真佐美 ジュン

昭和40年代、手塚治虫先生との思い出「http://mcsammy.fc2web.com」の制作メモ&「日々の日誌」

千夜一夜物語 制作こぼれ話

2006年11月26日 16時21分03秒 | 虫プロ千夜一夜物語
ついでに当時パンフレットなどに載っていた千夜一夜物語のエピソードを紹介 します、
 制作コボレ話
★ スタジオはスラム街
 アップを間近にひかえて虫プロの「千夜一夜物物語」班は、最後の追い込みにかかっている。演出の山本暎一氏は散発にゆく暇もなく、ビートルズの中古品(ほんもののビートルズよりも、ちょっとお年が・・・・・・・・)になってしまった。
第2スタジオは毎夜、不夜城と化し、ヒゲののびたスタッフがウロウロ。店屋物の丼が散乱し、まさにスタジオそのものがスラム化した状態。
 時折、背広にネクタイをしめた人が入ってくると、みんなゾーッとしている。バグダッドのスラム街を描くにはモデルが多くて苦労はしないが、宮殿などはモデルなしで困っている。

★ GOGOダンス登場
 カマーキムの率いる40人の盗賊が<山賊の踊り>を踊るのだが、その振り付けがたいへん。アラビア・ダンスではなく、GOGOだんすが登場する予定だが、作曲の冨田氏もアイデアを考慮中である。

★ 大群衆シーンのすばらしさ
 原画家のひとり赤堀氏の群集シーンの熱の入れ方はスゴイ。普通漫画映画は、大群衆シーンはなるべくさけて通るものなのだそうだが、2か所の大モッブ・シーンに敢然と挑んだ、一シーンに数万人の大群衆が入っている。この群集を途中から動かすといいだした。これをトレースしたり着色する仕上課の女性は悲鳴をあげているが、できあがったバグダッド市場のシーンはいかがでしょう。

★ やなせ氏も背景屋
 完成が近づくにつれ、スタジオの追い込みもスゴイ。美術監督のやなせ・たかし氏は自宅に絵コンテを持ちかえり、背景描き、監督といえどもエラそうなことばかりいっているわけではない。これでは掃除もしかねない。

★ 手塚アトムは30倍馬力
 総指揮の手塚治虫氏は、全編の絵コンテを全部、描きなおした。なぜかというとキャラクターの絵柄が、そろっていないとスタッフが困るということと、絵コンテの段階でシッカリしたものをということからだ。それは映画の長さにすると4時間。これを何回かの演出会議で2時間40分に縮められ、さらに2時間に短縮されたわけである。
 またアニメーターとしての氏の手腕はまさに30人分くらいだ。たくさんのアニメーターがいるディズニーのスタジオでも、これほど描くスピードの早い動画家はいないそうである。手塚アトムと異名がついた。

★ 制作日数は1年5ヶ月
 この映画の製作日数は、企画開始が昨年の2月15日であるから、約1年と5ヶ月。動員した延べ人員は60,000人。撮影したフィルムのフィート数は約50,000フィート(1フィートは約30,5cm)描かれたセルの枚数は70,000枚である。
コメント
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