映画『箱男』を見ました。フィクションを作り出す事の意味と恐ろしさを同時に感じさせる映画でした。知的興奮を覚えました。
安倍公房の小説『箱男』は1973年に発表されたということです。私は安倍公房のファンだったので、単行本が新潮社から出版された時買った記憶があったんですが、それだと小学生の時に買ったことになります。どうも記憶がおかしくなっているようです。いずれにしても『箱男』を読んだ記憶はあるのですが、細かい内容までは覚えていなく、映画を見て改めてすごい作品だったんだと再認識させられました。
人間は誰もがフィクションを作り出す。その作り出されたフィクションには必ず「語り手」が設定されなければいけません。「語り手」はたくさんの登場人物を生み出し、パラレルワールドのような新たな世界を想像します。その世界の中で新たな「語り手」を生み出し、さらに新たな世界を創り出すことになります。一方では登場人物の中の「語り手」はもとの「語り手」に戦いをいどみ、想像世界を乗っ取ろうとする可能性もあります。メタ、メタメタ、メタメタメタ・・・・と入子型の宇宙が広がっていきます。しかもそれはそれぞれの人が作り出していくのです。
夢があると同時に、とても危険な香りもします。
難しい作品ではあるのですが、知的好奇心を満たすと共に、フィクションの可能性を示す素晴らしい映画でした。
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