彩の国さいたま芸術劇場開館30周年記念 彩の国シェイクスピア・シリーズ2nd Vol.1『ハムレット』を見ました。役者の熱演により、迫力のある素晴らしい舞台でした。
演出は吉田鋼太郎。キャストはハムレットが柿澤勇人、オフィーリア役に北香那。ハムレットの亡き父と、その弟のクローディアス役を吉田鋼太郎、ハムレットの母ガートルード役に高橋ひとみなどが演じます。
舞台は満足したのですが、なんど見てもハムレットはよくわからなくてしっくりきません。今回はそのことについて書きます。
ハムレットの父であるデンマーク王が急死します。王の弟クローディアスが王妃と結婚し、後継者としてデンマーク王の座に就きます。つまりハムレットの母は、ハムレットの伯父とすぐに再婚してしまうのです。そこにハムレットの父の亡霊が現れ、自分はクローディアスの毒殺されたのだとハムレットが告げます。ハムレットは復讐を誓います。
ここまでの筋はわかりやすいのですが、ここからがよくわからなくなります。ハムレットの「暴走」が始まるのです。
復讐を誓ったハムレットは狂い始めます。狂気を装っているようでもあるのですが、それにしては行き過ぎです。ハムレットは愛するオフェーリアを無下に扱います。さらには、母である王妃と会話しているところを隠れて盗み聞きしていたオフェーリアの父である宰相ポローニアスを、クローディアスと誤って刺し殺してしまうのです。かわいそうなのはオフェーリアです。愛するハムレットから冷たくののしられ、父親もハムレットに殺されてしまうのです。オフェーリアは気が狂い、溺死します。
ハムレットの行為はどう見てもやりすぎです。観客はここまでくるとハムレットと同化できなくなります。
宰相ポローニアスの息子であり、オフェーリアの兄であるレアティーズは、父と妹の仇をとろうとします。ハムレットと剣術の試合を行い、毒を塗った件でハムレットを殺そうとするのです。しかし結果として、ハムレットもレアティーズも剣の毒のために死んでしまいます。さらにはクローディアスもガードルードも死んでしまいます。
最後のシーンは味方によってはドタバタ劇のようでもあるのです。そもそこハムレットはクローディアスに対して復讐をすればそれでよかったはずです。その機会もありました。しかし、事を面倒にしてしまって、みんな死んでしまうのです。これは何を意図した作品だったのでしょう。
しかし、実はこの不思議さに最近は実ははまってきているのです。なぜこうなるのか、なぜこうする必要があるのか、それを考えるとおもしろくなってきます。その解釈をつくりあげることも、観客の創造でもあるのです。
芸術作品とは、受け手の想像力を活性化し、受け手自身があらたなものを作り上げることも含めて存在するものなのではないかという気もしてきます。「ハムレット」はそういうことを考えさせてくれる作品です。
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