釣りに行く夫と朝五時に起きたとき、お隣の台所の電気がはやついていた。
お隣に乗用車が止まり、間もなく出て行った。 ん? お隣のご主人が入院されたのかしら・・。
お昼前、班長さんからご主人が亡くなられたことを聞かされた。 驚いて血の気が引く思いだった。
車椅子だったので外でお会いすることなく、家で寝ておられると思っていたのに。
「家族葬だそうです」と、今晩の通夜明日の告別式次第が書かれた用紙をいただいた。
奥さまと娘さんと二人だ、お隣にすぐにでも行きたかった。 急なことで、お力落としだろうと。
こんな時、一番大事な時、行っていいのか、行かない方がいいのか相手がどう思うだろうか迷う。
夕方洗濯物を取り入れる為に屋上へ行く。
高く広がった空にはうろこ雲・・風に切り離されるように流れて行く、どんどんとそれは。
悲しみが増すように。
* 隣人の主 死に急ぎたるや
悲しみ暮れる中に やさしき顔の浮かぶ 雲の間に間に *
毎年欠かさずそっと自転車の籠に置いて下さっている、奥さまのさりげなき思いやりキンモクセイの一枝。
私が嫁ぐ日、式場へと歩く道すがら匂っていたその花は思い出、と喜んで話しでいたのに。
キンモクセイが、奥さまには悲しいご主人を見送る思い出花となった。
5日前は、まだ咲ききっていなかったのに。
お隣の玄関のキンモクセイが今、満開の花をつけている。