舞台『わたしの耳』をライブ配信で見ました。人が人にどんな時魅力を感じ、どんな時に壁を感じるかが、見事に演じられていました。
作:ピーター・シェーファー
上演台本・演出:マギー
出演:ウェンツ瑛士、趣里、岩崎う大
ある男が女性を家に招く。しかし彼は女性と交際した経験がなく何をどうしたらいいのかわからない。だから自分を飾り立て、「いい自分」を演じようとする。さらに会話がうまくいくように、会社で人気者の友人を呼び、雰囲気を作ってもらおうとする。女性が家に来る。しかし男と女性は会話が成り立たない。そもそもの趣味が違うからしょうがない。しかし本当はそれが原因ではない。男には本音がない。男の真の姿が見えないからだ。女性は、男の友人のほうに興味を持ち始める。友人は本音で話をしているので、その姿に魅力を感じる。友人は男との約束通り、途中で帰る。男を女性は二人きりになる。気まずい時間が流れ、女性は帰ろうとする。その時初めて男は自身の本音を語り始める。情けない自分の真の姿を女性にさらけ出す。女性はその男性に興味を持ち始める。それを察した男は女性に肉体的な接触を求めようとする。女性は男を殴る。男は「実は自分には婚約者がいる」と言う。
真の姿が見えない人間は付き合いにくい。しかし誰もが自分を飾る。その情けなさこそが人間的である。男は見事なほどに情けない。しかしそこに自分を見てしまう人は多いだろう。微妙な人間関係の機微が描かれたおもしろい作品だった。
ウェンツ瑛士さんが情けない男をうまく演じている。趣里さんは微妙な心理の変化を表現している。安心して見ていられる。岩崎う大さんは確実な演技をしていた。もともとはお笑い芸人さんだったようだが、最近は劇団でも活動が主になってるということだ。
地方在住者にとってはライブ配信はありがたい。ただしやはり集中力が大きく落ちてしまう。やはり生の舞台を見たい。