みゆみゆの徒然日記

日本の伝統芸能から映画や本などの感想、
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六月大歌舞伎 『女殺油地獄』

2009年06月17日 | 歌舞伎
 6月16日、歌舞伎座昼の部公演を観劇してきました。お目当ては、もちろん!仁左衛門丈一世一代の舞台です。他の演目の感想とはまた別に、まずはこちらだけまとめたいと思います。

四、『女殺油地獄』 片岡仁左衛門一世一代にて相勤め申し候


 お芝居自体が初見になります。これまで上演されても若手(染五郎や海老蔵)の指導役や監修のみで、いつぞやの松竹座で怪我で休演した海老蔵の代役をされましたけれど、仁左衛門さんが演じる与兵衛はもう見ることはない、というか一度も見ることはできないのだろうな・・・と勝手に思っていただけに・・最後の仁左衛門さんの与兵衛は何がなんでも・・・ということで・・・普段安い席ばかりの私も奮発して一等席で観劇。芝居全体を見るならもう少し後ろがいいのでしょうけれど、たまたま2列目中央のお席が手元に届きましたので、役者さんたちの熱演を間近で感じることができました。

 物語は簡単に説明すると、甘やかされて育った油屋の息子の与兵衛が借金の返済に困り、同業者の人妻の女性を殺してしまう・・・というストーリー。
 これに限らず、歌舞伎の世話物を見ていると、現代にも通じるなと思うことは多々あるのですが、こういうお話って現代でもかなり当てはまるよな・・・と感じました。複雑な家庭環境、母と父と妹にまで暴力を振るう、借金、そして殺人・・・。仁左衛門さんの他の当たり役にもアホなぼんぼん(言葉は適切かどうかは分かりませんが)はありますが、アホぼんでは済まされない役です。それでも、幕ごとにくるくる変わる表情に魅力を感じざるを得ません。(えーと・・・演じているのが仁左衛門さんだからというのが多いにあるとは思いますが・・・というかそうです。^^;)ただ憎めないというのならまだかわいげがあるけれども、あまりにも短絡的に起してしまう事件の数々。周りが何とかしたいと思ってもそれが不幸に繋がってしまう・・・。かなり現代的なドラマでもあるな~と感じました。

 クライマックスの油まみれになっての殺しの場面は、凄惨な場面のはずなのに(だからこそ?)目と心を奪われてしまいました・・・。間近で仁左衛門さんと孝太郎さんのお二人の熱演を感じました。油まみれになり、足を滑らせて転びながらも殺し・・・というのはあまりにも残虐すぎるのだけれど、あまりにの迫力に圧倒されてしまいました。仁左衛門さんは以前から「悪役が好き」と仰っていますけど・・・どの悪役の時もギラリとした目は印象的なんですけど、今回は「これで最後」という思いが見ている方にもありますので・・・余計そういうのを感じました。本当にヤバイんじゃないかというくらいの目。やっぱりこの人って凄いなぁ・・・。筋書にも書いてありますが、これは若かりし日の仁左衛門さん(当時・孝夫)の出世作でもありますよね。若いときは若いときで、この与兵衛という若者の役はぴったりたったと想像できますが(こればかりは生まれる前だからさすがに見ていません・・・どこかに映像ないかしら・・・)、今回の一世一代は最後の集大成の与兵衛なんだな・・・と思いました。


 楽日までまだ日はありますけれど、私はもう見にいけないので、しっかりと目に焼き付けてきました。もう見られないだろうなと諦めていましたが・・・見ることができて本当に良かったです。


 最後に・・・頬被り姿があんなにも素敵な人ってなかなかいませんよね・・・と改めて感じました(笑)

 他の演目の簡単な感想はまた後日・・・。