貢蕉の瞑想

青梅庵に住む貢蕉の日々のつぶやきです。

のどかな春を破るおかしさ

2021-05-14 15:51:48 | 日記

のどかな春を破るおかしさ

令和3年5月14日(金)

うぐひすの 

  笠おとしたる 

      椿哉

   鶯が梅ならぬ椿の花笠を

落としたのか。

花がぽとりと落ちたことだ。

 元禄三年作。

◎ 鶯と言えば、普通は梅と

相性がいいはずだ。

 しかし、ここでは庭先で

さえずっていた鶯が梅の花ではなく、

椿の花を落としたというのだ。

 昔から鶯は梅の花で造るというのが、

決まり切った春景色であった。

 それを椿にしたおかしさが

俳諧的な滑稽さである。

 実際にそういう出来事が

あったのかも知れない。

 それをすぐに俳句の面白みに

変えたところが、芭蕉らしい。

 椿は、ポテッと落ちる。

 梅ならば鶯と優雅な釣り合いが

とれるであろうが、

椿では風流から遠い。

 落ちた花の音に吃驚して、

普段の鳴き方と違って、

奇妙なさえずりになってしまった

鶯の慌てぶりが春ののどかさを

破って、おかしい。