彼の書いた小説が飲んでる席で話題になることがある。
特に、オトコ3人ぐらいでオンナが2人ぐらいだ。
少し、盛り上げ話が尽きはじめたころ。
オンナは確実に「好きです。」といい・・・・オトコは「シメタ!」と思って語り始めるんだ。
彼の小説すべての主人公は日々を坦々と惰性で生きているように見せかけ女を誘うたぐいのろくでもない奴。
なんだけれど、一般的には理解しがたい状況を誰かに持ち込まれて、それは人間だったり、動物だったりするけれど
否応なしに自分の意思とは裏腹に抜き差しならない状況に追い込まれてしまう話だ。
そう、優柔不断を絵にかいたようなオトコの話が多い。
とにかく、優しいし、屈託がないし、嫌味じゃないし、思いやりがあるし、静かだし、本とレコード(CD)と缶ビールと料理をしながら暮らしている。
まあ、そのあたりから非日常的なオトコの話のように思える。
全く、寸分の狂いもなく「1Q84」と言う小説は始まり文庫本6冊にしてしまうほどの量にして終わる。
同時進行で二つの世界が進んでいて、1Q84年と1984年。月がひとつの世界とふたつの世界。
結局は恋愛小説で、運命の赤い糸話。結ばれる運命のひとは、この世には必ず存在していて、
現実に結ばれるにはとても怖い思と反吐が出そうなイやな思いをしなくてはならんのだ。
あたりまえのこと・・・を言ってるようにしか思えないんだ。
読み終わって・・・結局、何も残っていないし。こころに響くものが何もないんだ。
でも、読んでる最中は楽しく読めちゃうから面白い。口語体のリズムがそうさせるし、すうすうと頭に入ってくるし、頭の中で映像化しやすい。
劇画と同じ感覚になるんだ。
ただ世界を含めての小説家として人気があるのは、表現者としての彼の根っこにあるのが"哀しみ"だからだろう。
感傷的で、ロマンチック。まあ、似たようなものではあるけれど、
毎日をそんな気分で過ごすことができるのはかなり凄いことなんだ・・・
みんな、そんな気分になることはあるし、ほんわかした気分で過ごすことがいかに気持ちいいのかも体感的に知ってる。
でも、現実はあまりにも生々しくて、それを受け入れるだけで疲れ果ててしまう。
受け入れてしまわないと生きていけないからだ。
「どうせ、こんなもんですから・・・・そんな大した人間じゃないんだしね。自分を過小評価しとけば傷付かなくて済みますから・・・」
そんな風に思えないと、手首を切ったり、薬をのんだり、最も楽な死に方を研究したりすることになる。
年間、3万人もの自殺者がいる国は世界中探したってそうはない。
そんなコトを考えると、そう、村上春樹も悪い小説家じゃないな~って思えてくる。
世の中の為にはなっている。
彼女の感想通り、風を吹かせているんだ。