ルーツな日記

ルーツっぽい音楽をルーズに語るブログ。
現在、 フジロック ブログ と化しています。

グラミー賞 ノミネート『BEST CONTEMPORARY INSTRUMENTAL ALBUM』

2016-02-13 21:56:16 | ルーツ・ロック
Bill Frisell / Guitar In The Space Age!

グラミー賞ノミネート特集の第8回。これまでノミネート・リストの下の方ばかりつついてきましたが、今回は11番目というかなり上の方の部門を取りあげてみたいと思います。それは『BEST CONTEMPORARY INSTRUMENTAL ALBUM』部門。またよく分らない部門ですが、ノミネートは以下の5作品。

Bill Frisell / Guitar In The Space Age!
Wouter Kellerman / Love Language
Marcus Miller / Afrodeezia
Snarky Puppy & Metropole Orkest/ Sylva
Kirk Whalum / The Gospel According To Jazz, Chapter IV



なかなかそそられる作品が集まってるじゃないですか?ジャズ色が濃く感じられますが、ジャズの部門ではないんです。ジャズはジャズでちゃんと『BEST JAZZ INSTRUMENTAL ALBUM』部門というのがあって、テレンス・ブランチャード、ロバート・グラスパー、ジョン・スコフィールドなんかがノミネートされています。こちらはあくまでも“コンテンポラリー・インストトゥルメンタル”。言われてみれば、確かにコンテンポラリーなインスト作品ではありますね。さて、なかでも「ルーツな日記」的に注目するのはビル・フリーゼル!!

唯一無比の米ルーツ解釈から、ジャズやアヴァンギャルドなど幅広いフィールドを横断する奇才ギタリスト、ビル・フリーゼル。今作はそんな彼が少年時代に聴いて育った音楽を振り返り、それを彼ならではのギター解釈で再構築したカヴァー作。まるで当時の”スペース・エイジ”だった幼少の頃の思い出と共に、宇宙に浮遊するような作品です。

取り上げられたのは、ベンチャーズで有名な「Pipeline」、リンク・レイ「Rumble」、デュアン・エディの「Rebel Rouser」、アストロノウツ「Baja」、トルネイドースの「Telstar」など、50年代後半から60年代にかけて、エレキギターの音色が最も新しく刺激に満ちて聴こえた時代を代表するインスト曲を中心に、ビーチボーイズの「Surfer Girl」、キンクスの「Tired of Waiting for You」、バーズで知られる「Turn, Turn, Turn」といった当時のラジオを賑わしたであろうロック曲、さらにはジュニア・ウェルズの「Messin‘ with the Kid」まで。そこに数曲のビル自身によるオリジナル曲も散りばめられた、全14曲による宇宙の旅。

あの時代を夢想しながら、ロマンチックにゆらゆらと揺らめくようなビルのギター、その揺らめきギターに絡むグレッグ・リーズのスティール・ギターも素晴らしい!スウィンギーなリズムはトニーシェール(b)とケニー・ウォレセン(ds)というビル・フリーゼル周辺でお馴染みのメンバー達。抑制を効かせつつ、ビルらしい叙情性豊かなサウンドから染み入る刺と毒。聞き慣れたメロディーを壊さずにどことなく前衛的に聴かせる手腕は流石。「Messin‘ with the Kid」による彼流のブルース・フィーリングもまた良い!!



そして対抗は、なかなか大物揃いで選ぶのが難しいのですが、敢えて新進気鋭のUSジャズ/ファンク軍団スナーキーパピーと、オランダの誇る世界最大級という混成オーケストラ、メトロポール・オーケストラとの共演盤「Sylva」を挙げたいですね。スナーキーパピーは昨年の来日公演も最高でしたし、私が今最も注目しているバンドの一つ。もちろん、フュージョン界を代表するベーシスト、マーカス・ミラーによる話題の最新作や、カーク・ウェイラムが放つゴスペル・プロジェクトも最有力候補でしょう。南アフリカ出身のフルート奏者ウーター・ケラーマンは、この中では異色の存在でしょうか。




よろしければ、こちらもどうぞ。リストの下の方つっついてます。


グラミー賞 ノミネート『BEST ROOTS GOSPEL ALBUM』
グラミー賞 ノミネート『BEST REGIONAL ROOTS MUSIC ALBUM』
グラミー賞 ノミネート『BEST BLUEGRASS ALBUM』
グラミー賞 ノミネート『BEST COUNTRY ALBUM』
グラミー賞 ノミネート『BEST FOLK ALBUM』
グラミー賞 ノミネート『BEST AMERICANA ALBUM』
グラミー賞 ノミネート『BEST BLUES ALBUM』

グラミー賞 ノミネート『BEST ROOTS GOSPEL ALBUM』

2016-02-13 19:06:07 | ゴスペル
The Fairfield Four / Still Rockin' My Soul

グラミー賞ノミネート特集も7回目。かなりマイナーな部門から始めて、さらにマイナーな部門へと分け入っている感じになりつつある今回は、ゴスペルです。ゴスペルと言ってもグラミーの場合、その多くがアーバンなゴスペルだったり、クリスチャン・ミュージックという括りだったりする訳ですが、あるんです!ゴスペルにもルーツの世界が!という訳で『BEST ROOTS GOSPEL ALBUM』のノミネートは以下の3作品。

