みゆみゆの徒然日記

日本の伝統芸能から映画や本などの感想、
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『わが母の記』 (DVD)

2012年12月12日 | 映画(DVD含む)
 この作品の原作者でもあり主人公(役名はちがいますが)である井上靖は伊豆で生まれ育ちましたし、原田監督も沼津出身ということで、地元でロケも行われましたし、いつでも1000円で見られる割引券なんかも頂いていたので、公開されたら見に行こうかと思っていたのですが、見逃しました(^^;なので、例によってレンタルでDVD鑑賞です。

【あらすじ】わが母の記 - goo 映画
作家、伊上洪作は、年老いた両親を訪ね、世田谷の自宅兼事務所と、伊豆の実家とを行き来する生活をしていた。姉・妹との三人兄弟だったが、幼少の頃、1人「土蔵の叔母さん」に預けられて育った洪作は、自分は母から捨てられたという思いが常にあり、大人になってもことある度に、その事で母親と喧嘩していた。しかし、父親が死ぬと、母の物忘れがひどくなる。世田谷の家に引き取る頃は、洪作が誰かさえ分からなくなっていた…。

 井上靖の私小説“洪作”シリーズです。静かですが、とても温かい映画でした。

 昭和のガンコだけど温かい古いけど、今も変わらない何かがある家族の愛や問題(?)が描かれています。役所さんはいかにもなちょっと難しい作家のお父さんというのが似合っています。そして樹木希林の老母姿は、上手いです。私は亡くなった祖母は、ちょっとボケ気味でしたが、周りにボケ老人という存在がいなかったので(寝たきりになった祖父は別として)そんなに苦労しなかったですが、ふとした表情や言い回しが、ああ・・なんか似ているな、ぼけた老人だなあと思ったり・・・。さらに、沼津の海を見たいと居なくなってしまうのは・・・なんかね、まだ元気なんですが、もう私の母の将来を想像してしまってね(笑)他人事に思えませんでしたよ(笑)

 そんな風に沼津の海や天城のわさび田の風景は故郷の景色でもあるわけで・・・おばあちゃんが帰りたくなってしまうのも分かります。「だらをつければ、なんでも伊豆弁になるわけじゃない」という洪作の台詞も同意。女中さんの言葉は、少し「こんな用法はしないだろう」という「~だら」もありましたが(笑)

 母から捨てられたと思っていた洪作、おばあちゃんは自分の息子が目の前にいるのに息子だと分からない・・・自分が分からないのに自分に対しての本心を知り、号泣する・・・。おばあちゃんはボケてしまい、どんどん何かを失ってしまうけれど、だからこそ、親子の“わだかまり”の部分も、少なくとも子どもの側は解けたのでしょうし、最後のほんのひと時でも、本当の親子になれたのかもしれませんね。また、宮崎あおい演じる三女の琴子もよかったですね。おばあちゃん思いで、一歩間違えると重い映画になってしまうところですが、彼女の温かい存在があったから、温かい映画にもなったのかな?と思いました。