株式会社を代表する。ただし、他に代表取締役その他株式会社を代表する者を定めた場合は、この限りでない。」と規定されています。

⇒(ちょっと横道に逸れますが)「その他株式会社を代表する者」って何者なのでしょうか?変な規定ですね!!例えば代表取締役常務の場合は「取締役常務代表」とか言うのでしょうか、あるいは取締役でない者、例えば課長でも代表する者として定めることが出来るという意味でしょうか?「xx商事株式会社 代表課長?→課長の中のトップ?」全く意味不明の規定ですね。

  名刺をもらったときに、「取締役」とだけ記載されている場合、その取締役が取締役会非設置会社の取締役、即ち業務執行権限のある取締役か、取締役会設置会社の取締役かわかりません。また、後者の場合は、選定業務執行取締役か、業務執行を行なわない、即ち業務執行権限の無い取締役か分かりません。また、その取締役に業務執行の権限があるかどうか等いちいちチェックしませんし、そもそも普通の人は、こんな会社法の規定等知りません。また、名刺には「取締役営業本部長」とか記載していますね。この場合、名刺を受け取ったものは、この人は、営業についての権限があると思うのが常識ですね。まあ、「副社長」とか「取締役副社長」とだけ記載されていても、この場合は表見代表取締役の規定(354条)が適用されますので外見的には業務執行権限があると誰しも思いますが。

○ 取締役は、単なる取締役会のメンバーであるという考え方ですので、業務執行権限とは別というのが会社法の考え方ですね。勿論社外取締役は、業務を執行しませんが、社外取締役といえども、名刺に「xx株式会社 社外取締役 ○○ ○○」と書くのでしょうか?そんなことはありませんね。

○ 一方、法14条では以下の様に規定していますね。

1.事業に関するある種類又は特定の事項の委任を受けた使用人は、当該事項に関する一切の裁判外の行為をする権限を有する。 (「一切」というのもおかしいね。普通は一切の権限など持っていないのが常識で、法律の方が非常識)

2.前項に規定する使用人の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。

14条の規定を知っていようが知らなくても、例えば名刺に販売部長と記載されておれば、当該ビジネスの常識の範囲内の販売はできる権限があると名刺を受け取った人は思いますし、調達部長の場合は、通常の範囲内の調達・購入権限があると思いますね。これが常識です。

  使用人であっても、法14条の規定で当該事項に関する権限を有しています。取締役なら、その取締役が業務執行取締役かどうかに拘わらず、取締役が自ら私にはこの権限が無いのです等と取引先に説明しない限り、普通は当該事項(取締役が取引先に話をする事項)について、常識の範囲内の権限があると思います。即ち、取締役(調達担当)とか記載されている場合は、一定額以内の調達権限があると考えるのが常識ですね。

⇒取締役について、14条と同じような規定はありません。「事業に関するある種類又は特定の事項の委任を受けた取締役は、当該事項に関する裁判外の行為をする権限を有する。」という規定を会社法に規定すべきだと思いますね。

○ 取締役会設置会社の選定業務執行取締役に関連して学者が変なことを言っています。即ち、普通の取締役に業務執行をゆだねることができますが、その場合は、委ねられた限りで業務執行をすることになるが、「業務執行権限はあくまで対内的な関係で付与されるにすぎない」と神田教授(会社法7版172ページ。お金が無いので古い7版しか持っていません)が言っています。

⇒業務執行には二面性があります。対内的と対外的です。調達担当取締役が調達計画を建て外部の業者から調達します。販売担当取締役は、販売計画を建てお客様に販売します。人事担当取締役でも、施設管理する総務担当取締役でも同様です。コインの表裏で、自分は社内の対内的なことだけしか行なわないということはありません。対内的な業務執行権限は、同時に対外的な業務執行権限を持たないと、通常は業務を執行できないのが常識です。

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基準日と総会招集手続きの省略と議決権

2010-12-05 23:35:40 | 商事法務

  会社法300条には、株主総会招集手続きの省略の規定があります。(A)株主の全員の同意があるときは、招集の手続を経ることなく開催することができる。」と規定されています(この条文は全員の出席とは規定されていない)。また、(B)株主全員が総会の開催に同意して出席(勿論代理人可ですね)すれば、これも有効と最高裁判例で認められていますね。普通は定款で定時総会の規定はありますから、もっぱら臨時総会開催の場合の規定ですね。

招集手続きには、①取締役会設置会社の場合は取締役会による招集決定、②招集通知の発出、それと③実際に決議・報告がなされる事という、三つのステップが必要ですが、300条では、②の手続きの省略を認めています。また最高裁判例は、①と②の省略を認めていますね。

  一方、124条には基準日の規定がありますね。総会で議決権を行使できる株主を確定し招集通知を発したり、あるいは剰余金配当を受ける株主を確定するための制度ですね。1243項では、「株式会社は、基準日を定めたときは、当該基準日の二週間前までに、当該基準日及び前項の規定(=株主が行使することができる権利により定めた事項を公告しなければならない。ただし、定款に当該基準日及び当該事項について定めがあるときは、この限りでない。」この規定は、基準日を定めなければ別に公告しなくても良いと読めますね。

  では、基準日公告がなされない場合、臨時総会で議決権を行使できる株主は誰かという規定は会社法にはありませんね。では、どう考えれば良いのでしょうか。

上記の(B) の場合は、総会の開催に同意して出席ですから、同意して出席した株主が議決権を行使することになりますね。(A)の場合は、やはり同意した株主でしょうね。臨時総会を来週月曜日に開くからと同意したが、直前の金曜日に株式を譲渡して、直ちに新株主が名簿に記載されても、やはり同意の時の株主が議決権を持つと思いますね。ただ、1244項では「株式会社は、当該基準日後に株式を取得した者の全部又は一部を当該権利を行使することができる者と定めることができる。ただし、当該株式の基準日株主の権利を害することができない。」という(批判の多い)変な規定が出来ましたので、この基準日を同意の時と考え、新株主を権利行使することができる者と定めることができるということになるのだと思います

  基準日公告の規定は、会社法の中でも最も遵守されていない規定の一つですね。全株式譲渡制限会社なら株主の変動も少ないし、今誰が株主かは株主名簿を見ればわかりますね。当該基準日の二週間前までに公告」を行い、この公告を見た、株主名簿に記載されていない株主が議決権行使の為すぐに株主名簿に記載してもらうという事のようですが、公告など見ますか、官報など見ていないし、新聞に公告が載っていてもわかりませんね。少なくとも全株式譲渡制限会社では、公告に代えて通知(電磁的方法によるものを含む=電子メールで十分ですね。受領確認もチェックできますからね)で十分です。というか、通知とすべきだったでしょうね。通知を受けた株主が既に株式を譲渡していたら、譲渡承認申請を取締役会等に申請し承認後譲渡人・譲受人共同で名義書換請求すれば良いですね。この場合でも二週間前までに通知ですので、タイミングが合わなければ駄目ですね。譲渡承認は取締役会承認という会社の場合、通常取締役会は月に一回開催ですから間に合わないケースも多いでしょうね。公開会社であっても、株主はいちいち公告等見ませんね。公告などより通知の方がはるかに実際上は大事だと思いますがね。株主名簿に記載の株主に通知すればそれで十分だと思います。

参考ブログ:基準日の規定は欠陥規定

http://masaru320.mo-blog.jp/business/2009/02/post_ab23.html

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