とにかく書いておかないと

すぐに忘れてしまうことを、書き残しておきます。

私は議論のできない国の歯車でしかない

2018-12-09 09:36:19 | 政治
 実質的な移民政策「出入国管理法改正案」が成立した。外国人労働者の受け入れは必要であることは明らかだ。しかしこの法案はどういう法案なのかがよくわからないまま提出されたものである。質問されても答えられない。例のごとく資料は隠そうとするし、あきらかになった事実に対して質問しても、「わからない」ですます。政府の対応はあまりにひどい。特に技能実習生が2015~17年の3年間だけで実に69名も死亡したという衝撃の事実が明るみに出たが、死亡原因の詳細は明らかにされないままであったのは、もはや民主国家とは言えない暴挙である。

 おそらく議論をしたくなかったのだ。議論をすればボロがでる。だからボロがでないように議論をしたくない。つまり議論のできるほどの国会議員がいないのだ。日本の政治はここまで落ちているのだ。

 おそらくこの法案を通したかったのは経済界である。政府は経済界の下請けになっている。経済界にとってこんなに都合のいい政権はない。要求すればなんでもやってくれるのである。

 経済がよくなるのは悪いことではない。最近の好景気が本当にこの政権のおかげならば、もしかしたら正しいのかもしれないと思う人もいるだろう。しかし、これでは日本人は日本という組織の中の歯車でしかない。これでは「国家」は死滅する。

 この年齢になってこんなひどい国の国民であったことに気づかされた。あまりに悲しい。
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「平和になる」か「平和がなる」か

2018-12-07 18:05:51 | 1年前シリーズ
 いよいよ、来年4月に「平成」が終わる。天皇制の是非はともかく、今の天皇はとてもすばらしい人であることはよくわかる。この天皇にこの「平成」という元号がよく似合っている。そのことを1年前のブログで書いているので、以下再掲する。

 「平成」という元号について「平和に成る」という意味合いがあると説明する人がいる。もちろん目くじらを立てるほどのことではないが。その意味ならば「成平」となるはずである。動詞の前に連用修飾語(英文法でいう「補語」)がくることはないからだ。だから「平和が成る」と読むほうが自然である。

 ただし、もちろんそんな単純に説明していいものでない。新元号の発表時に説明された「平成」の名前の由来は、『史記』五帝本紀の「内平外成(内平かに外成る)」、『書経(偽古文尚書)』大禹謨の「地平天成(地平かに天成る)」からで「国の内外、天地とも平和が達成される」という意味である。しかしいずれにしても「平和が成る」という意味であることには変わりない。

 そこで2つを並べて見ていただきたい。

 平和になる。
 平和がなる。

 前者はあくまでも受動的である。自分の意志とは関係なく、勝手に平和になったように感じられる。それに対して後者は能動的な印象を受ける。自らの働きかけによって「平和」が「実現した」という感じであろう。

 今の天皇は平和の実現を目指した活動をしてきた。特に高齢になってからの活動には目を見張るものがある。憲法の精神を象徴としての自らの活動によって示そうとしたように思う。われわれは「象徴天皇」と軽々しく言っているが、天皇陛下自身には深い思慮があったのだ。すばらしい人だ。

 まだ天皇として1年以上ある。これからも象徴天皇としての「平和が成る」ためのすばらしい活動を見つめていきたい。


 あと5か月で「平成」は終わる。少しでも「平和が成る」ように努力したい。
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受験生の立場での対応を(東北大学の「大学入学共通テスト」の対応に対して)

2018-12-06 08:38:10 | 教育
 東北大学が平成33年度入試(2021年入試)における「大学入学共通テスト」の対応を発表した。

 この「大学入学共通テスト」というのは、現在の「センター試験」に代わるものであり、新たな試みがなされる。大きな変化は以下の2点である。

・この試験とは別に英語に関しては「英検」や「TOEIC」などのような民間の検定試験を受験しなければならない(スピーキング、ライティングの試験が必須)
・国語と数学で記述式試験が加わる

 
 英語の民間試験に関しては話題については話題に上ることも多く、耳にしたことがある人も多いのではないかと思う。あまりに杜撰なものであり、今回の東北大学の「出願要件としない」という決断は現状では妥当なものである。

