○ 久々に日本のM&A関連契約についてのコメントです。日本のM&A契約は、最近米国などの影響を受けて、米国の猿まね契約が多いですね。M&A契約ですから売主の表明・保証条項を一杯入れて、契約締結日・クロージング日現在有効であるとか、約諾事項、表明・保証条項違反の場合の補償条項なども記載するようになりました。その中で今回は、事業譲渡契約と事業移設契約について触れてみましょう。ただ、米国の事業譲渡(Business/Asset Transfer Deal)では、譲渡財産(資産・負債)だけではなく、譲渡しない財産を明記しますが、日本ではまだその部分はあまり記載されていないようですね。
○ 事業譲渡については、会社法467条以下に少し規定がありますね。法では「効力発生日」と記載されていますが、その前日までに、株主総会の決議によって、当該行為に係る契約の承認を受けなければならないと記載されていますが、一般的には小規模な事業譲渡が多いですから、当該行為に係る契約の承認は取締役会承認が多いですね。
○ 法では「前日までに」とされていますが、独禁法の規制により、一定規模以上のものは届出受理の日から30日を経過するまでは事業譲受の実行はできません。注意点や、実務を知らない弁護士や法務部員がする間違いは、1)マーケットシェアーの分母をどのようにとらえるかは(例えば、外食の地域フランチャイジー等の場合は、関西地域でとらえるか、大阪府だけでとらえるか、人は毎日同じ種類の料理を食べませんから、洋食か和食か、ラーメン店はどうするか、中華は入るのか等結構難しいです)公取に事前に行って聞かないとわからないですね。2) 届出受理の日というのは、公取に届出書を持込んだ日ではないですね。持込んで公取側では、書類の不備がないかチェックしますので、その場で何時を届出受理の日にするか言ってくれますが、例えば来週の水曜日を受理の日にしますとか教えてくれます。従い、45日ぐらいかかりますね。3) 届出書には、譲渡側・譲受側の種々の書類(契約書の写し、定款、1%以上保有の株主名簿、事業報告書、承認決議の写し等)が必要ですが、時々契約書に譲渡側の責任で届出を行う事等と記載しています。これなど独禁法の趣旨を全く理解していないですね。これは企業結合規制ですから譲受側の義務です。勿論両者が協力しないと作成できませんけれども。
○ たまに事業譲渡契約ではなく、事業移設契約というのがあります。一部事業を他社に移設する契約ですね。譲渡する事業が、譲渡会社の一部の土地・建物・設備を使用しているものの、これを分割譲渡出来ない場合、譲受ける会社側で新規設備を建設する場合もあるのですが、既存の設備を譲り受け、解体移設する場合もあります。当然、土地は持っていけませんの、一般的には製造設備一式、関連知財、移設先での技術支援(設置・試験運転稼働立上げ)、関連契約の地位譲渡等で構成されます。これは事業譲渡ではないので、競業避止義務はないですね。譲渡側に競業避止義務を課すことは、不公正な取引方法の拘束条件付き取引ですので、記載できませんね。でも、設備を売却すれば譲渡側が実際行う筈ないですね。
○ 事業移設契約で、クロージング日を記載している契約があります。移設する設備等をクロージング日に譲渡するのでしょうか?不思議な考え方です。設備は、既に解体されて譲受会社に設置されて、技術支援を受けて稼働できる状態になっています。でも譲渡前日までは譲渡会社の帳簿に記載することになります。所有権が移っていないからですね。相手に引渡すが自分のものですから寄託契約、火災保険付保等も要りますね。事業移設契約というのは、事業を構成しているものをバラバラに解体して、一塊ずつ売却するものですね。従い、財産の譲渡日は、譲渡する財産(貸借対照表の一部)ごとに別々の方がわかりやすいですね。
○ 事業移設契約でも、譲渡会社の財務諸表は真実正確であることの表明・保証を求めている契約もあります。しかし、対象財産だけで良いだけですね。米国のM&Aの表明・保証条項をまねしていますね。
○ ではなぜ、事業移設を事業譲渡と勘違いして契約書を作成するのでしょうか?これは簡単です。事業譲渡というものが何かの基本を理解していないからですね。そもそも「事業」とは何かという事ですね。「事業とは、人・モノ・金・技術を有機一体として機能させ収益(PL的なFlowの考え方)を得るもの」ですね。ですからクロージング日で区切りますが、Flowの収益力は継続する。この収益力が譲受側に移らないと、譲受側としては暖簾代(営業権の対価)としては払えないですね。譲受側は、これを5年均等額償却します。つまり、StockであるBSとFlowである収益力をセットで、通常はその事業に従事している人を移籍・出向の形態で譲渡する。これが事業譲渡です。従い、事業移設契約ではのれんは移転しません。
