夫がまだ朝食をとっている時間であった。 家の前の方がえらくにぎやかである。
もちろんいつもの放送局・・いえ失礼、例のおばさまの毎度の朝なのだが、今日は少し違う。
ブラインド越しに見てみると、なるほど・・少し事情が分かった。
テーブルに座っている目線に、斜め前のお宅の二階の冷房の室外機がちょうどある。
少し前からそこら辺に鳩が良く止まっているなぁと、娘と話していたところである。
夫を見送って、「おはようございます」と話の輪の中に入った。 総勢五人。
鳩が巣を作っていたようで、フン公害とやら困ったと言う事で、さっき巣を撤去したと言う。
巣作りの素材らしき細かい枝や枯れ草を掃き集めていた。
たまごが産んであったそうである。
昔から白い鳩は平和の象徴と言われていたけれど、今やこの類の鳩は困りもののようだ。
一件落着と辺りが静かになった頃、三階の部屋を掃除していると主らしき鳩が帰ってきていた。
巣がない・・。 あたりをきょろきょろ。
(おかいしわ・・ 確かここに間違いないんだけど・・)と言っているように見えた。
レースのカーテン越しに見ていた。 鳩の習性なのだが首を右や左に傾げるその姿は侘びしく見えた。
(どうしたのかしら・・ 巣は・・ わたしの子供は・・)そんな風に見えた。
夜、暗闇の中で何度も聞いた、朝までずっと。 「クウゥ・・ クウゥ・・」 母鳩の悲しい声だった。
子供をさがす、悲しい声だった。
(可愛そうにね・・赤ちゃん。 今度は迷惑にならないようなところへ巣・・ 作ろうね)
最近の悲しい報道が甦り、胸がいっぱいになった。
眠れぬ蒸し暑い夜だった。
* 紫陽花今日の一枚 *