☆とても良かった。
このシリーズは、長編の原作を端折らないで画面に詰め込んだので、余韻と言うものが全く無い作品となっていたが、3作目辺りから焦点が絞られ、私的には4作目で最初の面白さのピークを迎えた。
そして、クライマックスに向けて、5作目でハリーは後見人を失い、6作目でリーダーを失い、この7作目の『PART1』では、いよいよ、ハリーが仲間と3人だけで、復活した<闇の帝王>と戦いを始める。
冒頭では、闇の帝王・ヴォルデモートと、その一味の幹部達がズラリと勢揃いし、ハリー討伐の会議をしている。
一方、ハリーたちの仲間は、悪の体制に対し、あまりにも心もとない。
僅かな希望(マッドアイ、大臣)も、ひたひたと殺される・・・。
その戦いは防戦一方。
いろんなエピソードを経ているが、見終えた今、記憶に残るのは、ハリー、ハーマイオニー、ロンの、荒涼とした大地を背景にした逃亡の姿だけである。
頼るべき者はなく、ひたすらに、脅威の悪のパワーから逃げ続ける。
逃亡はうまくいっていると思いきや、空に、追跡者である<死喰い人>の飛んでいる、黒い飛行機雲が伸びて突き進んでいる図は、恐怖である。
今のハリーたちには勝てないのだ。
物語は、全般を緊張感が支配している。
ハリーたちは息を潜めるしかない。
シリーズのいままでになかった静謐の展開である。
派手さはない。
しかし、それがいい。
雰囲気で見せる、良質のロードムービーのような趣だ。
これまでのシリーズの蓄積があるから、そこに叙情性が芽生える。
緊張の逃避行の中で、ロンが、恋人であるハーマイオニーとハリーの関係に疑惑を持ち、離脱する。
残されたハリーとハーマイオニーの虚無感のイメージがいい。
そんな絶望の中で、二人で踊ってみるシーンがいい。
私は原作を読んでいる、でも、先が見えない。
どうにも、ハリーたちは追い詰められている。
この作品は、『スターウォーズ:帝国の逆襲』の如き、敗北のエピソードと言えよう。
(2010/11/20)