では暖簾(営業権)とは何かですが、最高裁判例(S51.7.13裁判集民118号267頁)では「他の企業を上回る企業収益を稼得することができる無形の財産的価値を有する事実関係」と言っています。超過収益力という税法の考え方ですね。「財産的価値」というのは少し不正確ですね。財産とは静止状態であり、flowである収益力が暖簾です。これが組み合わさって事業譲渡となりますが、ばらばらの場合は事業移設契約ですね。
○ 事業譲渡については、会社法467条以下に少し規定がありますね。法では「効力発生日」と記載されていますが、その前日までに、株主総会の決議によって、当該行為に係る契約の承認を受けなければならないと記載されていますが、一般的には小規模な事業譲渡が多いですから、当該行為に係る契約の承認は取締役会承認が多いですね。
○ 法では「前日までに」とされていますが、独禁法の規制により、一定規模以上のものは届出受理の日から30日を経過するまでは事業譲受の実行はできません。注意点や、実務を知らない弁護士や法務部員がする間違いは、1)マーケットシェアーの分母をどのようにとらえるかは(例えば、外食の地域フランチャイジー等の場合は、関西地域でとらえるか、大阪府だけでとらえるか、人は毎日同じ種類の料理を食べませんから、洋食か和食か、ラーメン店はどうするか、中華は入るのか等結構難しいです)公取に事前に行って聞かないとわからないですね。2) 届出受理の日というのは、公取に届出書を持込んだ日ではないですね。持込んで公取側では、書類の不備がないかチェックしますので、その場で何時を届出受理の日にするか言ってくれますが、例えば来週の水曜日を受理の日にしますとか教えてくれます。従い、45日ぐらいかかりますね。3) 届出書には、譲渡側・譲受側の種々の書類(契約書の写し、定款、1%以上保有の株主名簿、事業報告書、承認決議の写し等)が必要ですが、時々契約書に譲渡側の責任で届出を行う事等と記載しています。これなど独禁法の趣旨を全く理解していないですね。これは企業結合規制ですから譲受側の義務です。勿論両者が協力しないと作成できませんけれども。
○ たまに事業譲渡契約ではなく、事業移設契約というのがあります。一部事業を他社に移設する契約ですね。譲渡する事業が、譲渡会社の一部の土地・建物・設備を使用しているものの、これを分割譲渡出来ない場合、譲受ける会社側で新規設備を建設する場合もあるのですが、既存の設備を譲り受け、解体移設する場合もあります。当然、土地は持っていけませんの、一般的には製造設備一式、関連知財、移設先での技術支援(設置・試験運転稼働立上げ)、関連契約の地位譲渡等で構成されます。これは事業譲渡ではないので、競業避止義務はないですね。譲渡側に競業避止義務を課すことは、不公正な取引方法の拘束条件付き取引ですので、記載できませんね。でも、設備を売却すれば譲渡側が実際行う筈ないですね。
○ 事業移設契約で、クロージング日を記載している契約があります。移設する設備等をクロージング日に譲渡するのでしょうか?不思議な考え方です。設備は、既に解体されて譲受会社に設置されて、技術支援を受けて稼働できる状態になっています。でも譲渡前日までは譲渡会社の帳簿に記載することになります。所有権が移っていないからですね。相手に引渡すが自分のものですから寄託契約、火災保険付保等も要りますね。事業移設契約というのは、事業を構成しているものをバラバラに解体して、一塊ずつ売却するものですね。従い、財産の譲渡日は、譲渡する財産(貸借対照表の一部)ごとに別々の方がわかりやすいですね。
○ 事業移設契約でも、譲渡会社の財務諸表は真実正確であることの表明・保証を求めている契約もあります。しかし、対象財産だけで良いだけですね。米国のM&Aの表明・保証条項をまねしていますね。
○ ではなぜ、事業移設を事業譲渡と勘違いして契約書を作成するのでしょうか?これは簡単です。事業譲渡というものが何かの基本を理解していないからですね。そもそも「事業」とは何かという事ですね。「事業とは、人・モノ・金・技術を有機一体として機能させ収益(PL的なFlowの考え方)を得るもの」ですね。ですからクロージング日で区切りますが、Flowの収益力は継続する。この収益力が譲受側に移らないと、譲受側としては暖簾代(営業権の対価)としては払えないですね。譲受側は、これを5年均等額償却します。つまり、StockであるBSとFlowである収益力をセットで、通常はその事業に従事している人を移籍・出向の形態で譲渡する。これが事業譲渡です。従い、事業移設契約ではのれんは移転しません。
では暖簾(営業権)とは何かですが、最高裁判例(S51.7.13裁判集民118号267頁)では「他の企業を上回る企業収益を稼得することができる無形の財産的価値を有する事実関係」と言っています。超過収益力という税法の考え方ですね。「財産的価値」というのは少し不正確ですね。財産とは静止状態であり、flowである収益力が暖簾です。これが組み合わさって事業譲渡となりますが、ばらばらの場合は事業移設契約ですね。