ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

美祢ダム

2020-12-15 02:51:11 | 山口県
2020年11月23日 美祢ダム 
 
美祢ダムは山口県美祢市大嶺町東分の厚狭川水系日永川にある山口県企業局が管理する工業用水目的の重力式コンクリートダムです。
美祢は戦前・戦後を通じて日本有数の無煙炭の採炭地として栄えてきましたが1960年代後半から資源の枯渇により炭鉱の閉山が相次ぎ人口も大きく減少しました。
これに対処するため、旧炭鉱地域の産業振興を目的として設立された産炭地域振興事業団(のちの地域振興整備公団)による工業団地造成事業が着手されます。同事業に合わせて山口県企業局はこの工業団地向けの用水を確保するために厚狭川右支流日永川への工水用ダム建設を進め、1981年(昭和56年)に竣工したのが美祢ダムです。
美祢ダムは自己流域での集水能力はほとんどなく、厚狭川から揚水した水を貯留し、市内工業団地および山陽小野田市の旧山陽地区に工業用水の補給を行っており、事実上の河道外貯留方式ダムと言えます。
 
ダムは自由越流式クレストゲート2門のシンプルな構造。
右下は山口県企業局厚狭川工業用水の揚水・送水施設。
 
ダムをズームアップ。
実質河道外貯留方式のダムのため、クレストから放流されることはまずなさそう。
 
左岸ダムサイトから
堤高36メートルに対して堤頂長160.5メートルの横長ダム。
 
天端は車両通行可能。
 
天端から
減勢工と左手は山口県企業局の揚水・送水施設。
 
ダム湖は総貯水容量189万立米。
自己流域での集水能力はほとんどなく、水の大半は厚狭川からポンプアップされています。
 
右岸から
 
奥の建物は美祢工業団地の工場建屋。
この工業団地へも美祢ダムから工業用水が供給されています。
 
取水設備。
 
上流面。
 
炭鉱閉山で寂れる町の振興のために工業団地を造成。その工業用水源として建設されたのが美祢ダムです。
なおダム便覧では竣工年度を1977年としていますが、ここでは山口県企業局の1981年を採用します。
 
(追記)
美祢ダムには洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。
 
2083 美祢ダム(1604)
山口県美祢市大嶺町東分
厚狭川水系日永川
32メートル
160.5メートル
1890千㎥/1860千㎥
山口県企業局
1981年
◎治水協定が締結されたダム

内日ダム

2020-12-15 02:46:18 | 山口県
2020年11月23日 内日ダム
 
内日(うつい)ダムは山口県下関市内日上の木屋川水系山瀬川上流部にある灌漑目的のアースフィルダムです。 
1976年(昭和51年)より事業着手された山口県のかんがい排水事業の灌漑用水源として1990年(平成2年)に竣工しました。
堤高41.2メートルは全国のアースフィルダム中第15位の高さを誇り、遮水方式は傾斜コア式を採用しています。
運用開始後は下関市内日土地改良区が受託管理を行い、370ヘクタールの農地に灌漑用水の供給を行っています。
2018年(平成30年)には河川維持放流を利用して大晃機械工業(株)を発電事業者とする内日ダム小水力発電所が増設され、最大49.9キロワットの小水力発電が開始されました。
 
県道40号線が内日ダム右岸を通っておりダム下にも行けます。
正面はダム左岸の余水吐斜水路、向かって右手に内日ダム小水力発電所があります。
ここから見上げると堤高41.2メートルの高さを実感します。
 
ダム下は芝生の広場になっており、東屋もあります。
堤体には『内日ダム』の植栽。
 
天端に上がります。
右岸を県道が通っていますが、天端にはチェーンが掛かり車両は進入できません。
 
上流面はコンクリートで護岸
左岸に余水吐と斜樋、管理事務所があります。
 
ズームアップ。
 
天端から
ダム下の広場が2枚目写真となります。
 
総貯水容量は126万立米
本州の農業用アースフィルダムとしてはかなり大規模な貯水池です。
 
下流面
綺麗に刈られています。
 
余水吐と減勢工。
 
横越流式余水吐。
 
(追記)
内日ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。
 
2090 内日ダム(1603)
山口県下関市内日上
木屋川水系山瀬川
41.2メートル
229メートル
1260千㎥/1123千㎥
下関市内日土地改良区
1990年
◎治水協定が締結されたダム

内日第2貯水池(内日第2ダム)

2020-12-15 02:36:29 | 山口県
2020年11月23日 内日第2貯水池(内日第2ダム) 
 
内日(うつい)第2貯水池は山口県下関市内日上の綾羅木川右支流赤田代川にある下関市上下水道局が管理する上水道用水目的のアースフィルダムです。
1906年(明治39年)の内日第1貯水池と高尾浄水場の完成により全国で9番目となる近代水道事業として下関市水道事業が創設されました。 
その後も拡張事業は続き1929年(昭和4年)に既設の第1貯水池直上に建設されたのが内日第2貯水池です。
内日第2貯水池で貯水された水は日和山浄水場を経て市内に配水され、現在でも下関市水道の重要な水源の一つとなっています。
1998年(平成10年)には内日第2貯水池取水塔、溢水隧道入口をはじめ、第1貯水池取水塔、高尾浄水場などが国の登録有形文化財に登録されました。
また第2貯水池取水塔はAランク、溢水堤および隧道がCランクの近代土木遺産に選定されています。
 
内日第1貯水池から北に向かい車で5分もすると内日第2貯水に到着します。
ダム下で二つの水路が合流、右手が底樋からの水路、左手が余水吐からの導流路。
 
堤体
基部は石張りの擁壁、堤体は綺麗に刈りこまれています。
 
堤体左岸にある施設。
底樋及び管路出入口になります。
 
堤体の階段は立ち入り制限がないのでここを登り天端へ向かいます。
右岸から下流面。
 
天端からは第1貯水池と取水塔、堤体が遠望できます。
 
上流面はコンクリートで護岸、左岸に僅かに石積みが残ります
もとは第1貯水池同様石張護岸だったのか?それとも当初からコンクリート張りだったのか?
 
