ルーツな日記

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グラミー賞 ノミネート『BEST CONTEMPORARY INSTRUMENTAL ALBUM』

2016-02-13 21:56:16 | ルーツ・ロック
Bill Frisell / Guitar In The Space Age!

グラミー賞ノミネート特集の第8回。これまでノミネート・リストの下の方ばかりつついてきましたが、今回は11番目というかなり上の方の部門を取りあげてみたいと思います。それは『BEST CONTEMPORARY INSTRUMENTAL ALBUM』部門。またよく分らない部門ですが、ノミネートは以下の5作品。

Bill Frisell / Guitar In The Space Age!
Wouter Kellerman / Love Language
Marcus Miller / Afrodeezia
Snarky Puppy & Metropole Orkest/ Sylva
Kirk Whalum / The Gospel According To Jazz, Chapter IV



なかなかそそられる作品が集まってるじゃないですか?ジャズ色が濃く感じられますが、ジャズの部門ではないんです。ジャズはジャズでちゃんと『BEST JAZZ INSTRUMENTAL ALBUM』部門というのがあって、テレンス・ブランチャード、ロバート・グラスパー、ジョン・スコフィールドなんかがノミネートされています。こちらはあくまでも“コンテンポラリー・インストトゥルメンタル”。言われてみれば、確かにコンテンポラリーなインスト作品ではありますね。さて、なかでも「ルーツな日記」的に注目するのはビル・フリーゼル!!

唯一無比の米ルーツ解釈から、ジャズやアヴァンギャルドなど幅広いフィールドを横断する奇才ギタリスト、ビル・フリーゼル。今作はそんな彼が少年時代に聴いて育った音楽を振り返り、それを彼ならではのギター解釈で再構築したカヴァー作。まるで当時の”スペース・エイジ”だった幼少の頃の思い出と共に、宇宙に浮遊するような作品です。

取り上げられたのは、ベンチャーズで有名な「Pipeline」、リンク・レイ「Rumble」、デュアン・エディの「Rebel Rouser」、アストロノウツ「Baja」、トルネイドースの「Telstar」など、50年代後半から60年代にかけて、エレキギターの音色が最も新しく刺激に満ちて聴こえた時代を代表するインスト曲を中心に、ビーチボーイズの「Surfer Girl」、キンクスの「Tired of Waiting for You」、バーズで知られる「Turn, Turn, Turn」といった当時のラジオを賑わしたであろうロック曲、さらにはジュニア・ウェルズの「Messin‘ with the Kid」まで。そこに数曲のビル自身によるオリジナル曲も散りばめられた、全14曲による宇宙の旅。

あの時代を夢想しながら、ロマンチックにゆらゆらと揺らめくようなビルのギター、その揺らめきギターに絡むグレッグ・リーズのスティール・ギターも素晴らしい!スウィンギーなリズムはトニーシェール(b)とケニー・ウォレセン(ds)というビル・フリーゼル周辺でお馴染みのメンバー達。抑制を効かせつつ、ビルらしい叙情性豊かなサウンドから染み入る刺と毒。聞き慣れたメロディーを壊さずにどことなく前衛的に聴かせる手腕は流石。「Messin‘ with the Kid」による彼流のブルース・フィーリングもまた良い!!



そして対抗は、なかなか大物揃いで選ぶのが難しいのですが、敢えて新進気鋭のUSジャズ/ファンク軍団スナーキーパピーと、オランダの誇る世界最大級という混成オーケストラ、メトロポール・オーケストラとの共演盤「Sylva」を挙げたいですね。スナーキーパピーは昨年の来日公演も最高でしたし、私が今最も注目しているバンドの一つ。もちろん、フュージョン界を代表するベーシスト、マーカス・ミラーによる話題の最新作や、カーク・ウェイラムが放つゴスペル・プロジェクトも最有力候補でしょう。南アフリカ出身のフルート奏者ウーター・ケラーマンは、この中では異色の存在でしょうか。




よろしければ、こちらもどうぞ。リストの下の方つっついてます。


グラミー賞 ノミネート『BEST ROOTS GOSPEL ALBUM』
グラミー賞 ノミネート『BEST REGIONAL ROOTS MUSIC ALBUM』
グラミー賞 ノミネート『BEST BLUEGRASS ALBUM』
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グラミー賞 ノミネート『BEST FOLK ALBUM』
グラミー賞 ノミネート『BEST AMERICANA ALBUM』
グラミー賞 ノミネート『BEST BLUES ALBUM』

