遊びと仕事 対比の妙
令和3年5月16日(日)
種芋や
花のさかりに
売りありく
この花の盛りに、商人が泥のついた
種芋を売り歩いている、の意。
元禄三年作。
季語は「花のさかり」。
前書き「午の年 伊賀の山中/春興」
◎ 伊賀の山中で、見かけた光景を
詠んでいる。
春の盛りに、人々は桜狩りや花見に
遊びほうけているのに、
種芋(里芋の種芋)を売り歩いている
商売熱心な百姓たちもいる。
人様々である。
この句、どこか、遊びに浮かれて
いる大勢の人々と、
商売をしている人々を描き分けていて、
そのちぐはぐした様子が面白い。
俳句は、違ったものを取り合わせる
ことによって、滑稽味が出てくる。
芭蕉というと、侘び寂びの哲人だと
思い込んでいる人が多いが、
正反対の遊びにも熱心な人で
あったことを、もっと知るべきである。