みゆみゆの徒然日記

日本の伝統芸能から映画や本などの感想、
心に留まった風景など
私の好きなことを綴っているブログです♪

多田富雄 『能の見える風景』

2007年08月22日 | 本・マンガ
 免疫学者であり、現在は『原爆忌』『一石仙人』など新作能を手がける多田富雄さんの著書を読みました。以前に、感想記事を書きましたが、脳梗塞に倒れて以来半身麻痺に苦しみながらも、懸命にリハビリに取り組み、また新作能を手がける多田さんのドキュメントが以NHKで放送されました。その番組のことを思い出しながらこの本を読みました。

 ドキュメントの中で、倒れられてからは、大量の本を処分しても、趣味である能の本はほとんど残していらしたのが印象的でした。それだけ能のことを愛しているというのが伝わってきました。実際にたくさんの舞台を見て、自分も能を習い、なおかつ新作能まで書いている方ならではの、能楽界へ意見もまた刺激的(笑)

 能は能楽堂からもっと広い空間(ホールなど)に飛び出すべきという多田さんの意見ですが、私はあの狭い空間だからこそよいものと思っています。私もホールでのお能は何度も見ていますが、どうしてもあのような空間での能の上演は音などが散漫としてしまうようで少し苦手です。でも、演出などによっては面白く感じるものもあるのかなと、少し思いました。ちなみに多田さんの新作能はまだ見たことありません・・・。だから、機会があったら多田さんの新作能を見てみたいです。

 また、交流のあった白州正子さんのお話も興味深く読みました。たしか『男ともだちとの会話』という白州さんの本で、多田さんとの対談があったように記憶しています。またそちらも読み直してみようかな・・・。

 一番心に残ったことは、「どんなに忙しくても、どんなに貧乏なでも、能楽堂に通ったご利益が今現れていると思った。」という言葉です。言葉にできないくらいの心の支えになっていたのだろうなと思いました。
 私はまだまだ能のことは初級者ですし、見ていない曲も分からないこともかなり多いです。でも、見ることにせよ、お稽古にせよ、細くても長く関わっていきたいなと改めて思いました。

 読みやすい本なので、お能ファンや少しでも関心のある方は是非読んでみてください。
 

長谷部浩 『菊五郎の色気』

2007年08月22日 | 本・マンガ
 題名の通り、菊五郎さんには独特の色気があると思います。私は特別な菊五郎贔屓ではないですが、菊五郎さんの舞台は面白く拝見しています。特に世話物、江戸の粋な男は一番好きですね。菊五郎さんの演じた役で印象的だったのが、紅長さん、新三、宗五郎など・・・江戸っ子ばかりです。そして、筆者や娘の寺島しのぶの「耐え忍ぶ役」もまた似合うというコメントにも納得です。私はこの本で挙げられているような菊五郎さんの政岡などの「耐え忍ぶ女」は見ていないですが、今年2月の忠臣蔵通しの昼夜2役とも切腹する、塩治判官と勘平というある意味「耐え忍ぶ」役というのはとてもはまり役だと思います。

 そして、古典の舞台だけでなく、新作や復活狂言にも意欲的で、時には俳優祭のように思いっきり楽しませてくれる菊五郎さんには「役者」を感じます。今後やってみたい役として「寺子屋」の松王、「切られ与三」の蝙蝠安を挙げていたのが印象的でした。とくに蝙蝠安が・・・・。いつか菊五郎さんがこれらの役を演じる機会があれば是非拝見したいです。

 あと、菊五郎さんだけでなく、七代目梅幸さんのお話もいろいろと収録されているのが面白かったです。