グラミー賞 ノミネート『BEST ROOTS GOSPEL ALBUM』

2016-02-13 19:06:07 | ゴスペル
The Fairfield Four / Still Rockin' My Soul

グラミー賞ノミネート特集も7回目。かなりマイナーな部門から始めて、さらにマイナーな部門へと分け入っている感じになりつつある今回は、ゴスペルです。ゴスペルと言ってもグラミーの場合、その多くがアーバンなゴスペルだったり、クリスチャン・ミュージックという括りだったりする訳ですが、あるんです!ゴスペルにもルーツの世界が!という訳で『BEST ROOTS GOSPEL ALBUM』のノミネートは以下の3作品。

The Fairfield Four / Still Rockin' My Soul
Karen Peck & New River / Pray Now
Point Of Grace / Directions Home (Songs We Love, Songs You Know)


「あるんです!」なんて強調した割にはノミネートが3作品しかなくて、内2組については個人的な印象として”ルーツ・ゴスペル”と呼ぶには???な感じなので、来年には無くなっちゃうんではないか?という不安もよぎる当部門ですが、注目は何と言ってもフェアフィールド・フォー!!ナッシュビルが誇る100年近い歴史を持つゴスペル・カルテットです。1999年の来日公演はもはや伝説ですよね。場所は九段会館。味わい深いハーモニーと、アイザック・フリーマンのバス・ボイスに酔いしれたステージ!!あの至福の時間が思い出されます。

誕生は1921年、ナッシュビルのフェアフィールド・バティスト・チャーチに集まる子供達で結成されたと言われています。今から95年も前ですね。そこから波瀾万丈の歴史があった訳で、もちろん現在のフェアフィールド・フォーに当時のメンバーはいるはずもありません。初吹き込みをした42年頃のメンバーもいません。というより90年代にリユニオンし来日した時のメンバーもいないでしょう。ある意味、まったく別のグループと言っても良いぐらいですが、紛れもないフェアフィールド・フォーなのです。メンバーの変遷を繰り返しながら、その伝統を絶やさずに歌い繋いで行く姿に、ゴスペル・グループの神髄を感じませんか?

1曲目、BOBBY SHERRELLの朗らかなテナー・ヴォイスを黒いゴスペル・コーラスがグイグイと引っ張って行く「Rock My Soul」からその世界に引き込まれます。テナー×2、バリトン、バスの4声と手拍子のみで表現されるアカペラ・コーラス。言わずもがなですが、凄まじく良い声なんですよ! 人間味に溢れた、暖かく、艶やかな歌声。そしてハーモニーのふくよかなこと! 溢れ出るブラック・フィーリングにもやられます。2012年に亡くなられたアイザック・フリーマンがここにいないのは残念ですが、現在のバス・ボイス、JOE THOMPSONも素晴らしい! 各曲で独特のグルーヴを生み出す低音ヴォイスの唸りもさることながら、「Baptism Of Jesus」でのリード・ヴォーカルも旨味たっぷり。また彼がゲストのリーアン・ウーマックとリードを分け合う「Children Go Where I Send Thee」がまた絶品。またLEVERT ALLISONがいぶし銀のテナーを聴かせる「I Got Jesus And That's Enough」あたりは教会の一場面が目に浮かんできそうですし、ゴスペル・コーラスならではのスピード感が堪らない「Don't Let Nobody Turn You Around」には思わず体か揺れてしまいます。

こういうのを聴くと、人間の声って凄いな、と思わされてしまいますね。ハードなシャウターはいませんが、そこが良いんです! ナッシュビルの教会から生まれた至宝。これぞ黒人ゴスペル・カルテットです!




この部門はもうフェアフィールド・フォーで決まりで良いんじゃないでしょうか?正直な話、また個人的な印象で申し訳ありませんが、Karen Peck & New Riverも、Point Of Graceも、モダン過ぎてゴスペルに聴こえないんですよね…。私が年を取り過ぎなのか、本場のシーンを知らな過ぎなのか…。ただフェアフィールド・フォーが好き過ぎるだけなのか…?





