東芝の職場を明るくする会代表 石川要二郎さんから東芝の労務政策と同質の明治乳業事件
私は、東芝の職場を明るくする会を代表して、中央労働委員会が明治乳業事件について東京都労委命令の誤りを正して、長期にわたる不当労働行為を断罪し、そして、この長期争議の解決に大きな力を発揮してくれるよう強く要請するものです。
私がなぜここで連帯挨拶をするかと申しますと、この中労委の場で東芝の差別争議が8年半ほど前に和解の調印を行ったのです。私が実際にハンコを押した者として、この中労委がやっぱり大企業の職場どこでもあった事件です。それを解決するために大きな役割を果たしていただきたい。
私たちも解決しましたし、この明乳事件かなり長くなりましたけれども、必ずここで解決する、解決してほしいと言うことでやって参りました。
私どもは、神奈川県内4事業所の10名の労働者が、1995年8月29日に神奈川県労働委員会に第一次の「不当労働行為救済申立」をおこない、2001年4月26日に神奈川県労働委員会から、2004年11月4日に中央労働委員会から全面勝利命令を勝ち取りました。さらに2004年に4事業所の9名の労働者が第二次申立をおこなって、申立人と申立外の労働者の差別を一括して是正することを求めるたたかいを発展させました。
その結果、2008年4月24日に中央労働委員会において、申立人と84名の申立外労働者の差別是正要求を一括して全面的に解決することができました。和解協定書には、株式会社東芝の執行役社長の代理人弁護士、申立人らの代理人弁護士と「東芝の職場を明るくする会」の代表である私・石川要二郎が、立会人である中央労働委員会審査委員、参与委員とともに和解協定書に調印致しました。東芝の職場を明るくする会は和解協定調印の当事者として、現在も職場労働者の退職勧奨や人権を守るために会社と話し合って問題の解決にあたっています。
私は、明治乳業争議の早期解決を願って、二つのことについて、要請したいと思います。
第一は、中央労働委員会が明治乳業の不当労働行為意思を厳しく判断していただきたいということです。明治乳業における申立人らの活動と差別実態は、多くの点で、東芝で活動してきた私たちと共通しています。昭和30年代は、低賃金と人減らし合理化がすすむなかで労働組合活動が職場から高まり、私たちは労働組合運動に参加するようになりました。当時は、臨時工制度という非正規・有期雇用労働者が増加していた時代でした。1961年には東芝臨時工解雇撤回争議が起こり、10名の臨時工が横浜地裁、東京高裁で解雇無効の勝利判決を勝ち取りました。このような状況の中で、昭和40年前後になると会社は各工場に秘密労務組織をつくり、労働組合役員選挙に介入して、会社派の労働者で役員を占めるようになりました。1974年に東芝臨時工争議が最高裁判所で勝利判決を勝ち取りました。東芝柳町工場事件の最高裁判例となっています。解雇された労働者が職場復帰すると、東芝は各工場で結成した秘密労務組織を、全国の39の工場や研究所、本社、支社まで網羅した全社的な秘密労務組織として「東芝扇会」を結成し、自主的自発的に労働組合活動を続ける者に対する差別と弾圧の労務政策をとったのです。
同じ時期に、明治乳業でも、各工場に秘密の労務組織が次々と結成されています。ところが、都労委命令では、認定した事実として真っ先に、このような会社が結成した秘密労務組織を、なんの根拠もなく自主的組織と断定しています。
その一方で、申立人らが提出した秘密労務組織の結成や活動を裏付ける笠原ファイル、高島ノート、秘密会議録音テープ、会社側の会議メモなどは、「入手経路が必ずしも明らかでない」として黙殺するという不当な扱いをしています。私は、中労委が、このような都労委命令の誤りを、きっぱりとただしていただくことを要請します。
第二は、申立人らの賃金格差の立証を、正しく受けとめていただきたいということです。東芝争議では、会社は「能力主義、成果主義賃金制度に改定しているので、申立人らが主張する同期同学歴入社者との比較は意味をなさない。過去の賃金データは存在しない。」と主張しました。しかし、会社は10年ごと、20年ごとの賃金・資格制度、業績評価制度などを改定し、そのたびに「能力主義・成果主義に改定した」と説明してきましたが、賃金実態を統計的にみれば、厳然として年功的な運用が継続してきたことを確認することができます。したがって神奈川県労働委員会でも、中央労働委員会でも、会社主張は却下され、「同期同学歴の中位者への賃金の是正と役職への登用」を含む命令が交付されました。なかでも中央労働委員会が、最後まで「同期同学歴者の賃金実態を示すデータを提出すること」を強く求めたところ、会社は「工場別に部長、課長職を含む同期同学歴者の賃金実態資料」を提出するに至りました。
明治乳業に対しても、中央労働委員会が「賃金データが存在しない」という会社の言い逃れを許さない対応をお願いします。
私は申立人らの差別是正要求が一日も早く実現し、人権と人間の尊厳を取り戻すことを強く願って、連帯の挨拶とし最後まで頑張りましょう。