しろみ茂平の話

郷土史を中心にした雑記

台湾沖航空戦⑥レイテ島~硫黄島~沖縄~終戦

2022年01月22日 | 昭和16年~19年
レイテ島


1944年10月20日、米軍はフィリピンのレイテ島に上陸した。
兵力の集中しているルソン島での決戦を求めた現地軍の反対を押し切り、
大本営陸軍部は、レイテ島での決戦に踏み切った。



(「幻の大戦果 大本営発表の真相」  辻泰明  NHK出版)


これより前の10月9日~14日の台湾沖航空戦で空母11隻、戦艦2隻を撃沈と発表したことが頭にあり、ここで叩いて一勝を挙げたいと考えたのである。
実際の戦果は重巡洋艦2隻大破のみにすぎなかったが、海軍は自己の面子を守るため、この事実を国民はもちろん首相、陸軍にも教えなかった。

この海戦で連合艦隊はもはや海上戦力としての体をなさなくなった。
もはや通常の航空攻撃では戦果が挙がらないと判断した海軍は、飛行機に爆弾を積んでの体当たり、神風特別攻撃隊を出撃させた。



(「幻の大戦果 大本営発表の真相」  辻泰明  NHK出版)

しかし逃げ回る敵艦戦に飛行機で体当たりするには高度な操縦技術が必要であるにもかかわらず、技量未熟者を多数特攻隊員としたため、命中率は必ずしも高くなかった。
よしんば命中したとしても、特攻機搭載の爆弾では十分な破壊力が得られなかった。
事実戦艦や正規空母などの大型艦はついに一隻も沈めることができなかった。
志願制を建前としていた特攻隊であったが、事実上強制されて出撃していった隊員も多く、彼らの士気は低下していった。
1944年内にレイテ島の組織的な抵抗は終息した。

翌1945年1月戦場はルソン島移り、山下奉文大将率いる陸軍部隊はマニラ市を撤退し山中にこもった。
海軍部隊2万は同市死守を叫んで米軍と市街戦を展開、多数の市民をまきこんで全滅した。
陸軍部隊は大損害を被りつつも、長期持久戦を守って日本降伏までゲリラ戦をつづけた。

1945年2月19日、米軍は硫黄島に上陸。3月25日までに日本軍全滅。

4月1日、米軍は沖縄に上陸。軍民あわせて17万近くの命を奪った。6月23日、牛島満司令官が自決して組織的な戦闘は終結した。

5月4日、ビルマのラングーンが英軍により陥落。
同月、ドイツが降伏。

8月9日、ソ連軍157万人が中立条約を無視して満州へ侵攻してきた。
事ここにいたってようやく日本政府は降伏を決意。

もはや厭戦気分はおおいがたく蔓延していたのである。
日中戦争から太平洋戦争にかけて日本人死者は、
軍人・軍属約230万人、民間人80万、計310万人にのぼった。
戦場となったアジア各国の死者は、役2.000万人との推計がある。


「日本軍事史」 吉川弘文館 2006年発行



・・・・
「大津野の歩み」

昭和20年7月14日 福山歩兵41連隊レイテ島にて玉砕

・・・・



・・・・台湾沖航空戦・終わり・・・・


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台湾沖航空戦⑤レイテ沖海戦、特攻へ

2022年01月22日 | 昭和16年~19年

日本が、マリアナ沖海戦で敗れサイパン島を失ったところで、太平洋戦争の勝敗は、ほぼ決していた。
本来、冷静な立場にたてば、ここで和平を乞うという道もあった。
それでも、あきらめきれずに、なんとか一回大勝利をおさめ、有利な条件で講和に持ち込みたいと願いつつ決戦を呼号していたのである。
それが、なまじ
台湾沖航空戦で大勝利をおさめたと発表してしまったために、日本は戦争に負けているのではなくて、勝っていることになってしまった。

以後、大本営発表による幻の戦果の連呼のもとで、日本は絶望的な戦いをつづけることになり、
沖縄や本土空襲や原爆投下やソ連参戦など、数々の悲劇を生むことになる。



(海軍鹿屋基地)




もうひとつ、特攻作戦に与えた影響を指摘しておきたい。
大本営発表は、もはや歯止めがきかなくなった。
レイテ沖海戦以降、頻繁に行われるようになった航空機による特攻も、
そのつど大戦果が報じられた。
しかし、特攻の事態はと言えば撃沈した空母は商船改造の数隻にすぎなかった。
にもかかわらず大本営はアメリカ軍空母部隊を殲滅するほどの大戦果があがっていることを自ら信じ込むようになっていく。
そして、その結果、さらに大規模な特攻を企画するようになり、特攻が常態化し、
ついには一億総特攻、つまり国民すべてが特攻という掛け声が生まれるのである。
もし特攻が、
その犠牲の大きさに比して、さほど大きな戦果をあげてはいないと冷静に分析することができていれば、事態はちがったものになっていたにちがいない。

特攻という常軌を逸した戦い方が、後の日本人に対する世界の人々の目を、どれだけ偏見に満ちたものにしたか。
それを考えると、特攻を肥大化させ助長していく一因となった幻の大戦果創出のメカニズムがもたらしたものの大きさに、あらためて愕然とせざるをえない。






「幻の大戦果 大本営発表の真相」  辻泰明  NHK出版 2002年発行





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