まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

会社分割等の実務上の問題等

2012-10-14 20:28:47 | 商事法務

 

 久しぶりに会社法の「けち」ですね。今回は、会社分割等の組織再編です。思い浮かぶ事をランダムに書いてみます。

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 まず、事前開示ですね。合併等の場合も同じですが、吸収分割の分割会社の場合は、782条に定めています。2週間前の日より事前開示をしなければいけません。これは株主総会通知と合わせたのですね。しかし、全株式譲渡制限会社の場合、299条により総会の招集通知は1週間前ですね。この開示は勿論株主だけでは無く、株主と債権者の為になされます。従い、株主は、招集通知を受ける前でも、事前開示書面の閲覧ができますね。大会社なら、新聞報道等で組織再編は報道されますし、上場企業等なら重要事実ですのでディスクロージャーの義務がありますので取締役会決議の時点で分かりますが、小さな会社の場合は、株主は招集通知を受けるまでわかりません。また債権者には、当事会社が事前に言わない限り分かりませんね。普通は、融資を受けている銀行等には言うでしょうけど、営業取引をしている債権者(買掛金の相手先等)には、営業マンがキチンと理解して説明しないとわかりません。吸収分割で、業績の良い会社に吸収分割されるなら債権としては大丈夫かもしれないけど、その会社が下流部分を吸収する場合等は競業先となる場合もあります。

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 吸収分割の定義は「その事業に関して有する権利義務の全部又は一部を分割後他の会社に承継させることをいう」とされています。昔の商法での定義は、旧商法374条の16によれば、「会社ハ其ノ一方ノ営業ノ全部又ハ一部ヲ他方ニ承継セシムル為吸収分割ヲ為スコト」でしたね。事業に関して有する権利義務の全部・一部ですから、契約を数件他社に移転させることでも会社分割となります。営業・事業の全部・一部なら、まあひとかたまりのもの、即ち有機的一体として機能して収益を生み出す事業部門と考えられますが、この定義はちょっとおかしいですね。<o:p></o:p>

 

 

 吸収分割契約として定めるべき事項は758条に定めています。その中の一つとして「吸収分割会社から承継する資産、債務、雇用契約その他の権利義務に関する事項」としています。何か違う意味があるのでしょうか?資産・負債と言えば分かりやすいのに資産・債務と言っています。債務は義務でしょうし、資産も権利でしょうか。まあ「その他の権利義務に関する事項」と言っていますので結局は一緒ということになりますけどね。引当金については、債務性のあるものとないものがありますね。例えば、債務保証損失引当金は債務性がありません。私は、まだ会社分割を行ったことがないので、この辺は実務ではどうしているのか教えて欲しいですね。

 雇用契約と言っています。これについては会社分割に伴う労働契約承継法がありますね。役員は対象外ですね。合併契約では、給与体系・厚生年金基金等が異なる会社に吸収合併されたら、やはり広い意味の雇用条件の変更が生じます。吸収分割でも同じ事が起こります。

 

 債権者への通知は、官報公告+日刊新聞紙(又は電子)公告を行えば、個別催告を不要ですね(分割会社の不法行為債権者を除く)。しかし、債務者への通知は行いません。売掛金先等ですね。この辺はキチンと会社分割の通知・挨拶を行っておかないといけません。先月まで分割会社から請求書が来ていたのに、今月からは相手にとって知らない会社=承継会社から請求書を届けることになりかねません。基本契約は分割会社と結んでいたが、条件変更の覚書の締結等は、承継会社と結ばないといけません。いきなり覚書のドラフトが送って来たら会社名が違っていたということが起こります。会社分割等知らない営業マンにとっては、何これ?となりますからね。<o:p></o:p>

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従業員の退職後の競業避止義務等

2012-10-09 21:22:15 | 商事法務

 

 取締役会設置会社の取締役は、「自己又は第三者のために会社の事業の部類に属する取引をしようとするとき」は、取締役会の承認が必要ですね(356条、365条)。これは取締役としての地位により取得した情報又は営業上の機会を利用し、会社が利得出来る筈の取引の機会を奪い、会社の利益を犠牲にする危険を防止するためですね。会社法に定める忠実義務の一種ですね。通説は、忠実義務と善管注意義務を同一の義務と解しており、この競業避止義務も善管注意義務の一内容と解しています。