 国語の記述式については東北大学は次のように発表した

①国語の記述式問題の活用については,以下のとおり取り扱います。
1)段階別評価を点数化して合否判定に用いることはしません。
2)ただし、合否ラインに志願者が同点で並んだ場合,記述式問題の成績評価が高い
志願者を優先的に合格とします。
詳細については,大学入試センターによる成績表示方法の決定発表を待って改めて公
表します。
(補足説明)
・思考力・表現力は重要ですが,本学では新共通テストの記述式問題(80 字~120 字)程
度及びそれ以上の高度な問題が一般選抜の個別試験や AO 入試の筆記試験ですでに出題
されており,思考力・表現力等の評価は現状でも十分可能であると考えています。
・段階別評価を点数化すること自体が段階別評価の理念に整合しない恐れがあります。
・また点数化した場合の点数の開きが本来の成績差を合理的に反映したものとは考えられ
ず,受験生の不公平な扱いとなる恐れもあります。


 これもとてもまっとうなものです。

 しかし、まっとうであるがとても困るものです。もしこのようなことになってしまったら、ほとんどの受験生は記述式問題を一番後回しにして時間がたりなければやらずに終わらせることになります。東北大学だけしか考えていない受験生ならばそれでいいかもしれません。しかし多くの受験生は他の大学も考えざるをえません。すると記述式にどう対応するか。どれくらいの時間をかけるべきかなど、学力とは別のところで神経を使わざるをえなくなります。これは受験生に大きな心理的な負担と混乱を与えることになります。東北大学としては妥当でも、全体を見た場合はだとうではないのです。

 英語の検定試験だって同じだと思われるかもしれません。しかし、英語の検定試験は別日程で行われます。しかも東北大学を受験するレベルであれば英検準2級ぐらいはとれると思いますので、結局は受験しておくということで落ち着くことが予想されます。だからそんなに大きな混乱はないのではないかと思われるのです。

 それに対して国語の場合は「大学入試共通テスト」の「国語」の時間の中で記述式が行われるのです。従来「センター試験」では80分で「現代文評論」「小説」「古文」「漢文」それぞれ50点ずつの4問、計200点の問題が出題されていました。今回の変更で「大学入試共通テスト」では、「センター試験」とほぼ同じような試験に新たに記述式の問題が加わります。時間は100分になります。ところが記述式の問題は「点数化しない」と公表されています。「国語」の試験は、計200点のマーク式の問題と、点数化しない記述式の問題を100分の制限時間で行うのです。(この説明でほとんどの人は理解できないのではないかと心配しつつ、先に進めます)では、記述式の問題はどう扱われるのか。段階評価するという発表がなされ、段階についてのシミュレーションが公表されています。そしてその段階評価の扱い方は大学に任されているのです。

 そもそもこの制度がどれだけおろかなものか。多くの人は指摘していましたが、当局は後にはひけないと突っ走ってしまています。でたらめすぎます。

 しかしそれでも私はこの段階評価を結局は点数化していくのではないかと思っていました。そうでもしなければ試験が試験として成り立たなくなるかれです。

 今回東北大学の見解は、「記述式の部分はほとんど見ませんよ。」というものです。これはこれで筋は通っていてすがすがしいものです。しかし、受験生の身になって考えてみたら、混乱させられるだけです。いくら大人としての筋を通しても、犠牲になるのが受験生ならば賛成することはできません。だれが悪いのかは判然としませんが、あきらかに「大人」が悪いのです。そのつけを「子ども」に払わせるわけにはいきません。私の理解不足による勘違いかもしれませんが、東北大学の方にはもう少し丁寧に説明していただきたいと思います。

 この混乱の責任はしっかりと「大人」がとらなければいけません。受験生の立場に立った改革にしていただくように強く要望します。
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なぜ「先生」はKの遺書を「わざとそれを皆みんなの眼に着くように、元の通り机の上に置」いたのか(『こころ』シリーズ⑬)

2018-12-05 15:49:16 | 『こころ』
 夏目漱石の『こころ』の授業をしながら気が付いたことを書き残しておくシリーズ。今回は下の四十八章、『ころろ』の中でも一番有名なKの自殺に気が付く場面です。

 Kは「奥さん」から「先生」と「お嬢さん」の縁談を聞きます。それに対してKは一見落ち着いて対応します。その話を「奥さん」に聞いた「先生」は動揺します。そして「おれは策略で勝っても人間としては負けたのだ」と感じます。なんとかしなければと思うのですが、「先生」は動くことができません。そうしているうちにKは自殺してしまします。

