まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

代表取締役選定・解職権委譲の異常な考え方

2008-09-22 13:54:39 | 商事法務

     会社法3493項には、非取締役会設置会社における代表取締役の選定の規定があります。即ち、「株式会社(取締役会設置会社を除く。)は、定款、定款の定めに基づく取締役の互選又は株主総会の決議によって、取締役の中から代表取締役を定めることができる。」と規定しています。取締役会設置会社については、36223号で代表取締役の選定・解職を取締役会の職務としています。即ち、取締役会設置会社は、3493項は適用されないという解釈がなされています。

     では、取締役会設置会社の代表取締役を株主総会で選定・解職できるでしょうか?法務省の解説(新会社法100問)では、2952項で「取締役会設置会社においては、株主総会は、この法律に規定する事項及び定款で定めた事項に限り、決議をすることができる。」と規定されており、定款に定めること取締役会決議事項でも総会により決議可能であるとしています。この規定は少数株主保護のために、予測可能性確保のため、総会決議事項は、法令・定款で規定しなさいというものです。規定すればどんな事項でも総会の決議事項とすることができるというふうに解釈されているようです。仮に総会で選定しても、取締役会の監督権限を奪うものではないので差し支えないという考えのようです。

     この場合、3622項の規定との関係をどのように解釈するかですが、定款に代表取締役の選定・解職の定めをしても、36223号の規定により、株主総会と取締役会は、それぞれ代表取締役を選定・解職する権限を持つことになるといわれています。実に変な考え方ですね!

     旧商法では、代表取締役は、取締役会から派生した機関であるから株主総会にその選定権限を付与することができないという見解でしたね。3493項では、「(取締役会設置会社を除く。)」と規定しています。この括弧書きの部分を、私のように素直(?斜め?)に考えれば、定款の規定・総会では選定できないと考えるのが常識ではないでしょうか?機関設計には、やはりきちんとしたルールが必要だと思います。少し比喩が飛び過ぎかもしれませんが、例えば国民が国会議員を選挙で選出できる。国会議員は首班を指名できる。従い、国民は国民投票で賛成可決されれば、直接首班を指名できるし、併せて国会も首班を指名できるという論理ですね。これおかしいと思いませんか?会社の機関設計という形を作る部分で、こういった考え方をするというのは如何なものでしょうか?法務省の様に考えると、総会で選定した代表取締役を取締役会で解職したり、その逆も出来るかもしれません(選定した機関のみが解職できるという考えも成り立ち得ますが)。代表取締役の選定・解職を複数の機関ができるという考えは、ちょっとおかしいのではないでしょうか。

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社員としての地位と会社の所有者

2008-09-16 22:07:29 | 企業一般

     イギリスのGDP(公式為替レートベース)の順位は、①アメリカ、②日本、③ドイツ(人口82m $3.322Trillion)、④中国(1,330m,$3.251Trillion)の次の五番目ですね。かつて世界一だったのにね。ロンドン大学のジェフリー・オーエン教授という人が、英国経済、英国企業の没落の原因は、市場原理の行き過ぎにあり、その理由としては①短期利益極大化を求める金融市場、②敵対的な労使関係、③労働者の教育水準の低さの3点であると言われているようです。これは米国にも当てはまりますね。

     ドイツのシュミット元首相は、市場原理の抑制が社会の安定に必要であると言われていたようです。福島清彦著 ヨーロッパ型資本主義 (講談社現代新書)から引用すると、シュミット氏は、もう10年も前に、「間違ったアメリカ流の新しいイデオロギーがある。その一つが「株主の価値」である」「株主のための価値極大化が推進されると、会社の顧客、同僚、会社の従業員に対する責任がとれないという危険があることを確認しておかなければならない」「いずれにしても、二つの基本的な認識を見失ってはならない。第一に、社会で進行する超高齢化時代にあっては、超福祉国家を作ることはできないこと第二に、「勤労する貧困者」という新しい下層階級を出現させてはならないことである」「従って、ヨーロッパ大陸の産業民主主義国家では、アメリカ的な見本は問題外である」等ですね。なかなか良いこと言われていますね。「美しい日本」とか意味不明の言葉を言って1年後に政権を放り投げるどこかの首相と大違いですね。

     株主は、会社の所有者と言われています。アメリカではそう思われています。株主の利益の極大化のために経営されるべきだと考えられています(米国でもJohnson & Johnsonのように、株主をTop Priorityをおいていない会社もありますが)。しかし、株主は会社を保有するという規定は会社法にはありません。即ち、株式の所有者は株主ですが、株主は会社の所有者という規定はないですね。本来の所有権の保有者であれば、法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有します(民法206条)。全面的に支配する権能(管理権能・収益権能)を享受しますね。株主が多数いますので、それでは共有なのでしょうか。共有の法律的構成については諸説がありますが、有力説では、各共有者は各一個の所有権を有し、各所有権が一定の割合において制限しあって、その内容の総和が一個の所有権の内容と等しくなっている状態であるとか、一個の所有権を数人で量的に分有する状態であるなどと説明をされています。また、所有者は責任も負います(土地の工作物等の占有者・所有者の無過失責任民法717)。厳密には所有者でなく占有者ですが、飼い犬が人を噛んだら損害賠償責任を負いますね。