 では、部長などの従業員の場合はどうでしょうか。程度の差
はありますが、同じですね。しかし同じ事が会社に勤め
ながら、自分で会社を興して競業を行う事もあるでしょう
が、普通はそんな余裕は無いでしょうね。一般的には、
会社を退職して再就職するときに問題になりますね。
特にライバル企業から引き抜かれる場合とか、自分で
類似業種の事業を起こすときに問題になります。
従来の会社は、従業員が退職するときには、①在職中に
知り得た秘密の秘密保持義務と、②競業避止義務を
従業員に契約で課す場合が結構あります。一方、従業員
には、職業選択の自由がありますし、従来こつこつ身に
つけてきた自分の経験・ノウハウを活かすのは当然です。
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 退職する従業員にとっては、今までの取引先を自分が設立
する会社の取引先にするのが近道ですし、それが
ノウハウですね。一方辞められる会社の方が、それは
会社の顧客であって退職従業員の顧客では無いという
立場です。辞める従業員は、スッキリ早く辞めたいので、
会社の言うとおりの競業避止義務の契約書にサインして
辞めることもあります。契約書サインに難色を示すと、
当然会社としても防衛策をとりますからね。
個人の職業選択の自由と以前の会社の
利益のバランスを
どのようにとるかの問題ですね。
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 競業避止義務の契約書が有効と認められるか、公序良俗
違反として無効となるかは、一般的に下記等を判断基準
としているようです。
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 退職従業員の地位と職務内容<o:p></o:p>
 競業避止義務の職種・範囲{地域等}<o:p></o:p>
 避止義務の期間<o:p></o:p>
 避止義務の代償処置(退職金等の経済的補填)<o:p></o:p>
原告は、契約の避止義務違反により、会社が損害・得べ
かりし利益を得ていないということを立証しないといけ
ませんので、営業部門の退職者が顧客を奪ったというのが
典型でしょうね。あるいは技術者が、その技術を提供した
というのもあるかも
しれません。ソフトウェアエンジニアが
類似ソフトを開発したというようなケースですね。


○ 従業員が退職して競業を行う理由として、経営者の
経営に不満を持つケースが結構あります。ですから、組織で
動く大企業は別として、中小企業で人徳の無い経営者のいる
会社は、退職者が多いので要注意ですね。一方、企業の中
には、従業員の独立を支援する企業もあります。独立を支援
して、類似の事業を始めて、相互補完や相乗効果が期待
できる事業に従事するのを推奨するわけですね。


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 個人レベルでは無く、企業としての競業禁止義務は、事業
譲渡等の際に負いますね(法21条)。のれん分けのときは、
地理的な範囲などで分けるのでしょうか?レストラン等
なら良いですが、今はインターネットで地理的範囲を
越えられる時代ですからね。競業避止と言っても難しい
ですね。

 あるSpin-offの事例で、会社間で従業員の引き抜きは辞めま
しょうという規定を入れたこともありましたので、参考までに
掲載しておきましょう。<o:p></o:p>

   No Party shall solicit the employment of any other Party 
(including its affiliates)’s personnel within a period of 
twelve (12) months following the date of the Spin-off,
provided that the above provision shall not restrict the
right of any Party to (a) solicit the employment of
personnel of any other Party after such personnel have
separated or have been separated from the employment
of such party, provided that the hiring party did not solicit
such separation, (b) communicate about and accept the
job application initiated by personnel of the other Party,
provided that the hiring party did not solicit such
personnel’s resignation from such Party,and (c) solicit
or recruit generally in the media.


