☆これは、激烈な傑作であった。
残業を午後八時までした後、家と逆方向の多摩センターまでレイトショーを観に行き、心に、淡々と、だが大きな感動を、この作品は与えてくれた。
◇
見知らぬ者の葬式に参列し、雰囲気をそれとなく観察することを趣味としている、「死」に異常な興味を持つ少年イーノックと、
重度のガンに冒され、つまり、「死」を内包している少女アナベルの「失恋」の物語。
イーノックの過去(両親を失った交通事故の際の臨死体験時)の経験から知り合うようになった、元神風特攻隊員の幽霊ヒロシを絡ませ、主人公二人の「家族」を眺めつつ、二人の恋愛が丁寧に描かれる。
イーノックの不謹慎な趣味と、アナベルの、その悪趣味へのノリが、
私に、「ああ、この作品は、『禁じられた遊び』思春期ヴァージョンだ」と思わせるのだった。
最終的に、アナベルは死ぬ。
それは、イーノックが好んでいた、「アスファルトの地面に横たわり、あたかも事故現場の被害者のシルエットの如く、チョークで、自分の身体を縁取る」行為を、二人でしてみたとき、
イーノックは、その線からいつしかはみ出してしまうのに、アナベルは、ずーっとチョーク線の枠に収まっていることから分かるし、
アナベルが、枠からはみ出るのは、イーノックにキスしようとした時にだけだ。
恋愛こそが、唯一、アナベルを「死」から…、「死の恐怖」から遠ざけた。
アナベル役のミア・ワシコウスカは、聡明なイメージで、全編、その笑顔が最高だった。
未来のない二人だが、キスだけが、おそらく、やわらかくて、お互いが生きていることの証となるのだろう。
ヒロシ役の加瀬亮は、若き日本軍人を好意的に描いてくれているガス・ヴァン・サント監督のもと、奥ゆかしくも青い青年を見事に演じていた。
クライマックスで、それまでイーノックにしか見ることの出来なかったヒロシが、今際のアナベルにも見ることが出来た「奇跡」に、私は感無量の思いが起こった。
ヒロシは、アナベルの死後の旅に同行してくれるのだと言う・・・。
イーノックの奇行の原因には、両親の交通事故死があり、ともに事故に遭遇した自分が昏睡状態にあり、両親との最後の別れが出来なかったこともある。
だが、アナベルの死で、初めて、自分自身の問題で、愛する者との形式を経た別れをする。
別れの言葉を、皆の前で語ろうとするイーノック(ヘンリー・ホッパー)。
だが、頭の中にアナベルとの思い出が溢れてきて、言葉が出ない。
ただ、幸せだったので、思わず笑顔がこぼれてしまうのだった。
照れくさそうにはにかんだ笑顔・・・。
失恋に至ったけど、その思い出は「永遠」なのだな。
(2012/02/08)
残業を午後八時までした後、家と逆方向の多摩センターまでレイトショーを観に行き、心に、淡々と、だが大きな感動を、この作品は与えてくれた。
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見知らぬ者の葬式に参列し、雰囲気をそれとなく観察することを趣味としている、「死」に異常な興味を持つ少年イーノックと、
重度のガンに冒され、つまり、「死」を内包している少女アナベルの「失恋」の物語。
イーノックの過去(両親を失った交通事故の際の臨死体験時)の経験から知り合うようになった、元神風特攻隊員の幽霊ヒロシを絡ませ、主人公二人の「家族」を眺めつつ、二人の恋愛が丁寧に描かれる。
イーノックの不謹慎な趣味と、アナベルの、その悪趣味へのノリが、
私に、「ああ、この作品は、『禁じられた遊び』思春期ヴァージョンだ」と思わせるのだった。
最終的に、アナベルは死ぬ。
それは、イーノックが好んでいた、「アスファルトの地面に横たわり、あたかも事故現場の被害者のシルエットの如く、チョークで、自分の身体を縁取る」行為を、二人でしてみたとき、
イーノックは、その線からいつしかはみ出してしまうのに、アナベルは、ずーっとチョーク線の枠に収まっていることから分かるし、
アナベルが、枠からはみ出るのは、イーノックにキスしようとした時にだけだ。
恋愛こそが、唯一、アナベルを「死」から…、「死の恐怖」から遠ざけた。
アナベル役のミア・ワシコウスカは、聡明なイメージで、全編、その笑顔が最高だった。
未来のない二人だが、キスだけが、おそらく、やわらかくて、お互いが生きていることの証となるのだろう。
ヒロシ役の加瀬亮は、若き日本軍人を好意的に描いてくれているガス・ヴァン・サント監督のもと、奥ゆかしくも青い青年を見事に演じていた。
クライマックスで、それまでイーノックにしか見ることの出来なかったヒロシが、今際のアナベルにも見ることが出来た「奇跡」に、私は感無量の思いが起こった。
ヒロシは、アナベルの死後の旅に同行してくれるのだと言う・・・。
イーノックの奇行の原因には、両親の交通事故死があり、ともに事故に遭遇した自分が昏睡状態にあり、両親との最後の別れが出来なかったこともある。
だが、アナベルの死で、初めて、自分自身の問題で、愛する者との形式を経た別れをする。
別れの言葉を、皆の前で語ろうとするイーノック(ヘンリー・ホッパー)。
だが、頭の中にアナベルとの思い出が溢れてきて、言葉が出ない。
ただ、幸せだったので、思わず笑顔がこぼれてしまうのだった。
照れくさそうにはにかんだ笑顔・・・。
失恋に至ったけど、その思い出は「永遠」なのだな。
(2012/02/08)