CYRIL NEVILLE & THE UPTOWN ALLSTARS / THE FIRE THIS TIME
前回、アーロン・ネヴィルについて書きましたが、実はネヴィル・ブラザーズで一番好きな人は?と聞かれたら、シリル・ネヴィルと答えます。
私が最もネヴィルズに熱を上げていたのは90年代初頭。名作「YELLOW MOON」に続いて「BROTHER'S KEEPER」が出た頃。日比谷野音で初めて観たネヴィル・ブラザーズに完膚なきまでに打ちのめされ、彼等のCDを買いあさりました。そして聴きまくりました。もう、来る日も来る日もネヴィルズを聴いてましたね。特によく聴いたのは「YELLOW MOON」と「BROTHER'S KEEPER」。そしてミニアルバムの「LIVE!!」と「FEARLESS」。特に「FEARLESS」収録の「My Blood」、そして「LIVE!!」収録の「People Say」という2曲のライヴ・ヴァージョンに興奮しまくりでした。
特に「My Blood」はこれぞシリル・ネヴィル!という大名演。この曲のスタジオ・ヴァージョンはアルバム「YELLOW MOON」の1曲目に収録されていますが、そこでのスピリチュアルなグルーヴがひたひたと寄せてくるようなアレンジも格好良いのですが、ここで聴けるライヴ・ヴァージョンはさらにカリブ&アフリカンなリズムを強調した、シリルならではのミクスチャー・ワールドな世界。後半、シリルのパーカッションとウィリー・グリーンのドラムスが弾ける展開も最高にスリリング。私はこれを聴いて「これがアフリカか~!」とゾクゾクしたものです。
「People Say」はもちろんミーターズの曲ですが、当時はまだリプリーズ時代のミーターズをCDでは聴けない時代でした。ですがこのネヴィルズのライヴ・ヴァージョンにJBやスライとは明らかに違うファンクを感じました。それはウィリー・グリーンの強烈なドラミングを中心にバンド全体が絡み合ってのグルーヴな訳ですが、リード・ヴォーカルのシリル・ネヴィルの熱いスピリットがビシバシと来る訳です。後半はジャムっぽい感じでさらにディープになっていくのですが、シリルのスキャットにギター・ソロが絡む展開が私のツボにハマりまくりでした。
またこの2曲で聴けるシリルの粘り気のあるヴォーカルがソウルフルで良いんですよ! 熱き男、シリル・ネヴィルの本領発揮と言ったところです。そう、シリルは熱いのです! 近年はどうか知りませんが、この頃はライヴのMCを殆どシリルが担当し、持ち前のフロント・マン資質で観客をグイグイと引っ張っていました。
そんなシリルはネヴィル兄弟の末弟です。ネヴィルズの伝記本「ネヴィルブラザーズ自伝」によりますと、早くから音楽業界で切磋琢磨していた兄達に憧れ、兄に追いつき、認められたいと常に思っていたようです。若い頃、兄達はシリルを子ども扱いしていましたが、いつしかシリルの才能に一目置くようになります。
70年代半ば、シリルは後期ミーターズに参加することで本格的にシーンに顔を出すことになりますが、そのきっかけは、以外にもローリング・ストーンズだったそうです。それは74年、ミーターズがストーンズのツアーのオープニング・アクトに抜擢された際、5万人のロック・ファンを相手に出来るフロント・マンが必要だということで、シリルが呼ばれたとか。シリルはストーンズを間近に見ることによってさらに色々なことを学んだそうです。ついでに新種のアシッドも学んじゃったみたいですけど…。
それはそうと、シリルのあの熱くエネルギッシュなパフォーマンスはストーンズの影響もあるというわけなのです。ネヴィルズを聴きながらも脳の半分はロック・ファンだった私が、シリルに惚れる訳です。ネヴィルズの伝記本を読んで、なるほど~!と納得したしだいです。
またあの頃のネヴィルズは、ニューオーリンズの伝統に、カリブやアフリカのリズムをブレンドし、ヒップ・ホップやロックを視野に入れながらも怪しげなブードゥーの気配を漂わせ、さらに神に祈りながら凛とした黒人としての誇りを音楽を込めるという、ネヴィル・ブラザーズにしか成し得ない境地に達していました。そしてその先頭に立っていたのがシリル・ネヴィル! 少なくとも私にはそう見えたのです。
「My Blood」はもちろん、シリル流のラップで人種差別を扱った「Sister Rosa」、怪しげなファンク・レゲエ「Wake Up」、U2のボノとの共作「Jah Love」などはこの時代のシリル格好良さを感じる最たるもの。さらに96年作「MITAKUYE OYASIN OYASIN」収録の「Whatever You Do」あたりのノリもシリルらしいですね。またそんなシリルの魅力をさらに押し進めたソロ・アルバムの数々も魅力的です。
熱き男、シリル・ネヴィル。今回の来日公演でも彼らしいパフォーマンスでステージを引っ張ってくれることでしょう。ですが、今年の8月、ニューオーリンズ・オールスターズを率いて来日した際、ちょっと元気が無かったようにも感じたのですが、どうなんでしょうか? またシリルはこの8月の来日以外にも06年に大阪のみでしたが来日公演を行っていますし、もっと遡ればアップタウン・オールスターズを率いての来日もありました。ネヴィルズ以外ではほとんど来日してくれない他の兄弟達に比べれば一番の親日家かも知れませんね。そういえば中島美嘉の「All Hands Together」にもパーカッションで参加してましたっけ。
*上の写真はセカンドライン・ファンクとレゲエを融合させたセカンドライン・レゲエを核に、彼らしいアイデンティティを打ち出した94年の傑作アルバム「CYRIL NEVILLE & THE UPTOWN ALLSTARS」。このアルバムを引っさげての来日公演は、観客の入りこそ寂しいものでしたが、内容は素晴らしかったです!