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2016-02-13 16:02:09 | ニューオーリンズ
Jon Cleary / Go Go Juice

グラミー賞ノミネート特集の第6回。毎年「ルーツな日記」的に最も気になる部門『BEST REGIONAL ROOTS MUSIC ALBUM』。とは言えこの「REGIONAL ROOTS MUSIC」という括りがいまいちよく分からないのですが、「REGIONAL」は直訳すると「地域」とか「地方」ということのようなので、つまり地域色の濃い米ルーツ・ミュージックってことですかね? ここにハワイアンやネイティヴ・インディアン系のアーティストに交じって、ルイジアナ/ニューオーリンズ周辺、特にブラスバンドやザディコ/ケイジャンのアーティストがノミネートされるんです。という訳で『BEST REGIONAL ROOTS MUSIC ALBUM』部門のノミネート作品は以下の5組。

Jon Cleary / Go Go Juice
Natalie Ai Kamauu / La La La La
Keali'i Reichel / Kawaiokalena
The Revelers / Get Ready
Windwalker And The MCW / Generations

英国出身ながら、今やニューオーリンズの顔と言っても過言ではないピアニスト、ジョン・クリアリー。90年代からアブソリュート・モンスター・ジェントルメンを率い、ニューオーリンズの新しいファンキーなR&Bを牽引して来た彼。2012年にアラン・トゥーサンのソング集となるニューオーリンズ愛に溢れたソロ作「Occapella!」をリリースし、ソロ・アーティストとしてのマルチな才能を遺憾なく発揮。そしてその「Occapella!」に続くソロ作が「Go Go Juice」。前作とは打って変わって自身のオリジナル曲を瑞々しいバンド・サウンドで聴かせてくれます。今作のためにジョンが集めたバンド・メンバーは、テレンス・ヒギンス(ds)、カルヴィン・ターナー(b)、ダーウィン・パーキンス(g)、シェイン・テリオット(g)、ナイジェル・ホール(kbd)という、決して派手ではないですが、これぞニューオーリンズな強力布陣。これにパーカッションやホーン隊もつき、ジョン・クリアリーらしい弾力抜群のファンキー・ソウルが全9曲。プロデュースは名匠ジョン・ポーター。

1曲目、いきなりスカのビートで始まる「Pump It Up」に驚かされますが、それがごく自然にニューオーリンズのグルーヴにシフトして行き、またスカと交差し、R&Bとブレンドされて行くようなアレンジに、聴いてるだけで思わず笑顔になってしまいます。カーク・ジョセフを含むダーティ・ダズン・ブラス・バンドのホーン隊が参加した「Boneyard」はインディアン風味のニューオーリンズ・ファンク。おそらくダーウィン・パーキンスと思われるアダルトに揺れるギター・フレーズが印象的なメロウ・ソウル「Brother I'm Hungry」、ミーターズの流れを汲む隙間ファンク「Getcha GoGo Juice」、ヘヴィー且つ夜の香り漂う「9-5」などなど。全編で冴え渡るジョンの鍵盤と渋めの歌声も味わい深い。もちろん鍵盤だけでなく、ベースやギターも弾くマルチなセンスも相変わらず健在。そして特筆すべきは、収録曲の多くで故アラン・トゥーサンがホーン・アレンジを施していること。特に「Bringing Back The Home」でのブラスはいかにもトゥーサンな響きで、特に前半のバラード調の部分は曲調やピアノの響きすらもトゥーサンっぽく聴こえて、なんかしみじみしてしまいます。


対抗は、まったくもって個人的な趣味で申し訳ありませんが、ルイジアナのケイジャン/スワンプ・ポップ・バンド、THE REVELERSの「Get Ready」。こちらはレッド・ スティック・ランブラーズ のメンバー達が結成したグループで、これが3枚目のアルバムになるのでしょうか? ルイジアナらしい”いなたい”リズムとメロディー、アコーディオンやフィドルの音色、そして素っ頓狂な味わいのヴォーカルが最高にラヴリー!! 彼の地の空気がムンムンに漂ってくるごきげんな1枚です。そして残りのアーティストは、失礼ながら私の守備範囲ではないのですが、Natalie Ai KamauuとKeali'i Reichel はハワイアン、Windwalker And The MCWはネイティヴ・アメリカンのアーティストのようです。




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