そう、あの「ミレニアム」の三作目「眠れる女と狂卓の騎士・上巻」。
途中でホッタラカシの時間があったけれど、最後の20ページぐらいで狂ったように読んでしまった。
まだ、下巻は買ってもいない。
しかし、この物語を読み終えると、つまんなくなっちゃう。
なんて事を思ってしまえるくらいに面白い。
何が面白いかって言うと、サランデルという女が面白いのだ。
信じられない境遇に放りこまれて、25年間も良く生き延びてこれた・・・
小説だから、当然なんた゜。でも
脇役がしっかりと描かれているからリアルなんだろうね。
物語のステージはスウェーデン。まったく馴染みのない国だということもあって、
街や森や湖の風景など描写がすばらしかったり、想像力をかき立てられるんだ。
それに、スウェーデンの国のあり方なども、書き込まれてしまうと信じるしかなくなるしね。
幼児虐待、女性蔑視、性犯罪。
よく調べてある。
ディティールにこだわれば、リアリティが増すのは当然なのだ。
映画や絵画もそうのように・・・同じなんだ。
ただ、いかに表現するかが問題だけれどね。
でも、僕がこの物語が好きなのは、そんな事じゃなくて、女を描ききってるところなんだ。
登場人物で、とても魅力的に書かれている「エリカ・ベルジェ」。
野心に燃えるマスコミの寵児。しかし、僕には醜悪にしか映らない。
マスコミ人のポリシーを大手マスコミの経営陣に語るところが随所にある。
しかし、どれも薄っぺらな正義論なんだ。
事実が全てで、その積み重ねに真実があると信じきっている。
人間の行動の事実は、見聞きした以上のものがあるわけで、誰も結論付けなどできやしない。
社会悪を暴いて糾弾し、世の中を正す。
薄っぺらな記者。そう希望に胸を膨らませて入社してくる新聞社の新入社員とレベルは同じ。
本当に真実を知ってしまったら・・・・記事になんかできゃしないんだ。
正論は正論でしかなくて、世界は変わったりしない。
そしてもう一人、「ミカエル・プロムクヴィスト」。
男として救いようがない男。
オンナの愛にきっちり応えられない男は最低なんだ。
サランデルは別にスウェーデンと言う国に自分の正当性を認めてもらいたがったりしてるわけではない。
ただ、自分で選んだわけでもない出生を自ら引き受け、文句も言わず
厄災が訪れると自らの力で乗り越え生き延びるのだ。
そこに、誇りを感じて生きている。
別に他人にどう思われようとほっておいてくれれば楽しく生きていけるのだ。
ただ、ひとつ「ミカエル」と出会ったばかりに、「愛されたい」と願っただけなんだろう。
最悪の境遇のなかで否定してきたものは「愛」だったんだろう。
でも一番欲しいと願っていたものは、誰かに愛されることだったし、愛することだったんだ・・・と思う。
この3部作の結末はまだ読んではいない。
下巻を買うのはもう少し後になる。
だって、上巻を読み終えた余韻を、もう少し愉しみたいんだ。