THE NEVILLE BROTHERS / LIVE!!
こちらは89年のライヴを3曲、90年のライヴを2曲収録したミニ・アルバム。この頃のライヴはまさに天下無敵。

THE NEVILLE BROTHERS / FEARLESS
ボブ・クリアマウンテンによる「Fearlee」のリミックス・ヴァージョンを中心にした5曲入りミニ・アルバム。ライヴ・ヴァージョンは3曲なれどどれも極上。「My Blood」の凄さはもちろん、後半のサックスとギターのバトルがエキサイティングな「Yellow Moon」、アーロンの極上ファルセットからウィリー・グリーンのパワフルかつファンキーなドラムスが冴え渡る「River Of Life」も抜群の出来映え!

CYRIL NEVILLE & TRIBE 13 / THE HEALING DANCE
ソロ最新作。シリルらしいスピリットに溢れる快作。衰えを全く感じさせない歌声も嬉しいです。
前回、アーロン・ネヴィルについて書きましたが、実はネヴィル・ブラザーズで一番好きな人は?と聞かれたら、シリル・ネヴィルと答えます。
私が最もネヴィルズに熱を上げていたのは90年代初頭。名作「YELLOW MOON」に続いて「BROTHER'S KEEPER」が出た頃。日比谷野音で初めて観たネヴィル・ブラザーズに完膚なきまでに打ちのめされ、彼等のCDを買いあさりました。そして聴きまくりました。もう、来る日も来る日もネヴィルズを聴いてましたね。特によく聴いたのは「YELLOW MOON」と「BROTHER'S KEEPER」。そしてミニアルバムの「LIVE!!」と「FEARLESS」。特に「FEARLESS」収録の「My Blood」、そして「LIVE!!」収録の「People Say」という2曲のライヴ・ヴァージョンに興奮しまくりでした。
特に「My Blood」はこれぞシリル・ネヴィル!という大名演。この曲のスタジオ・ヴァージョンはアルバム「YELLOW MOON」の1曲目に収録されていますが、そこでのスピリチュアルなグルーヴがひたひたと寄せてくるようなアレンジも格好良いのですが、ここで聴けるライヴ・ヴァージョンはさらにカリブ&アフリカンなリズムを強調した、シリルならではのミクスチャー・ワールドな世界。後半、シリルのパーカッションとウィリー・グリーンのドラムスが弾ける展開も最高にスリリング。私はこれを聴いて「これがアフリカか~!」とゾクゾクしたものです。
「People Say」はもちろんミーターズの曲ですが、当時はまだリプリーズ時代のミーターズをCDでは聴けない時代でした。ですがこのネヴィルズのライヴ・ヴァージョンにJBやスライとは明らかに違うファンクを感じました。それはウィリー・グリーンの強烈なドラミングを中心にバンド全体が絡み合ってのグルーヴな訳ですが、リード・ヴォーカルのシリル・ネヴィルの熱いスピリットがビシバシと来る訳です。後半はジャムっぽい感じでさらにディープになっていくのですが、シリルのスキャットにギター・ソロが絡む展開が私のツボにハマりまくりでした。
またこの2曲で聴けるシリルの粘り気のあるヴォーカルがソウルフルで良いんですよ! 熱き男、シリル・ネヴィルの本領発揮と言ったところです。そう、シリルは熱いのです! 近年はどうか知りませんが、この頃はライヴのMCを殆どシリルが担当し、持ち前のフロント・マン資質で観客をグイグイと引っ張っていました。
そんなシリルはネヴィル兄弟の末弟です。ネヴィルズの伝記本「ネヴィルブラザーズ自伝」によりますと、早くから音楽業界で切磋琢磨していた兄達に憧れ、兄に追いつき、認められたいと常に思っていたようです。若い頃、兄達はシリルを子ども扱いしていましたが、いつしかシリルの才能に一目置くようになります。