The Fairfield Four / Still Rockin' My Soul
Karen Peck & New River / Pray Now
Point Of Grace / Directions Home (Songs We Love, Songs You Know)


「あるんです!」なんて強調した割にはノミネートが3作品しかなくて、内2組については個人的な印象として”ルーツ・ゴスペル”と呼ぶには???な感じなので、来年には無くなっちゃうんではないか?という不安もよぎる当部門ですが、注目は何と言ってもフェアフィールド・フォー!!ナッシュビルが誇る100年近い歴史を持つゴスペル・カルテットです。1999年の来日公演はもはや伝説ですよね。場所は九段会館。味わい深いハーモニーと、アイザック・フリーマンのバス・ボイスに酔いしれたステージ!!あの至福の時間が思い出されます。

誕生は1921年、ナッシュビルのフェアフィールド・バティスト・チャーチに集まる子供達で結成されたと言われています。今から95年も前ですね。そこから波瀾万丈の歴史があった訳で、もちろん現在のフェアフィールド・フォーに当時のメンバーはいるはずもありません。初吹き込みをした42年頃のメンバーもいません。というより90年代にリユニオンし来日した時のメンバーもいないでしょう。ある意味、まったく別のグループと言っても良いぐらいですが、紛れもないフェアフィールド・フォーなのです。メンバーの変遷を繰り返しながら、その伝統を絶やさずに歌い繋いで行く姿に、ゴスペル・グループの神髄を感じませんか?

1曲目、BOBBY SHERRELLの朗らかなテナー・ヴォイスを黒いゴスペル・コーラスがグイグイと引っ張って行く「Rock My Soul」からその世界に引き込まれます。テナー×2、バリトン、バスの4声と手拍子のみで表現されるアカペラ・コーラス。言わずもがなですが、凄まじく良い声なんですよ! 人間味に溢れた、暖かく、艶やかな歌声。そしてハーモニーのふくよかなこと! 溢れ出るブラック・フィーリングにもやられます。2012年に亡くなられたアイザック・フリーマンがここにいないのは残念ですが、現在のバス・ボイス、JOE THOMPSONも素晴らしい! 各曲で独特のグルーヴを生み出す低音ヴォイスの唸りもさることながら、「Baptism Of Jesus」でのリード・ヴォーカルも旨味たっぷり。また彼がゲストのリーアン・ウーマックとリードを分け合う「Children Go Where I Send Thee」がまた絶品。またLEVERT ALLISONがいぶし銀のテナーを聴かせる「I Got Jesus And That's Enough」あたりは教会の一場面が目に浮かんできそうですし、ゴスペル・コーラスならではのスピード感が堪らない「Don't Let Nobody Turn You Around」には思わず体か揺れてしまいます。

こういうのを聴くと、人間の声って凄いな、と思わされてしまいますね。ハードなシャウターはいませんが、そこが良いんです! ナッシュビルの教会から生まれた至宝。これぞ黒人ゴスペル・カルテットです!




この部門はもうフェアフィールド・フォーで決まりで良いんじゃないでしょうか?正直な話、また個人的な印象で申し訳ありませんが、Karen Peck & New Riverも、Point Of Graceも、モダン過ぎてゴスペルに聴こえないんですよね…。私が年を取り過ぎなのか、本場のシーンを知らな過ぎなのか…。ただフェアフィールド・フォーが好き過ぎるだけなのか…?





よろしければ、こちらもどうぞ。奥の方つっついてます。

グラミー賞 ノミネート『BEST REGIONAL ROOTS MUSIC ALBUM』
グラミー賞 ノミネート『BEST BLUEGRASS ALBUM』
グラミー賞 ノミネート『BEST COUNTRY ALBUM』
グラミー賞 ノミネート『BEST FOLK ALBUM』
グラミー賞 ノミネート『BEST AMERICANA ALBUM』
グラミー賞 ノミネート『BEST BLUES ALBUM』

グラミー賞 ノミネート『BEST REGIONAL ROOTS MUSIC ALBUM』

2016-02-13 16:02:09 | ニューオーリンズ
Jon Cleary / Go Go Juice

グラミー賞ノミネート特集の第6回。毎年「ルーツな日記」的に最も気になる部門『BEST REGIONAL ROOTS MUSIC ALBUM』。とは言えこの「REGIONAL ROOTS MUSIC」という括りがいまいちよく分からないのですが、「REGIONAL」は直訳すると「地域」とか「地方」ということのようなので、つまり地域色の濃い米ルーツ・ミュージックってことですかね? ここにハワイアンやネイティヴ・インディアン系のアーティストに交じって、ルイジアナ/ニューオーリンズ周辺、特にブラスバンドやザディコ/ケイジャンのアーティストがノミネートされるんです。という訳で『BEST REGIONAL ROOTS MUSIC ALBUM』部門のノミネート作品は以下の5組。

