小貝と萩の花
令和3年5月6日(木)
月の後は、花。
浪の間や
小貝にまじる
萩の塵
元禄二年作。
敦賀の色の浜での作品である。
秋の花であるひっそりとした
地味な萩の花を描かず、
芭蕉が眼に着けたのは、
浜に打ち上げられた小さな貝と
萩の花が海に落ち、浪にもまれ、
屑となった姿である。
浜辺に美しく咲き誇る秋の花の姿
ではなく、浪に吹き飛ばされて
原型を留めていない花屑を詠んだ
のである。
それは、花としてはあわれな
萎れた姿だが、来る冬の寒さを
予感させる晩秋の風情をはっきりと
示している。
流石である。
色の浜は種の浜である。