     株主は、お金を出せば終わりです。それ以上の責任は負いません。有限責任であり、無限責任を負わないですね。非上場会社なら別ですが、上場企業なら大株主は別かもしれませんが、別に共益権例えば、議決権を行使しようがしまいが勝手です。通常の所有権という概念では全く捉えられませんね。会社の場合はどういう所有権なのでしょうか?その辺をきちんと説明した論文・本を私はあまり見たことありません(東大の岩井教授の本ぐらいは読みましたが)。

     株式とは、細分化された割合的単位の形をとる株式会社の社員たる地位を言うとされています。従い、株主とはこの社員たる地位を持っている者ということになります。株主は株式の保有者ですが、会社の財務諸表を見ると、債権者、退職給付を含む労働債権を持つ従業員等もいます。この総体が会社ですよね。私には、社員たる地位保有者が、どうしていきなり会社の所有者という論理になるのか、よく分かりません。

(今回は前半の文章と、後半がうまくつながらないですね。会社はステークホルダーの物といいたいのですが。まあいーか)

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取締役・監査役の報酬と交際費の開示

2008-09-09 23:41:08 | 商事法務

     取締役・監査役の報酬等については、会社法361条・387条に規程がありますね。

- 3611項では、取締役の報酬、賞与その他の職務執行の対価として受ける財産上の利益(=報酬等)についての次に掲げる事項は、定款に定めていないときは、総会決議によって定める。

 ① 報酬等のうち額が確定しているものについては、その額

 ② 報酬等のうち額が確定していないものについては、その具体的な算定方法

 ③ 報酬等のうち金銭でないものについては、その具体的な内容

- 3871項では、監査役の報酬等は、定款にその額を定めていないときは、株主総会の決議によって定める。2項では、監査役が2人以上ある場合において、各監査役の報酬等について定款の定め又は株主総会の決議がないときは、当該報酬等は、前項の報酬等の範囲内において、監査役の協議によって定めるとしていますね。

     最近は、特に不明朗な、社外取締役・監査役等に退職慰労金を支払うのは如何かということで、これを廃止しようという動きが出てきました。まあ当たり前でしょうね。一般的にろくに働いていませんからね。出席もまともにしない人もいますからね。しかしながら、報酬等について、相変わらず、株主総会では、役員全員の年額・月額総額の承認だけをとり、それがどのように支給されているのか不明朗な場合が多いですね。例えば、取締役の報酬額:年額5億円以内、監査役の報酬額:年額1億円以内というような定めが多いですね。

     本来なら、総会に、役員報酬規程・退職慰労金支給規程を、総会参考書類あるいは株主なら閲覧可能にすべきですが、どうもそういったことをしている会社は、なかなか見当たりません。まあ、大企業なら内規がありますから、それに従って支給されているのでしょうけど、相変わらず不明朗ですね。米国企業の10-K等を見るときちんと記載されていますが、日本は、ねたみ社会ですしね。困ったものですね。でももし私が大企業の役員なら、隠すのは賛成しますけどね。(私は基本的に身勝手でねたみ癖なのです?)。

     会社法の監査役の報酬等の規程は、取締役の報酬等の規程と異なります。

     定款に定めがないときは、総会で定める。監査役の報酬等を取締役会で決定させると、監査役が取締役の影響下になるので、独立性のある適正な監査が出来なくなるので、総会決議事項としたということは、それで良いでしょう。しかし、この規程は不備ですね。

     しかし、2人以上のときは、個別報酬額を総会で決めなければ、報酬限度額の範囲内で、内輪でお手盛り、マックス迄決められますね。監査役の報酬を、業績連動報酬等で定めるのは監査という職務の性質上妥当ではないので、387条では、不確定額を決議することは認めていないとされています。しかし、これだけの条文で、そのようには読めませんけどね。

     監査業務を、一生懸命働こうが、適当にやろうが4年間は安泰で報酬は保障されているとも考えられますね。あるいは、会社の業績がよければ、別に監査役に会社業績連動で報酬を上げてもいいとも思いますね。もちろん、そうかといって取締役の違法行為による業績向上を見逃す訳にはいきませんが。あるいは、取締役の違法行為を見つけたら、1件100万円増額という報酬制度にするわけにもいきませんね。

 まだ多くの企業が、役員報酬の詳細な内容を隠しています。事業報告書で全体額等が開示されるようになりましたが、もっと開示が必要なのではないでしょうか。特に、大企業の役員等は、社有車を半分私用のときも使ったり、身内とのゴルフを会社保有の会員権で接待ゴルフをしたことにしたり、会食を会社の交際費で落としたり、その他お中元・お歳暮等の贈答品を一杯貰ったり、お金以外にも多くの役得を個人的に得ています。個別は無理としても、少なくとも役員全員の交際費も開示して欲しいですね。

