我が家の少し西の方に工場がある。 以前は大きな工場が何軒かあったのだが、
バブルを過ぎ鉄鋼業界の景気が思わしくなくなった頃から、ひとつ減りふたつ減り
最後のひとつが今の工場である。
その西には広い敷地の川が流れる公園がある20階建てのマンションが去年建った。
我が家の辺りに一戸建てが立ち並ぶとき、いずれこの辺は整備され住宅街になりますよと
言われたがあっと言う間に一戸建てが立ち並んだ。
この辺の景色には少しそぐわない工場だった。
その工場の塀のそばに、夾竹桃の木があって6月ころから咲いている花が、夏を過ぎ、
はや11月がこようと言うのに、いまだにけな気にも紅い花をたくさんつけている。
毎日自転車で会社へ通っていたときその花に、朝は笑顔をもらい夕方にはお疲れさん・・
と大いに癒されたものだった。
花が少ない暑い夏にもその花は紅く、一生懸命に咲いて人の目を楽しませ元気をあげている
に違いない。
私もこの花を見ると元気づけられたし、そんな意味でもこの花を見るのが好きだった。
9月に『白い桔梗の不思議』に原稿をお寄せいただいた菅原孝雄さんのブログに夾竹桃のことが
書かれた時があって、夾竹桃に寄せる私の思いをコメントさせていただいたことがあったのを
懐かしく思い出した。
先だってこの工場が閉鎖となり、隣のマンションよりも高いマンションが建設されることになった。
はや工場からは時おり、掛け声と共に資材が運び出される音が聞こえて来る。
その後にはすぐマンションの建設が始まるそうだ。
この工場のそばを通るとき、錆びたようなブリキ板の塀のそばに今でも紅く咲いている
夾竹桃の花を見るとき、塀や金網から見える工場のそばに咲く小菊や、電線を伝う
名も知らぬ野草までも目に入るとき、
工場で働く人たちの行き先はどうなんだろう。 一日を大きな工場の中で仕事をしていた
男の方たちだけど、時には季節になると、この紅い元気な花に心を癒された日もあったので
はないだろうか。
私は気になってしまう。 この夾竹桃の木はどうなるのだろうかと・・・。
半年近くを咲ききるけな気なこの花が、どうぞや新しく出来る川の流れるマンションのどこかで、
新しい生活を始める人たちの目を楽しませてくれますように・・と・・。
そして私の思い出の中で色あせて行かないように・・、
いまだ紅いその花をみながら胸がいっぱいになりそうな私。
夾竹桃の花もそう思っているかも知れない。
季節を終えているはずの夾竹桃のその紅い色が、何か訴えているようなそんな気さえ
している。
いつもよりは寂しげに見えるのは、気のせいであろうか・・。
この記事に関して、おいで頂いているfujiminoさんが大変貴重なコメントを下さいました。
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どんな環境でも、けなげに咲き続ける夾竹桃。
そんなけなげでありながら、底知れぬ強靱な生命力を持って、人をも殺す毒をも持った夾竹桃。
色々な所で見受けられますね。 荒れ果てた工場の跡地などでも見かけます。
バブル崩壊と言う毒に犯され、やむなく閉鎖し消えていく工場達。
そこに凛として咲き誇る夾竹桃。 面白い対照です。
一般の小説には、この花の強靱さ、けなげさが表現されていますが、推理小説の世界では、
この毒を殺人に使う事が多いですね。
この木の樹液は強い毒ですから、気を付けないと。
子供が折って、樹液が手に付き、口に入れたりしたら死に至ることもありますから・・。
★毒性があると菅原さんのブログで教えていただいていたにも関わらず、閉鎖という現実に、
感傷的になっていたかも分かりません。 それにどんなに暑いときにも咲き続けていた
夾竹桃のけなげさに自分自身が癒されていたものですから、ちょっとうかつでした。
大切な子供達に、もし枝が折れて害になることがあったりしたら、それこそ大変なことにも
なりかねないですね。
よって新しいマンションの公園のどこかに・・と言うのは訂正させていただきますね。
未来の日本を担って行く大切な子供たちの為にも・・。
fujiminoさん、ありがとうございました。 ブログ・・有難いですね。