○ 日本的な株価算定・株式買取が是認されましたね。アパマンショップホールディング(=HD)の子会社株式の買取価格を巡り、株主が経営陣に損害賠償を求めた株主代表訴訟の上告審判決で、最高裁第1小法廷は7月15日、株主側の請求を認めた二審東京高裁判決を破棄し、経営側逆転勝訴の判決を出しました。実に変な理屈の判決ですね。
○ 評価額1万円前後の株式を、5年前の払込金額と同じ5万円で買い取っても、「事業再編の効果による企業価値の増加も期待できたことからすれば、-- -- 著しく不合理であるとはいい難い。」と判決は述べています。これじゃ元本保証ですね。株式って元本保証の金融商品でしたっけ??また、「設立から5年が経過しているにすぎないことからすれば、払込金額である5万円を基準とすることには、一般的にみて相応の合理性がないわけではなく」とも判決は言ってますけど、株式買取価格は、払込金額が基準になるというものおかしいし、「5年が経過しているにすぎない」というのも大正・昭和時代の時間感覚ですね。私には5年も経過しているのにと思いますが。
・ まあ、勿論分からないことはないですけどね。ビジネスにメリットのある取引先に頼んで、少数株主になってもらう。経営にも口出ししないおつきあい出資。少数株主に、「元本+金利、あるいは元本だけ戻して、今後も宜しく」っていうことは、実は結構あるんですね。理屈はおかしいけど。
○ 事案の概要は以下のようですね。アパマンショップHDは2006年、月決めマンション事業を手がける傘下の「アパマンショップマンスリー」(2001年頃設立で、HDが66.7%株主)を完全子会社とする事を計画。マンスリーの少数株主は、①フランチャイズ事業加盟店等と、②紛争が生じ買取申し出に応じない株主がいた模様。①の株主については、株主の払込金額の1株当たり5万円(総額1億5800万円)で買い取り、②の紛争株主とは株式交換で強制的に上場企業のHDの少数株主としたようです。
○ 上記②では紛争株主保有株式を株式交換しますから、監査法人2社から交換比率算定書を取得。1社の評価額は9,709円、もう1社の評価額は、類似会社比較法で、6,561~19,090円とされたようです。
○ 上記評価額のマンスリーの株式を、HDが5万円で①の株主から買った訳ですね。ということで、HDの株主が、経営陣はHDが不当に高く株式を買ってHDに損害を与えた、即ち、HDの取締役は善管注意義務違反があり、取締役は任務を怠り、会社法423条1項により、会社に対して損害賠償責任を負うということで、HDの株主代表訴訟を行ったわけですね。
○ HDの経営会議では、1)完全子会社とする必要がある。2)円滑な事業遂行を図る観点から、株式交換ではなく、可能な限り任意合意の買取を行う。3)買取価格は、払込金額である5万円が適当とされたようです。弁護士意見は、経営判断の問題であり法的に問題ないこと、任意買取における価格設定は、必要性とのバランスの問題であり、合計金額も高額ではない、加盟店との関係を良好に保つ必要性があるのであれば許容範囲であるとの意見だったとこのこと。ということで、①の株主から1株5万円で3,160株(15800万円)を買い取り、②の株主に対しては株式交換で、マンスリーの株式1株につきHD株0.192株の割合をもって割当交付されました。
○ 弁護士の意見も面白いですね。「任意買取における価格設定は、必要性とのバランスの問題」と言っています。その通りですね。いろいろ株価算定の方式はありますが、結局力関係、売りたさと買いたさの程度と背後事情によって(非上場株式の)株価は決まりますからね。法的にはこれで問題ないでしょう。でも税務上問題が生じる場合がありますから注意が必要でしょう。