○ 会社法349条3項には、非取締役会設置会社における代表取締役の選定の規定があります。即ち、「株式会社(取締役会設置会社を除く。)は、定款、定款の定めに基づく取締役の互選又は株主総会の決議によって、取締役の中から代表取締役を定めることができる。」と規定しています。取締役会設置会社については、362条2項3号で代表取締役の選定・解職を取締役会の職務としています。即ち、取締役会設置会社は、349条3項は適用されないという解釈がなされています。
○ では、取締役会設置会社の代表取締役を株主総会で選定・解職できるでしょうか?法務省の解説(新会社法100問)では、295条2項で「取締役会設置会社においては、株主総会は、この法律に規定する事項及び定款で定めた事項に限り、決議をすることができる。」と規定されており、定款に定めること取締役会決議事項でも総会により決議可能であるとしています。この規定は少数株主保護のために、予測可能性確保のため、総会決議事項は、法令・定款で規定しなさいというものです。規定すればどんな事項でも総会の決議事項とすることができるというふうに解釈されているようです。仮に総会で選定しても、取締役会の監督権限を奪うものではないので差し支えないという考えのようです。
○ この場合、362条2項の規定との関係をどのように解釈するかですが、定款に代表取締役の選定・解職の定めをしても、362条2項3号の規定により、株主総会と取締役会は、それぞれ代表取締役を選定・解職する権限を持つことになるといわれています。実に変な考え方ですね!
○ 旧商法では、代表取締役は、取締役会から派生した機関であるから株主総会にその選定権限を付与することができないという見解でしたね。349条3項では、「(取締役会設置会社を除く。)」と規定しています。この括弧書きの部分を、私のように素直(?斜め?)に考えれば、定款の規定・総会では選定できないと考えるのが常識ではないでしょうか?機関設計には、やはりきちんとしたルールが必要だと思います。少し比喩が飛び過ぎかもしれませんが、例えば国民が国会議員を選挙で選出できる。国会議員は首班を指名できる。従い、国民は国民投票で賛成可決されれば、直接首班を指名できるし、併せて国会も首班を指名できるという論理ですね。これおかしいと思いませんか?会社の機関設計という形を作る部分で、こういった考え方をするというのは如何なものでしょうか?法務省の様に考えると、総会で選定した代表取締役を取締役会で解職したり、その逆も出来るかもしれません(選定した機関のみが解職できるという考えも成り立ち得ますが)。代表取締役の選定・解職を複数の機関ができるという考えは、ちょっとおかしいのではないでしょうか。