第2位 : WILLIE NELSON AND ASLEEP AT THE WHEEL / WILLIE AND THE WHEEL
「ルーツな日記」が趣味と気分で選んだ09年ベストアルバム30選の第2位! ウィリー・ネルソンとアスリープ・アット・ザ・ウィールとの共演盤です! これは最高です! 聴いててこんなにも心がウキウキと弾むアルバムはそうは有りません!!
ウィリー・ネルソンはご存知カントリー界の大御所。70代後半に差し掛かりながらも、高品質な作品をばんばんリリースしています。09年には2枚のアルバムをリリース。一つはアメリカン・スタンダードを歌ったその名も「AMERICAN CLASSIC」。そしてもう一つが、その一つ前の作品となる今作「WILLIE AND THE WHEEL」です。こちらは古き良きウエスタン・スウィングをトリビュートした作品。
ウエスタン・スウィングとは、カントリーにジャズのスウィング感を融合したもので、1930年代にテキサスで生まれたそうです。ボブ・ウィルズやミルトン・ブラウンなんかがそのパイオニアと言われます。この30年代はビッグ・バンドによるスウィング・ジャズが大流行していた頃なので、カントリー界でも先鋭的なミュージシャンがそれを取り入れようとしたのでしょうね。もしくは単純にカントリーで楽しく踊りたかっただけかもしれませんが。ま、何はともあれ思わずステップを踏みたくなる、そんな魅惑のカントリー・ミュージックな訳です。
そしてそんな愛すべきウエスタン・スウィングを現代に伝える最高峰のバンドがアスリープ・アット・ザ・ウィール。日本ではあまり馴染みが無いバンドかもしれませんが、グラミー賞のカントリー部門を何度も受賞している凄いバンドなのです。特にボブ・ウィルスをトリビュートした「RIDE WITH BOB」は名盤として知られています。で、そんなアスリープ・アット・ザ・ウィールをバックにウィリー・ネルソンがウエスタン・スウィングの名曲を歌う! こんなの悪いはずがありません!
もちろんこの両者は初顔合わせと言う訳ではありません。先の「RIDE WITH BOB」にもウィリーはゲストで参加していましたしね。なのでウィリー・ネルソンのウェスタン・スイング作品のバックをアスリープ・アット・ザ・ウィールが務めるというのは嬉しいサプライズであったと同時に、この組み合わせしかあり得ない当然の結果のようにも思えました。ですがこれの実現には、意外な人物が絡んでいたようです。
それはジェリー・ウェクスラー。アトランティックでアレサ・フランクリンをはじめ数々のソウル名盤を世に送り出した偉人にして、サザン・ソウルからスワンプ・ロックにいたる南部ミュージックの仕掛人でもあります。このジェリ・ウェクスラーが今作「WILLIE AND THE WHEEL」のエグゼクティブ・プロデューサーにクレジットされているのです。この辺りのお話は萩原健太さんのブログ「Kenta's Nothing But Pop!」に詳しいので、ちょっとかいつまませて頂きます。
70年代初頭、ウェクスラーはカントリー・ロック/スワンプ・ロックに興味を示し、ダグ・サーム獲得のためテキサスはオースティンに赴きます。そしてあるクラブでダグ・サームとその前に演奏していたウィリー・ネルソンを観て、即座に契約を結んだそうです。しかしウィリーはアトランティックを2枚のアルバムを残しただけで契約打ち切りとなります。実はこの時ウェクスラーは、ウィリーの3枚目のアルバムとして、アスリープ・アット・ザ・ウィールとの共演盤を計画していたそうなのです。ですがその計画も契約打ち切りにより儚く消えてしまった訳です。
しかしここで話は終わらない。それから30数年を経た07年、ジェリー・ウェクスラーはウィリー・ネルソンのコンサートを見に行き、そのときオープニング・アクトをつとめていたアスリープ・アット・ザ・ウィールを見てかつての計画を思い出したのです。そうして誕生したのがこの「WILLIE AND THE WHEEL」という訳です。ウェクスラーは残念ながらその翌08年に亡くなられてしまいました…。
この作品は言わば、ウェクスラーが最後に残してくれた置き土産のようなものなのです。萩原健太さんもアトランティック時代のウィリーが大好きだと書かれていますが、私も全く同感なのであります。そしてこの「WILLIE AND THE WHEEL」が、音楽的趣向は大分違うとは言え、あのアトランティック時代の続きという意味合いもあると思うと、さらなる愛着が沸いてくるんです。
曲目はボブ・ウィルスやミルトン・ブラウン、スペイド・クーリーなんかが歌った名曲の数々。「Corrine Corrina」や「I'm Sittin' On Top Of The World」なんていう超有名なトラッドも含まれています。とにかくアスリープ・アット・ザ・ウィールのスウィング感溢れる演奏が堪りません。何度聴いても心が弾みます。もうウキウキです! 弾むリズム隊と軽やかに絡むソリスト達の演奏の素晴らしいこと! 特にスティール・ギターやフィドルの音色が堪りませんね。そして随所でトラディショナルな息吹を吹き込むホーン隊。主役となるウィリーの歌声も暖かさの中に渋みと苦みがあって、彼独特の味わいを滲ませています。そしてその歌声に呼応するように入るコーラスがまた良いんですよね。アットホームな雰囲気の中にも、共演盤ならではのスリリングな呼吸が感じられます。最高です!