登録有形文化財の取水塔
第1貯水池が煉瓦造りだったのに対し、こちらはコンクリート造り。
管理橋の橋脚もコンクリート製。
 
アングルを変えて
第1貯水池の赤い屋根に比べて、こちらはシックな色調で上品な感じがします。
 
総貯水容量は第1貯水池にわずかに劣る100万立米。
 
右岸の横越流式余水吐。
市のHPでは溢水施設と記されています。
 
取水塔と余水吐。
導流部は隧道でここを流下した水は1枚目写真の左側水路へと流下します。
隧道入口、市のHPでは『溢水隧道入口』も登録有形文化財となっています。
 
ダム便覧では第2貯水池の竣工は1928年(昭和3年)となっていますが、ここでは下関市上下水道局HPに従い1929年(昭和4年)竣工とします。
 
2038 内日第2貯水池(1602)
山口県下関市内日上
綾羅木川水系赤田代川
23.6メートル
78.5メートル
1000千㎥/900千㎥
下関市上下水道局
1929年

内日第1貯水池(内日第1ダム)

2020-12-15 02:30:47 | 山口県
2020年11月23日 内日第1貯水池(内日第1ダム)
 
ダム便覧では内日第1ダムと掲載されていますが、ここでは下関上下水道局の表記に倣い内日第1貯水池と記載することにします。
内日(うつい)第1貯水池は山口県下関市内日上の綾羅木川水系綾羅木川上流部にある下関市上下水道局が管理する上水道用水目的のアースフィルダムです。
 
山口県で最初に市政を施行した下関市(明治35年までは赤間関市)は県都山口を凌ぎ県内最大の商工業の中心として発展、1906年(明治39年)に全国で9番目となる近代水道事業が創設されました。
内日第1貯水池は市議会で上水道布設が議決された1901年(明治34年)に建設工事着工、1906年(明治39年)に竣工し当貯水池の完成を持って下関市水道事業が開始されました。
その後市街の拡大や人口増加による水道需要の増加を受け、1929年(昭和4年)には当貯水池直上に内日第2貯水池が竣工しました。
内日第1貯水池で貯水された水は日和山及び高尾浄水場を経て市内に配水され、現在でも下関市水道の重要な水源の一つとなっています。
内日第1貯水池は近代水道黎明期の優れた施設として近代水道百選にも選定されています。
また取水塔はCランクの近代土木遺産に選ばれているほか、1998年(平成10年)には内日第1貯水池取水塔をはじめ、第2貯水池取水塔、高尾浄水場などが国の登録有形文化財に登録されました。取水から配水に至る水道施設が一括して国の文化財に登録されるのは全国初のケースでした。
 
内日第1貯水池は県道34号線沿いにあり下関市中心部から県道34号線を北に進み内日上地区に入るとすぐ右手に内日第1貯水池が現れます。
貯水池と道路を挟んだ反対側に下関市水道記念碑が建ちます。
 
堤高21.2メートル、堤頂長85.2メートルのアースフィルダム。
市の水源ダムということで堤体は綺麗に刈りこまれまるで芝生のようです。
 
天端から
右手の円形の施設は取水塔の底樋及び管路の出入り口。
 
左岸から
堤体基部は花崗岩の石張り
右手の水路は第2貯水池からの水路。
万一第1貯水池が使用できなくなった際に第2貯水池の水を取水するためのバイパス水路です。
 
上流面上部は草が覆っていますが、こちらも花崗岩で護岸されています。
対岸に余水吐があり、左手が登録有形文化財の煉瓦造取水塔。
 
余水吐をズームアップ
奥に煉瓦製のアーチ、手前にコンクリートの扶壁があります。
 
余水吐
煉瓦製のアーチとコンクリートの扶壁
間の水道管は上記第2貯水池からの水路です。
 
余水吐導流部
床には花崗岩が敷かれています。
 
取水塔と貯水池
総貯水容量は110万立米。
 
取水塔
管理橋の橋脚も煉瓦造りです。
 
天端からダムへの立ち入りは禁止されていましたが、下流からのアプローチは可能でした。
中央の円形の施設は取水塔からの底樋及び管路出入口。
 
同時に文化財登録された高尾浄水場は事前予約すれば見学できるようです。また日和山浄水場には水道資料館がありますが、いずれも平日のみ。
ちょうど3連休の訪問となりいずれも叶いませんでした。

2017 内日第1貯水池(1601)
近代水道百選 
山口県下関市内日上
綾羅木川水系綾羅木川
21.2メートル
85.2メートル
1100千㎥/1000千㎥
下関市上下水道局
1906年