70年代半ば、シリルは後期ミーターズに参加することで本格的にシーンに顔を出すことになりますが、そのきっかけは、以外にもローリング・ストーンズだったそうです。それは74年、ミーターズがストーンズのツアーのオープニング・アクトに抜擢された際、5万人のロック・ファンを相手に出来るフロント・マンが必要だということで、シリルが呼ばれたとか。シリルはストーンズを間近に見ることによってさらに色々なことを学んだそうです。ついでに新種のアシッドも学んじゃったみたいですけど…。
それはそうと、シリルのあの熱くエネルギッシュなパフォーマンスはストーンズの影響もあるというわけなのです。ネヴィルズを聴きながらも脳の半分はロック・ファンだった私が、シリルに惚れる訳です。ネヴィルズの伝記本を読んで、なるほど~!と納得したしだいです。
またあの頃のネヴィルズは、ニューオーリンズの伝統に、カリブやアフリカのリズムをブレンドし、ヒップ・ホップやロックを視野に入れながらも怪しげなブードゥーの気配を漂わせ、さらに神に祈りながら凛とした黒人としての誇りを音楽を込めるという、ネヴィル・ブラザーズにしか成し得ない境地に達していました。そしてその先頭に立っていたのがシリル・ネヴィル! 少なくとも私にはそう見えたのです。
「My Blood」はもちろん、シリル流のラップで人種差別を扱った「Sister Rosa」、怪しげなファンク・レゲエ「Wake Up」、U2のボノとの共作「Jah Love」などはこの時代のシリル格好良さを感じる最たるもの。さらに96年作「MITAKUYE OYASIN OYASIN」収録の「Whatever You Do」あたりのノリもシリルらしいですね。またそんなシリルの魅力をさらに押し進めたソロ・アルバムの数々も魅力的です。
熱き男、シリル・ネヴィル。今回の来日公演でも彼らしいパフォーマンスでステージを引っ張ってくれることでしょう。ですが、今年の8月、ニューオーリンズ・オールスターズを率いて来日した際、ちょっと元気が無かったようにも感じたのですが、どうなんでしょうか? またシリルはこの8月の来日以外にも06年に大阪のみでしたが来日公演を行っていますし、もっと遡ればアップタウン・オールスターズを率いての来日もありました。ネヴィルズ以外ではほとんど来日してくれない他の兄弟達に比べれば一番の親日家かも知れませんね。そういえば中島美嘉の「All Hands Together」にもパーカッションで参加してましたっけ。
*上の写真はセカンドライン・ファンクとレゲエを融合させたセカンドライン・レゲエを核に、彼らしいアイデンティティを打ち出した94年の傑作アルバム「CYRIL NEVILLE & THE UPTOWN ALLSTARS」。このアルバムを引っさげての来日公演は、観客の入りこそ寂しいものでしたが、内容は素晴らしかったです!

THE NEVILLE BROTHERS / LIVE!!
こちらは89年のライヴを3曲、90年のライヴを2曲収録したミニ・アルバム。この頃のライヴはまさに天下無敵。

THE NEVILLE BROTHERS / FEARLESS
ボブ・クリアマウンテンによる「Fearlee」のリミックス・ヴァージョンを中心にした5曲入りミニ・アルバム。ライヴ・ヴァージョンは3曲なれどどれも極上。「My Blood」の凄さはもちろん、後半のサックスとギターのバトルがエキサイティングな「Yellow Moon」、アーロンの極上ファルセットからウィリー・グリーンのパワフルかつファンキーなドラムスが冴え渡る「River Of Life」も抜群の出来映え!

CYRIL NEVILLE & TRIBE 13 / THE HEALING DANCE
ソロ最新作。シリルらしいスピリットに溢れる快作。衰えを全く感じさせない歌声も嬉しいです。