とにかくウエスタン・スィングに対する愛に溢れた作品。 テキサスって良いな~。
「ルーツな日記」が趣味と気分で選んだ09年ベストアルバム30選の第2位! ウィリー・ネルソンとアスリープ・アット・ザ・ウィールとの共演盤です! これは最高です! 聴いててこんなにも心がウキウキと弾むアルバムはそうは有りません!!
ウィリー・ネルソンはご存知カントリー界の大御所。70代後半に差し掛かりながらも、高品質な作品をばんばんリリースしています。09年には2枚のアルバムをリリース。一つはアメリカン・スタンダードを歌ったその名も「AMERICAN CLASSIC」。そしてもう一つが、その一つ前の作品となる今作「WILLIE AND THE WHEEL」です。こちらは古き良きウエスタン・スウィングをトリビュートした作品。
ウエスタン・スウィングとは、カントリーにジャズのスウィング感を融合したもので、1930年代にテキサスで生まれたそうです。ボブ・ウィルズやミルトン・ブラウンなんかがそのパイオニアと言われます。この30年代はビッグ・バンドによるスウィング・ジャズが大流行していた頃なので、カントリー界でも先鋭的なミュージシャンがそれを取り入れようとしたのでしょうね。もしくは単純にカントリーで楽しく踊りたかっただけかもしれませんが。ま、何はともあれ思わずステップを踏みたくなる、そんな魅惑のカントリー・ミュージックな訳です。
そしてそんな愛すべきウエスタン・スウィングを現代に伝える最高峰のバンドがアスリープ・アット・ザ・ウィール。日本ではあまり馴染みが無いバンドかもしれませんが、グラミー賞のカントリー部門を何度も受賞している凄いバンドなのです。特にボブ・ウィルスをトリビュートした「RIDE WITH BOB」は名盤として知られています。で、そんなアスリープ・アット・ザ・ウィールをバックにウィリー・ネルソンがウエスタン・スウィングの名曲を歌う! こんなの悪いはずがありません!
もちろんこの両者は初顔合わせと言う訳ではありません。先の「RIDE WITH BOB」にもウィリーはゲストで参加していましたしね。なのでウィリー・ネルソンのウェスタン・スイング作品のバックをアスリープ・アット・ザ・ウィールが務めるというのは嬉しいサプライズであったと同時に、この組み合わせしかあり得ない当然の結果のようにも思えました。ですがこれの実現には、意外な人物が絡んでいたようです。
それはジェリー・ウェクスラー。アトランティックでアレサ・フランクリンをはじめ数々のソウル名盤を世に送り出した偉人にして、サザン・ソウルからスワンプ・ロックにいたる南部ミュージックの仕掛人でもあります。このジェリ・ウェクスラーが今作「WILLIE AND THE WHEEL」のエグゼクティブ・プロデューサーにクレジットされているのです。この辺りのお話は萩原健太さんのブログ「Kenta's Nothing But Pop!」に詳しいので、ちょっとかいつまませて頂きます。
70年代初頭、ウェクスラーはカントリー・ロック/スワンプ・ロックに興味を示し、ダグ・サーム獲得のためテキサスはオースティンに赴きます。そしてあるクラブでダグ・サームとその前に演奏していたウィリー・ネルソンを観て、即座に契約を結んだそうです。しかしウィリーはアトランティックを2枚のアルバムを残しただけで契約打ち切りとなります。実はこの時ウェクスラーは、ウィリーの3枚目のアルバムとして、アスリープ・アット・ザ・ウィールとの共演盤を計画していたそうなのです。ですがその計画も契約打ち切りにより儚く消えてしまった訳です。
しかしここで話は終わらない。それから30数年を経た07年、ジェリー・ウェクスラーはウィリー・ネルソンのコンサートを見に行き、そのときオープニング・アクトをつとめていたアスリープ・アット・ザ・ウィールを見てかつての計画を思い出したのです。そうして誕生したのがこの「WILLIE AND THE WHEEL」という訳です。ウェクスラーは残念ながらその翌08年に亡くなられてしまいました…。
この作品は言わば、ウェクスラーが最後に残してくれた置き土産のようなものなのです。萩原健太さんもアトランティック時代のウィリーが大好きだと書かれていますが、私も全く同感なのであります。そしてこの「WILLIE AND THE WHEEL」が、音楽的趣向は大分違うとは言え、あのアトランティック時代の続きという意味合いもあると思うと、さらなる愛着が沸いてくるんです。
曲目はボブ・ウィルスやミルトン・ブラウン、スペイド・クーリーなんかが歌った名曲の数々。「Corrine Corrina」や「I'm Sittin' On Top Of The World」なんていう超有名なトラッドも含まれています。とにかくアスリープ・アット・ザ・ウィールのスウィング感溢れる演奏が堪りません。何度聴いても心が弾みます。もうウキウキです! 弾むリズム隊と軽やかに絡むソリスト達の演奏の素晴らしいこと! 特にスティール・ギターやフィドルの音色が堪りませんね。そして随所でトラディショナルな息吹を吹き込むホーン隊。主役となるウィリーの歌声も暖かさの中に渋みと苦みがあって、彼独特の味わいを滲ませています。そしてその歌声に呼応するように入るコーラスがまた良いんですよね。アットホームな雰囲気の中にも、共演盤ならではのスリリングな呼吸が感じられます。最高です!
とにかくウエスタン・スィングに対する愛に溢れた作品。 テキサスって良いな~。