 その時に襖がなぜ開いていたのかというのは常に問題になることです。これは想像力を掻き立てる問題です。

 今年の授業では生徒はそこを問題にはしてくれませんでした。しかし別なところでおもしろい指摘をしてくれました。それが表題にした

なぜ「先生」はKの遺書を「わざとそれを皆みんなの眼に着くように、元の通り机の上に置」いたのか。

です。

 「先生」は自分に対する恨みでも書かれていたら大変だと思ったので、遺書をすぐに見る必要がありました。「先生」にとって幸いなことに遺書には自分が悪人になるようなことは書かれていません。「助かった」と思った「先生」は、自分が第一発見者となることを回避しようとしたのでしょうか。それは変です。「先生」はすでに封を切っているから、「先生」が遺書を見ているというのは誰もが気づきます。だとしたらなぜKの遺書を「わざとそれを皆みんなの眼に着くように、元の通り机の上に置」いたのでしょうか。

 Kの自殺の理由がK自身の中にあり誰のせいでもないということをみんなに知らしめたかったのだと考えるのが一番自然な解釈です。Kの遺書を「先生」が見るのは自然なことです。しかし哲学者然としたKの自殺の理由としてはとりたてて違和感のない理由を遺書の中に書いてあったので、隠す必要も、とりたてて誰かにこの遺書を知らせる必要もなかったのです。

 死んだ人に対しても自分の損得で行動してしまう「先生」はこの後、この行動に罪悪感を抱かざるを得なくなります。

 Kはどうでしょう。Kは自分の自殺の理由を明確に書いていません。すくなくとも他人のせいにはしていません。「先生」はここに大きな落差を感じることになります。そして時間がたつにつれ、その落差が「先生」を苦しめることになるのです。

 この章ではもうひとつ疑問に感じることがあります。なぜKは遺書に「お嬢さん」のことを書いていなかったのでしょう。これもまた不自然です。「お嬢さん」が逆に意識の対象であったことが推測されます。この正解はわかるものではありません。しかし、このことも「先生」の混乱に輪をかける結果となってしまいます。疑心暗鬼というものはそういうものです。

 疑心暗鬼に陥った人間の心の弱さがうまく描かれている場面です。
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劇評『民衆の敵』(12月2日シアターコクーン)

2018-12-03 08:12:26 | 演劇
作:ヘンリック・イプセン
翻訳:広田敦郎(シャーロット・バースランドの英語逐語訳による)
演出:ジョナサン・マンビィ
出演:堤真一、安蘭けい、谷原章介、大西礼芳、赤楚衛二、外山誠二、大鷹明良、木場勝己、段田安則

 シアターコクーンで『民衆の敵』を見た。戯曲、演出、役者、そしてスタッフのそれぞれのよさが見事にかみ合っていたすばらしい舞台であった。

 シアターコクーンが海外の演出家を招いて上演するシリーズを始めた。以前から海外の演出家を招いての公演は行っていたが、今年からはこれを一つのシリーズとしていくようである。海外の演出家がいいのかはまだわからないが、おもしろい企画である。さまざまな気づきがある。今回はジョナサン・マンビィが演出する。

 ジョナサン・マンビィは過去にやはりシアターコクーンで『るつぼ』を演出した。むずかしい作品で、あまりいい印象をもっていない。しかし舞台転換でのインパクトはよく覚えている。イギリスの演出家でRSCでシェークスピア作品を多く演出しているらしい。

 今回の作品はイプセンの『民衆の敵』。最近イプセンの作品がよく上演される。古い作家のように思っていたが、実際に見てみると、現代に通じることが多い。今回の『民衆の敵』は現代の日本の状況とまるで一致しており、古さなんてまったく感じない。多数派は実際には間違っていることが多く、民衆のほとんどが自分の利益のために知らず知らずに多数派に寄って行く。自分でも気づかぬうちに、間違いを正しいものと思い込んでしまうのだ。民主主義なんて本当なのだろうか。そんな世の中で正義を貫くことは困難である。「民衆の敵」と呼ばれ、家族や支援者までもがつらい思いをするからである。それでも負けるわけにはいかない。正義の厳しさがよく描かれている芝居である。

 演出の大きな特徴は群衆処理の見事さである。場面が転換する時、アンサンブルが現代舞踊のような身体表現を見せる。そのイメージは場面転換が終わった後も観客の頭に残る。転換場面の印象が強いのにも関わらず、主たる役者の演技がしっかりとしているので、決して負けていない。その結果、重層的なイメージが成立している。効果的である。
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