○ 資本金・準備金の減少については、法447条・448条に規定されていますね。いずれの場合も、原則として債権者保護手続が要求されています(449条)。今回は、この債権者保護手続の意味は殆ど無い。この場合の債権者保護手続は不要とすべきだという議論です。資本金・準備金の額を減少させて、「その他資本剰余金」の数字を作って、分配可能剰余金として、株主に分配したり、株主から自社株式を買い取る、即ち出資の払戻等に利用しますね。昔の言葉で言えば、減資差益ですね。
○ 資本金・準備金の減少は、例外もありますが、原則として総会決議ですね。資本金の減少は特別決議(309II⑨)で、準備金の減少は普通決議です。この承認決議をとった上で、債権者保護手続を行います。債権者保護手続が不要な場合は、①減少する準備金の額の全部を資本金とする場合、②準備金のみを減少する場合で、1) 定時総会で決議し、かつ2) 減少額が(総会の日における)欠損の額(*)を超えない場合ですね。
* 総会の日(前日最終)現在の欠損の額って分かるんですかね?不思議ですね。決算やったことのない人のたわごと?ですかね。試算表作って、決算調整しないとできないと思うんですがね。臨時決算するのでしょうか?取締役会承認で計算書類が確定できる会社なら総会の前日を臨時決算日として決められますが、総会の日には間に合わないですね。休眠会社に近い会社なら出来ますが、ある程度の会社の場合は不可能です。総会で計算書類を承認・確定する会社は、定時総会の日の前に臨時決算日を持ってくることはできませんね。(だいぶ横道にそれました)
○ 上記以外の場合は債権者保護手続が必要ですね。債権者保護手続には実務上35-40日かかりますね。①資本金等の減少の内容、②計算書類を公告した官報・日刊紙等の日付と掲載ページ(会社計算規則152条)、③ 債権者が一定の期間内(最短1ヶ月)に異議を述べることができる旨を官報に公告し、かつ知れている債権者には各別に債権者異議申述催告書を送付しないといけません。ただし、定款所定の公告方法が日刊新聞紙又は電子公告の場合は、その公告に加えて官報にも公告すると各別の催告は不要となりますね。この債権者保護手続の完了の日が、資本金等の減少の効力が生じ日ですね。その後資本金の減少の手続を行った事等を証明する添付書類(公告掲載紙、債権者名簿、催告書サンプル等)を添えて変更登記申請しなければなりません。邪魔くさいですね。なお、資本金の額は登記事項ですが、準備金の額は登記事項では無いですね。
○ だいたい、こんな公告見ている債権者がいますか?公告では要旨しか掲載しません(計算規則138条以下)。仮にそういった公告を見た債権者がいても、そんなもの見て会社の資金繰りが分かるわけもありません。殆ど何の意味もない公告です。
○ そもそも、貸借対照表の純資産というのは、資産マイナス負債の計算上の数字です。会社が現実にお金を払えるかどうかということとは関係ありません。資本金・準備金の減少というのは、その純資産の中身の数字を上下させるだけで、現実にお金が会社から出て行くわけでもありません。債権者にとって重要な事は、自分の債権の弁済日にその会社が弁済できる現金・預金を有しているかです。売掛金・買掛金の正常な営業循環で資金繰りが付くかです。即ち、その会社のキャッシュフローが重要であって、貸借対照表の純資産の部の数字が重要ではありません。力関係の強い債権者なら、弁済を確保するために保証金・譲渡担保・連帯保証人、その他相殺、債権譲渡等いろんな債権担保を確保する手段があります。この確保の手段がメインであって、会社法にいう債権者保護などというものは、現実的には殆ど保護機能がありません。
○ まあ異議を述べたときは、債権者に対し、弁済し、相当の担保を提供し、又は当該債権者に弁済を受けさせることを目的として信託会社等に相当の財産を信託しなければなりませんが、そんな異議を唱えれば、弁済して次回から取引お断りですね。銀行などの債権者は、とっくに資金繰りが回る、債権確保できるかをきちんと調べています。
○ 資本金等の減少のときの債権者保護制度は、上記の通り殆ど意味がないのです。早く廃止して欲しいと思います。