○ GoogleがIPOするときに、創業者による「株主への手紙」に以下のような記載があります。ご存じの通り、複数議決権で有名ですね。クラスA普通株は1株1議決権ですが、クラスB普通株は1株10議決権で創業者等が持っていますね。
‘Google is not a conventional company.’から始まって、長期的視野に立った経営の独立性・安定性の為に、’we have set up a corporate structure that will make it harder for outside parties to take over or influence Google.’とし、さらに続けて ’The main effect of this structure is likely to leave our team, especially Sergey and me, with increasingly significant control over the company's decisions and fate, as Google shares change hands. After the IPO, Sergey, Eric and I will control 37.6% of the voting power of Google, and the executive management team and directors as a group will control 61.4% of the voting power. New investors will fully share in Google's long term economic future but will have little ability to influence its strategic decisions through their voting rights.’
全文はこちら↓
http://investor.google.com/ipo_letter.html
所有は少しでも、議決権を通じて支配と経営は自分達で行う。ハッキリしていますね。「株主は、うるさいこと言わないでね。会社の決定と運命に対する支配は、自分達が保持します」ということですね。会社は(所有権を持つ)株主のものという考えの米国ではユニークな考えですね。
○ 株式会社の所有(Ownership)と支配(Control)については、Berle & Meansの有名な業績がありますね。即ち「支配無き富の所有及び所有無き富の支配が株式会社発展の論理的帰結として出現する」、そして所有無き富の支配即ち経営者支配が実現しつつあるとしています。尚、支配とは、取締役の選任・解任権の保持を言うとしています。
米国は日本と異なり個人株主が多いですね。最近は勿論年金基金やMutual fund等の機関投資家が増えていると思いますが。どれぐらいでしょうか、個人50%、機関投資家がメインの法人が50%ぐらいでしょうか。
・ 日本の場合は、個人はどれだけでしょう? 25%ぐらいでしょうか。それ以外は外人投資家(Fund, LLC, 租税回避地法人等)、金融機関・事業法人ですね。3/4が、まあ法人所有と言っていいと思います。ですから上の米国のケースと少し違います。法人支配ですね。しかし、外人投資家を除けば、一般的にお互い様ですから他社の経営に口出しはしません。従い、結局経営者支配が行われる訳ですね。
○ 株式会社の所有という意味がよくわかりません。所有(保有)とは、民法的に考えれば、使用・収益・処分が自由に出来るという意味ですね。しかし株式は使用(質権としての利用はある)が出来ません。購入・売却(処分)は出来ますが。収益機能を発揮する権原は所有者にはありません。経営者にお任せです。少数株主権等を行使しても会社は動きません。自分で企業価値を上げる事も出来ません。まあ、神社に行って「株価上がれ」と神頼みするぐらいでしょうか。民法的な所有の概念では説明できません。どのように考えればいいのでしょう。
・ 大株主で安定株主もいますが、少し保有の個人株主やデイトレーダーも多くいます。デイトレーダーにとっては、事業経営には当然興味はありません、株式を儲けのツールとして利用する瞬間的所有者ですね。デイトレーダーにとっては、株式は馬券みたいなもの、あるいはルーレットみたいなものかもしれません。馬券もルーレットも、馬主・ルーレット会社の所有者になれる訳でもありません。「所有者」だと言われても、すっきりしませんね。
○ 所有に基づく株主としての支配も通常の支配の意味ではありませんね。大株主は別として、年一回の株主総会で議決権を行使するだけです。Yes or Noの選択式ですね。しかも、総会決議事項は、取締役会設置会社では、法令・定款に規定したことだけですね(295条)。総会で発言しても、経営者に慇懃無礼に振る舞われて、それで終わりが多いのではないでしょうか。議案に反対しても、現状では大半が賛成で可決されます。つまり一部の大株主を除けば株主による支配はないですね。結局経営者が議案を取締役会承認を経て総会に提出し、それがそのまま通る。また会社の業務執行は当然取締役会・取締役に任されています。即ち、所有もしていないし議決権も持っていないけれども、経営者が支配しているということになりますね。