貢蕉の瞑想

青梅庵に住む貢蕉の日々のつぶやきです。

小貝と萩の花

2021-05-06 15:45:26 | 日記

小貝と萩の花

令和3年5月6日(木)

 月の後は、花。

浪の間や 

  小貝にまじる 

     萩の塵

   元禄二年作。

 敦賀の色の浜での作品である。

 秋の花であるひっそりとした

地味な萩の花を描かず、

芭蕉が眼に着けたのは、

浜に打ち上げられた小さな貝と

萩の花が海に落ち、浪にもまれ、

屑となった姿である。

 浜辺に美しく咲き誇る秋の花の姿

ではなく、浪に吹き飛ばされて

原型を留めていない花屑を詠んだ

のである。

 それは、花としてはあわれな

萎れた姿だが、来る冬の寒さを

予感させる晩秋の風情をはっきりと

示している。

 流石である。

 色の浜は種の浜である。