雨の夜と下弦の月

毎日を静かに、穏やかに生きていきたいと思う日々。
そのわりにはジタバタと暮らすワタクシの毎日を綴っております。

ルパンの消息。

2009-05-03 10:52:07 | books&magazine
2,3日に分けて読むつもりでしたが、結局昨夜読み終えてしまいました。読んでからネットをちらちら見たら、WOWOWでドラマ化もされた横山秀夫の幻(?)の処女作だったらしいですね。発表から15年経って、単行本にするときに補筆し、文庫本にするに当たって再び補筆したらしい。横山秀夫のファンの方々、ミステリーファンの方々から見るとかなり粗削りだという評価があるようですが、ワタクシは単純に面白く読みました。奇想天外といえば奇想天外な展開もあるし、ご都合主義といえばご都合主義みたいなところもあるけれど、それでもやっぱり最後まで面白く読み進められるのだから、横山秀夫という人はすごいなぁと思いました。その後に書くことになる警察小説の片鱗も見えますしね。WOWOWで映像化したときは、主人公が溝呂木刑事になってたみたいですが、上川隆也ではちょっと若すぎるんじゃないのかなぁとは思いましたが

個人的には、愛した人に殉じるために生きることってできるのか?というのが主題になっていた気がします。読後感としては、ミステリーとしての面白さというよりは、そっちの方に興味がありました。ワタクシも理由は全く異なるけれど、できれば自分の気配を消して生きていきたいと思っている今日この頃。だけど、実際にそれを実行するには現世のしがらみが多すぎるわけです。どんな理由であるにせよ、自分の気配を消すというのはなかなか難しい。昔愛した人を思い続けて15年間生きるというのはかなり大変なことだろうと。そのためにいろいろな犠牲を払うことができる人間の愛情って、やっぱりまんざら捨てたものではないのかなぁとも思ったし。

15年というのは殺人事件の時効が成立するのに必要な時間なのですが、それをたった1日でひっくり返して犯人を逮捕する。もちろんこれはフィクションだけど、日本の警察の機動力みたいなものはある程度信じていいのかなぁと思いました。それから、その機動力を活かしたローラー作戦で情報を炙り出すにしろ、所詮、事件は犯人と担当刑事の1対1の勝負なのだという溝呂木刑事の信念にもはっとしました。警察組織もかなりサラリーマン化しているとものの本で読んだことがありますが、溝呂木みたいな刑事さんはまだ警察組織の中にいて、今、この時にも犯人と1対1の勝負をしているのかもしれません。警察小説として読むにはちょっと物足りない人もいるかもしれませんが、ワタクシ的には心に残る小説になりました。