『甘噛み^^ 天才バカ板!』 byミッドナイト・蘭

ジュリアナから墓場まで・・・。森羅万象を語るブログです。
ここでは、気軽に読めるエントリーを記していきます^^

[映画『永遠の僕たち』を観た(スマン、短信だ)]

2012-02-08 23:59:27 | 物語の感想
☆これは、激烈な傑作であった。

 残業を午後八時までした後、家と逆方向の多摩センターまでレイトショーを観に行き、心に、淡々と、だが大きな感動を、この作品は与えてくれた。

   ◇

 見知らぬ者の葬式に参列し、雰囲気をそれとなく観察することを趣味としている、「死」に異常な興味を持つ少年イーノックと、

重度のガンに冒され、つまり、「死」を内包している少女アナベルの「失恋」の物語。

 イーノックの過去(両親を失った交通事故の際の臨死体験時)の経験から知り合うようになった、元神風特攻隊員の幽霊ヒロシを絡ませ、主人公二人の「家族」を眺めつつ、二人の恋愛が丁寧に描かれる。

 イーノックの不謹慎な趣味と、アナベルの、その悪趣味へのノリが、

 私に、「ああ、この作品は、『禁じられた遊び』思春期ヴァージョンだ」と思わせるのだった。

 最終的に、アナベルは死ぬ。

 それは、イーノックが好んでいた、「アスファルトの地面に横たわり、あたかも事故現場の被害者のシルエットの如く、チョークで、自分の身体を縁取る」行為を、二人でしてみたとき、

イーノックは、その線からいつしかはみ出してしまうのに、アナベルは、ずーっとチョーク線の枠に収まっていることから分かるし、

アナベルが、枠からはみ出るのは、イーノックにキスしようとした時にだけだ。

 恋愛こそが、唯一、アナベルを「死」から…、「死の恐怖」から遠ざけた。

 アナベル役のミア・ワシコウスカは、聡明なイメージで、全編、その笑顔が最高だった。

 未来のない二人だが、キスだけが、おそらく、やわらかくて、お互いが生きていることの証となるのだろう。

 ヒロシ役の加瀬亮は、若き日本軍人を好意的に描いてくれているガス・ヴァン・サント監督のもと、奥ゆかしくも青い青年を見事に演じていた。

 クライマックスで、それまでイーノックにしか見ることの出来なかったヒロシが、今際のアナベルにも見ることが出来た「奇跡」に、私は感無量の思いが起こった。

 ヒロシは、アナベルの死後の旅に同行してくれるのだと言う・・・。

 イーノックの奇行の原因には、両親の交通事故死があり、ともに事故に遭遇した自分が昏睡状態にあり、両親との最後の別れが出来なかったこともある。

 だが、アナベルの死で、初めて、自分自身の問題で、愛する者との形式を経た別れをする。

 別れの言葉を、皆の前で語ろうとするイーノック(ヘンリー・ホッパー)。

 だが、頭の中にアナベルとの思い出が溢れてきて、言葉が出ない。

 ただ、幸せだったので、思わず笑顔がこぼれてしまうのだった。

 照れくさそうにはにかんだ笑顔・・・。

 失恋に至ったけど、その思い出は「永遠」なのだな。

                                                     (2012/02/08)