Dsc_0148_2

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未上場企業の企業価値・買収価額とのれん

2012-10-01 00:06:00 | M&A

 

 上場企業の場合の買収価格や合併・株式交換の際等の企業価値評価については、株価が重要な要素ですね。ですから企業価値と乖離していてもその株価でしか買えないという現実があります。TOB等の場合は例外もありますが、株価にそれなりのPremiumを載せますControlling Premiumですね。上場株・未上場株共通ですが、法人税基本通達の有価証券の評価損のところに(9-1-15)「企業支配をするためにされたものと認められるときは、当該企業支配株式等の価額は、当該株式等の通常の価額に企業支配に係る対価の額を加算した金額とする」とされていますね。企業価値と買収価額の乖離が起こるわけですね。一方、未上場企業の株式・出資の評価については、相続税の財産評価基本通達の168以降等にも詳細に定めています。未上場企業の場合は、通常は企業価値と買収価額とは、あまり乖離は生じないと思われますので、一応企業価値=買収価額としましょう。<o:p></o:p>

 

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 ご承知の通り、株価の算定には、企業価値を算出する方法として①Stockベースの純資産(資産―負債)を基にして算出する方法(時価ベース純資産等)、②フローベースの利益あるいはキャッシュフローをベースにする方法(計算遊びの米国のDCF等とかEBITDAmultipleとか)、③配当・利益などを還元するCapitalizationの方法、それと直接株価を算出する④上場株式と比準する方法(相続税評価通達の類似業種比準方式、類似会社比準方式、企業比較法、簡単なPERPBR等)等ですね。更に、これらのいくつかを組み合わせる方法とか、いくつかの方法を行ってからRangeで提示することもあります。いろんな算定方式があり、裁判所の判例は個々の事情を勘案しますから、確立した方法は無いですね。<o:p></o:p>

 

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 私は、未上場企業の企業価値の算出は、日本の古典的な方式である「純資産+のれん(主として一定期間の利益額)」即ち、上記の①+②を組み合わせるのが結構合理的であると考えています。純資産は、時価ベース純資産ですね。一定期間の利益とは、例えば買収期前後3年とか5年とかの経常利益あるいは純利益予想額ですね。経常利益か純利益かは、買収の経緯・力関係で決まります。買収者は、買収してから35年以内に、連結の利益ベースで利益を計上しないと買収する意味が無いから、まあ相乗効果が期待できる場合でもMax.5年ぐらいの利益額の総額ぐらいでしょうか。<o:p></o:p>

 

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 学者は、のれんとは「ある企業が同業他社に比べて超過収益力を持つ場合、その超過収益力に対する対価である」等と言っていますね。しかし、実際の企業買収で、超過収益力を持つ企業を買収できますか?難しいですね。せいぜい平均利益金額を下回る企業ぐらいしか買収できません。その買収のときに、自家創設のれんが顕在化します。自家創設のれんの評価は「極めて曖昧」だから計上出来ないけれども、買収したときは計上できますからね。連結会計では、子会社の、資産・負債は連結され、資本勘定は相殺消去されます。投資消去差額ですね。これは従来連結調整勘定として処理されてきましたが、20065月施行の会社法・計算規則により「のれん」として処理されます。いろいろなのれんの考え方があり、それが整理されていませんね。<o:p></o:p>

 

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 私は、「のれん」とは以下だと考えて居ます。例えば、元手をもとに事業を始めても利益を出さないと事業は継続しませんね。資産があってもそれだけでは収益を生みません。資産・負債を使って収益をあげ、更に利益を上げなければなりません。即ち営業キャッシュフローを作り出さないといけません。キャッシュを作り出すのは人です。例えば、駅などの好立地でビジネスができるようになっても、その立地条件を引っ張ってくるのは人です。有名ブランドにしても、代々の先輩諸氏がこつこつ信用を築いたからです。売れる技術・製品にしても、その基礎は今までの技術屋さんの技術の蓄積を基に生み出されます。このキャッシュを生み出す力、そして利益を出す力がのれんなのです。キャッシュを生み出す力と言っても、収益マイナス費用が赤字では事業は継続しません。即ち企業とは、存続が前提であり、存続するにはキャッシュを継続的に生み出し利益を出さないといけません。企業の買収は事業の買収です。事業は、純資産(資産―負債)と利益で成り立っているのです。従い買収価額とは、「純資産+のれん(利益等のMultiple)」で算出するのが結構合理的なのです。仮に、その利益が、平均利益金額以下でものれんなのです。買収でのれんは超過利益金額だといっても、超過利益金額というのは、「結構曖昧」で具体的に算出は難しいのです。上記のように利益と考えるがスッキリ行くと思います。<o:p></o:p>

 

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