まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

持株比率に応じた取締役の指名―累積投票の復活

2008-08-06 11:08:08 | 商事法務

     会社法342条では、累積投票による取締役選任の規定があります。即ち、「株主総会の目的である事項が二人以上の取締役の選任である場合には、株主は、定款に別段の定めがあるときを除き、株式会社に対し、第3項から第5項までに規定するところにより取締役を選任すべきことを請求することができる。」と規定しています。しかし、大半の会社は、定款で累積投票を排除しています。累積投票の制度は、S.25年に米国の例にならい導入されましたが、経済界の圧力等に屈して、S.49年の商法改正で排除を認めることになりましたね。

     持株比率に応じて役員を指名出来また選任できるというのが常識だと思うのですが、日本では人事権を握っている、会長や社長がこの原則を無視しています。日本の経営者は器量がいまいちの人が多い(?)のかも知れませんし、あるいはよく言えば自分の経営戦略に忠実に従う人を好むと言いますか、素直というかイエスマンというか、そういった人を取締役として指名して、総会で選任してもらっている例がありますね。

     取締役会というのは、取締役会で議論を尽くして相互牽制を働かして業務を決定するというのが本旨ですね。儀式、形式的決議の場ではないですね。取締役会にて相互監督(監督権能)等の監督体制を整備することを狙っているとか学者は言っていますが、現実はそうはなっていませんね。しかし、昨今ガバナンスとか外部の客観的で公正な意見を表明する社外取締役が必要ということで、社外取締役の選任が多くなっています。しかし、これまた取引先の役員を選任して、独立取締役からはほど遠い人を選んでいる例が多いと思います。712日の日経新聞では、「低出席率」の社外取締役と題して記事が掲載されています。ヤクルトのエマニュエル・ファベール取締役は、出席率0%と記載されていますね。これで取締役なんですかね?ひどいですね。

     社外取締役を選任して取締役会を活性化しようということが言われていますが、活性化のポーズが多いのではないでしょうか。真剣・本気で活性化を目指すのなら、経団連等が圧力をかけても、累積投票の排除を禁止すべきでしょうね。今の法務省や学者は、経済界よりですから、(まあ学者の中には企業の顧問などしてお金を貰っている人もいるようですので)そんな改正を行うことは考えられないですけどね。

     例えば楽天(楽天ストラテジックパートナーズの3.35%を含む)は東京放送(TBS)19.84%の株主ですが、楽天が指名した取締役はTBSにはいません。いくら投資したのでしょうかね。1500億円ぐらいでしょうか? 社外取締役としては、毎日放送山本会長(取締役会出席率46%)・電通俣木会長(62%)・毎日新聞北村社長(77%)・三井物産槍田社長(70%)が就任しています。「それぞれ豊富な経験・知見を有する企業経営者としての観点等から、当社の業務執行者から独立した立場で適宜発言しています」と事業報告書に記載されていますが、どんな発言をしているのでしょうね。こんな記載では、どうでもよいコメントをたまにしたぐらいしかイメージできませんね。712日の日経新聞では、低出席率の社外役員も、「取締役会以外でも助言をいただいており、問題はない」(日清食品)とか書いていますが、こんな見え透いた事など信用出来ませんね。

     東京放送の取締役は15名います。15x19.84%=2.98ですから、累積投票で取締役を選任すれば、3名は楽天の指名する取締役が就任するわけですね。3名では議決に影響を与えませんが、取締役会は当然緊張しますし、真剣な議論の場になります。活性化します。ろくに出席しない、あるいは事務当局が事前に配布した資料などまるで読まない、役立たない、居眠りをしてても影響の無い社外取締役がいてもしょうがないのではないでしょうか?

     342条から「定款に別段の定めがあるときを除き、」を削除できないなら、せめて最後に、「定款に別段の定めがあるときといえども、議決権の1/6以上を有する株主より請求されたときは、3項から第5項までに規定するところにより(累積投票により)取締役を選任すべきことを請求することができる。」ぐらいに変更してほしいですね。16.7%も保有していては、当然ある程度経営に影響を与える立場を確保したいですよね。

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