アカデミー賞7部門を獲得した映画『オッペンハイマー』を見ました。3時間もある作品でしかも難解だと聞いていたので見るべきか悩んでいたのですが、やはり見るべきすばらしい映画でした。
第2次世界大戦中、アメリカはドイツの核兵器開発に神経をとがらせていました。理論物理学者のオッペンハイマーは、原爆開発プロジェクトの委員長に任命されます。マンハッタン計画です。原子力爆弾の開発には成功しますが、実際に見るその威力は、想像をはるかに超えるものでした。そこから国家の混乱が始まり、オッペンハイマーの混乱が始まります。その時ドイツはすでに降伏しています。しかしいろいろな理屈をつけて、原爆をすでに敗戦が決定的な日本に投下してしまうのです。はたしてその必要があったのか。
この映画は見る人の立場によってさまざまな感情を喚起します。日本人からすれば、結局はアメリカ人の日本人差別によって、罪のない日本人が無差別に殺されたことに対しての怒りが沸き起こります。国家という巨大権力がどれだけの罪を犯しているのかという点も考えなければなりません。科学技術が人間存在の不安を生み出す事の哲学的な意味を考える必要もあります。アメリカ人から見れば、また違った点に注目するかもしれません。観客それぞれがそれぞれの混乱を抱えるのです。
切り取り方に監督の忖度はあるのでしょうが、できる限り、平等な眼で描こうとしているということは伺えます。見る人が冷静な目で見つめ直す必要があるのです。オッペンハイマーの苦悩は観客の苦悩であり、それぞれの登場人物の苦悩も観客の苦悩であるように作られています。
もはや、軍事力競争は止められない状況になってしまいました。さらにはITによって人類は凡てをコントロールされてしまいつつあります。しっかりと考えないといけません。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます