演劇書き込み寺

「貧乏な地方劇団のための演劇講座」とか「高橋くんの照明覚書」など、過去に書いたものと雑記を載せてます。

福の神あります

2011年05月12日 09時41分59秒 | 脚本

 


映画のシナリオです。
5分間ぐらいの映画を実習で撮りたいという友人の要望で書きました。
瀬戸物屋にはモデルがあります。
写真は2003年に撮影したものです。
映画の撮影が実際に行われたかどうかは、しりません。
連絡が来なかったので、撮らなかったのだと思います。


瀬戸物屋の写真。張り紙には「福の神あります」と書いてあります。

「福の神あります」

1 不幸が続いた

K「よくないことはたてつづけに起きる」

K「うちを出ようとしたら、靴のひもが切れた」

K「アイスクリームが落ちた。……あっ」

K「彼氏に振られた」
A「ごめんな。好きなんだ、あいつのほうが」

K「バイトを首になった」
店長「高校生の方が時給が安くてすむんだよ。うちもたいへんなんだ」

K「おやじが勤めていた会社が倒産した」
電話の向こうで
父「というわけで、悪いが今月から仕送りはちょっと厳しいかもしれない。すぐなんとかするから」

K「ぼーぜんとして、歩いていたら自転車にはねられた」
W「(声だけ)大丈夫」
K「はい」

K「私はなにか悪いことをしたのだろうか」

2 福の神あります

すぐ目の前の瀬戸物屋のウィンドウに「福の神あります」の張り紙。
店に入っていこうとするK、店の前でこける。Wがついて店に入る。

K「福の神っておいくらですか」
店主「○○円です」
K「(財布の中を確認して)じゃあください」
振り向くとW。
W「病院とか、いかなくていい?」
店主「(Wのことはまるで見えていないかのように)はいおつり」

店を出ていくK。後ろからWがついてくる。

3.アパートへ行く道
W「俺、石神っていうんだ」
K「福の神さんですよね」
W「えっ、いや……」

4.Kのアパート

K「どうぞ」
W「いや、送ってきただけだから」
K「それじゃ意味ないでしょ。」
W「はっ?」

部屋の中で、見つめ合う二人。
K「おなか空きましたね。」
W「はあ」
K「ご飯食べましょうか」
W「はあ」
K「やっぱり私が作るのよね」
W「えっ」

食べ終わった二人。
置物の福の神と見比べて
K「福の神がある。福の神がいる。福の神がある。福の神がいる」
W「帰ります。大丈夫みたいだから」
K「神様、帰っちゃうんだ」
W「いや、だから」
K「また明日。待っているから」
W「(独白)こないって」

5 Wの帰り道

W、コンビニのレジで金を払おうとするが、財布がないのに気づく。
W「財布忘れたんでやっぱりいいです」
時計を見て
W「明日の朝早くいけばいいか」

6 (なくてもいいシーン)

Kが財布を見つけて
K「福の神も貧乏なんだ」

7 Kのアパート

翌朝6時半。ドアをノックするW。
W「朝早くごめん。たぶん、個の部屋に財布忘れちゃって、出かけちゃう前じゃないとまずいかなって、あれないと飯も食えなくて」
K「朝御飯食べます」
W「はっ、はい」

8 道を歩く二人

K「で、お父さんが勤めている会社が倒産しちゃって……どうなっちゃうんだろう」
W「はあ」
K「神様、なんとかしてくれますよね」
W「本当に神様がいれば、何とかしてくれるんじゃないですか」
K「ずいぶん他人事なんですね」
W「一応他人だから」
K「あの、神様ってあるだけでも、いるだけでもだめだと思うんですよ。人間だってがんばっているんだから神様もがんばってもらわないと」
W「それってもしかして俺」
K「はい。それで、とりあえずはアパート代なんですけど」

9 病院

W「なぜか神様は私を、病院に連れて行ったが、入り口で引き返した」
K「医者にかかる金なんてないしさ、とりあえず、バイト探して金用意してからだよな」

10 道路工事現場

旗振りをしているW。
W「(ふっとわれに帰り)俺なんでこんなことしているんだろう.」

11 1ヶ月後、Kのアパート

W「(金を渡して)これで病院に行ってください」
K「でも、その前にアパート代が……ご飯食べていきます?これで何か買ってきますから(とWの持ってきた金をつかむ)」

12 2時間後

W「ごちそうさまでした」
K「どういたしまして」
W「ところで、仮に俺が福の神だとして、もちろん違うんですけど福の神だとしたら、努力しない人にはご利益をもたらさないと思うんですよね」
K「はあ」
W「あなたも働くべきです。いや、働きなさい」
K「でも、バイト首になっちゃったんですよね」
W「観つける努力をしてみなくちゃ」

13 コンビニ

Kが出てくる.WにOKサイン.

14 道路

にこやかに買い物をする二人.これを見ている中年の男。

15 部屋の中

電話。
K「はい」
男「すみません。あの、そちらにですね、うちの貧乏神がお世話になっていませんか」
K「いえ……福の神さんだったらいらしてますけど。いえ福の神さんです、」

16 翌日アパートの部屋

男「ちょっとした事故で、記憶をなくしたらしくて、人間界で研修中の身だったんですが。まあ、連絡が取れなくなったのでこうして探していたというわけで」
K「そう言われても。福の神だと思っていたら貧乏神だったなんて」
男「……あいつも、今が大切な時ですから……それに今返して頂かないと、今後ますます貧乏になる可能性もあるわけで」
K「はあ」
男「人間と同棲なんて、まったくあいつにも困ったもんだ」
K「貧乏になるんですね」
男「もちろんです」

17 夜

K「福の神がある。貧乏神がいる.」
W「俺って、やっぱり貧乏神なのかな.働けど働けど暮し楽にならないもんな。でも、貧乏なのはおまえの分の家賃まで働いているからだぞ」
K「でも、一緒にいるとなんとなく幸せな感じだよ」
W「そうだよな」

18 2時間後

一緒の布団で寝ている二人.天井を見つめて。
K「結局、私は福の神が貧乏神でも一緒にいたほうがいいと決心をした。貧乏と幸せとは関係ないはずだもの」


19 働く二人

20 3ヶ月後。アパート

K「3ヶ月がなんとか過ぎた。貧乏神にも昇級試験があるらしい。」

Wが封筒を広げると「じゃん」内定合格。
次に宝くじを新聞で確認し
W「1等1億円。やったー」(電話をかけ)
W「親父、就職内定。おまけに宝くじ1億円ゲットだぜ。彼女は出来るしさ……えー、会ったことがある。いつだよ」

K「どうやら、昇級して本当に福の神になってくれるかもしれない」

21 瀬戸物屋の前

福の神ありますに×がしてあり朱文字で「売りきれました」

END



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