小川糸の小説である。
33歳で癌で余命一年と宣告された女性が「ライオンの家」というホスピスで亡くなるまでと、亡くなってのちの3日間を描いている。
作者の母親が癌になって、「死ぬのが怖い」と会話したことが、書くきっかけとなったと糸通信に書かれている。作者の母親は強権的でしばしば作者とぶつかってきたらしい。ただ、亡くなる直前から変化があったようだ。糸通信には次のように書かれている。
「母に余命が宣告されたことで、わたしの、母に対する立ち位置が変わった。
今まで見ていた方向から反対側に移動して母を見ると、そこには、わたしが全く気づかなかった母の姿があった。
認知症が出始めた母を、わたしは初めて、愛おしいと感じた。
そして、自分が母を本当は好きだったこと、母もわたしを、母なりの愛情を持って接してくれていたことに気づいた。
母が亡くなったことで、わたしはようやく、それまでずっと繋がっていたへその緒が切れたように感じ、そして母が新たに、わたしの胎内に宿ったような気がした。
母が生きている頃より、亡くなってからの方が、ずっと母を身近に感じる。」
強権的な母親という点ではうちの母親も似たようなものだったのかもしれない。ただ、母親は父親とぶつかるほうが多くて、こっちはなるべくかかわりになりたくなかったので、子供のころからあまり家にいないことが多かった。
昨年の7月に亡くなったのだが、身近に感じることもなく、仏壇にもあまり手を合わせない。認知症になり世話が大変で、文句ばかり言っていた妻のほうが、仏壇の世話もかいがいしくしている。
だから、この物語も頭では理解できるけれども、感情としてはどこか冷めた読み方をしているのかもしれない。人間として、どうかなとも思うがそれも頭の中でのことなのだ。
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