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コーポレート・ガバナンス状況の開示

2008-09-01 22:35:33 | 企業一般

     会社法36246号では内部統制システムの規程があります。即ち、「①取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備」を取締役会の専決事項とし、5項では「大会社である取締役会設置会社においては、取締役会は、前項第六号に掲げる事項を決定しなければならない。」としています(委員会設置会社は416条1項)。これを受けて会社法施行規則100条1項では、②取締役の職務執行の情報の保存管理体制、③リスク管理体制④取締役の効率的職務執行を確保する体制⑤使用人の職務執行が法令・定款に適合することを確保する体制⑥企業集団の適正業務確保の体制について定めています。(監査役設置会社についての追加規程は同3項)

コーポレート・ガバナンスの状況の開示については、有価証券報告書に整理して書いています。大企業の例として(a)新日本製鐵と(b)三菱重工の該当箇所を読んでみました。

(a)きっちりと記載しようとする姿勢の現れている会社と、(b)法令に規定しているので、まあ一通り書いておかないとねという姿勢の会社という印象ですね。

     新日本製鉄の有報

まず、冒頭にきちんと企業理念を掲げています。また、取締役会を当社事業に精通した取締役で構成することにより経営効率の維持・向上を図る一方、社外監査役を含む監査役機能の充実により、経営の健全性の維持・強化を図っております。」と書いています。同社の取締役は11名ですが、役立たない社外取締役(独立取締役)等いませんので、その解説ですね。昔の新日鉄の取締役は40-50名程いましたが、少なくなりましたね。

―内部統制・リスク管理体制の整備状況では、「業務の有効性と効率性を図る観点から、経営に関わる重要事項について社内規定に従い、会長・社長・副社長等によって構成される「経営会議」(原則、週1回開催)の審議を経て、「取締役会」(毎月1~2回開催)において執行決定を行っている旨。また、経営会議・取締役会に先立つ審議機関として、目的別に経常予算委員会、設備予算委員会、投融資委員会、資金運営委員会、技術開発委員会、環境経営委員会、リスクマネジメント委員会等、計17の全社委員会を設置しております。」

―内部統制システムの基本方針では、上記①の体制については、「取締役会は、取締役会規程その他の規程に基づき、経営上の重要事項について決定を行い、または報告を受ける。」と記載されています。上記⑤の内容も丁寧に記載しています。

企業理念を冒頭にしっかり記載しています。これは経営トップの裏づけがないと、有報作成者だけでは記載できない内容ですね。

     三菱重工業の有報

冒頭には、基本的考え方として、「顧客第一の信念に立ちつつ,責任ある企業として全てのステークホルダーに配慮した経営を行っている。」と記載しています。会社の機関の内容として、「取締役会において経営の重要な意思決定,業務の執行の監督を行っている。取締役19名中3名を社外から選任し,経営監督機能の強化に努めている。また,業務執行に関する重要事項の審議機関として経営会議を置き,社長を中心とする業務執行体制の中で合議制により審議することで,より適切な経営判断及び業務の執行が可能となる体制を取っている。」としています。

―内部統制システムの基本方針では、上記①の体制については以下の様に記載されています。

(1)    当社は法令を遵守し社会規範や企業倫理を重視した公正・誠実な事業活動を行うことを基本理念とし,取締役は自ら率先してその実現に努める。

(2)    取締役会は,取締役から付議・報告される事項についての討議を尽くし,経営の健全性と効率性の両面から監督する。また,社外役員の意見を得て監督の客観性と有効性を高める。」と記載されています。

全くひどい記載ですね。「法令・定款遵守確保の体制」の記載にも拘らず(1)では体制について何も記載していません。「取締役は自ら努める」がどうして体制の記載なのでしょう。(2)については、もう嘘に近いというか嘘だとわかる記載ですね。「報告事項」について討議を尽くしているのですか?報告は報告であり討議事項ではないですね。不思議な会社ですね。

→「付議事項」について討議を尽くすというのはどういう事ですか?1議案を19名の取締役で討議を尽くすというのは、通常1件少なくとも半時間から1時間ぐらい必要でしょう。大企業ですから一回の取締役会で議案は20-30件ぐらいあるでしょう。ということは丸一日かけて行っているのですか?討議を尽くしの内容を説明して欲しいですね。1件5-10分ぐらいで形式的に決議しているのではないでしょうか!?

―上記②の情報の保存管理体制については、もう処置なしですね。「情報を適切に記録し,保存・管理する。」と記載されています。言葉を繰り返しでは何の説明にもなっていません。

有価証券報告書を読むと、企業の法令遵守や投資家への開示姿勢が本物かどうかが読み取れる場合がありますね。

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