Jon Cleary / Go Go Juice
Natalie Ai Kamauu / La La La La
Keali'i Reichel / Kawaiokalena
The Revelers / Get Ready
Windwalker And The MCW / Generations

英国出身ながら、今やニューオーリンズの顔と言っても過言ではないピアニスト、ジョン・クリアリー。90年代からアブソリュート・モンスター・ジェントルメンを率い、ニューオーリンズの新しいファンキーなR&Bを牽引して来た彼。2012年にアラン・トゥーサンのソング集となるニューオーリンズ愛に溢れたソロ作「Occapella!」をリリースし、ソロ・アーティストとしてのマルチな才能を遺憾なく発揮。そしてその「Occapella!」に続くソロ作が「Go Go Juice」。前作とは打って変わって自身のオリジナル曲を瑞々しいバンド・サウンドで聴かせてくれます。今作のためにジョンが集めたバンド・メンバーは、テレンス・ヒギンス(ds)、カルヴィン・ターナー(b)、ダーウィン・パーキンス(g)、シェイン・テリオット(g)、ナイジェル・ホール(kbd)という、決して派手ではないですが、これぞニューオーリンズな強力布陣。これにパーカッションやホーン隊もつき、ジョン・クリアリーらしい弾力抜群のファンキー・ソウルが全9曲。プロデュースは名匠ジョン・ポーター。

1曲目、いきなりスカのビートで始まる「Pump It Up」に驚かされますが、それがごく自然にニューオーリンズのグルーヴにシフトして行き、またスカと交差し、R&Bとブレンドされて行くようなアレンジに、聴いてるだけで思わず笑顔になってしまいます。カーク・ジョセフを含むダーティ・ダズン・ブラス・バンドのホーン隊が参加した「Boneyard」はインディアン風味のニューオーリンズ・ファンク。おそらくダーウィン・パーキンスと思われるアダルトに揺れるギター・フレーズが印象的なメロウ・ソウル「Brother I'm Hungry」、ミーターズの流れを汲む隙間ファンク「Getcha GoGo Juice」、ヘヴィー且つ夜の香り漂う「9-5」などなど。全編で冴え渡るジョンの鍵盤と渋めの歌声も味わい深い。もちろん鍵盤だけでなく、ベースやギターも弾くマルチなセンスも相変わらず健在。そして特筆すべきは、収録曲の多くで故アラン・トゥーサンがホーン・アレンジを施していること。特に「Bringing Back The Home」でのブラスはいかにもトゥーサンな響きで、特に前半のバラード調の部分は曲調やピアノの響きすらもトゥーサンっぽく聴こえて、なんかしみじみしてしまいます。


対抗は、まったくもって個人的な趣味で申し訳ありませんが、ルイジアナのケイジャン/スワンプ・ポップ・バンド、THE REVELERSの「Get Ready」。こちらはレッド・ スティック・ランブラーズ のメンバー達が結成したグループで、これが3枚目のアルバムになるのでしょうか? ルイジアナらしい”いなたい”リズムとメロディー、アコーディオンやフィドルの音色、そして素っ頓狂な味わいのヴォーカルが最高にラヴリー!! 彼の地の空気がムンムンに漂ってくるごきげんな1枚です。そして残りのアーティストは、失礼ながら私の守備範囲ではないのですが、Natalie Ai KamauuとKeali'i Reichel はハワイアン、Windwalker And The MCWはネイティヴ・アメリカンのアーティストのようです。




よろしければ、こちらもどうぞ!!

グラミー賞 ノミネート『BEST BLUEGRASS ALBUM』
グラミー賞 ノミネート『BEST COUNTRY ALBUM』
グラミー賞 ノミネート『BEST FOLK ALBUM』
グラミー賞 ノミネート『BEST AMERICANA ALBUM』
グラミー賞 ノミネート『BEST BLUES ALBUM』

フジロック第1弾!!

2016-02-12 23:01:04 | フジロック
KAMASI WASHINGTON / THE EPIC

ついに、ついに、今年のフジロック第1弾がオフィシャル・サイトにて発表されました!!! 今年は2日前に「第1弾の発表は12日金曜日午前11時」とアナウンスしつつその全貌をモザイクでぼかした画像で見せるという、遊び心を見せてくれたフジロック。モザイクと格闘しつつ、出演アーティストを予想、妄想するワクワク感は半端ありませんでした~。そして本日、モザイクが取れて現れたのは、その妄想のさらに上を行く21組!!

RED HOT CHILI PEPPERS
SIGUR ROS
DISCLOSURE
BATTLES
BEN HARPER & THE INNOCENT CRIMINALS
CON BRIO
COURTNEY BARNETT
ERNEST RANGLIN
G.LOVE & SPECIAL SAUCE
DJ HARVEY
THE INTERNET
JACK GARRATT
JAKE BUGG
KAMASI WASHINGTON
KULA SHAKER
LEON BRIDGES
MURA MASA
OLIVER HELDENS
ROBERT GLASPER EXPERIMENT
SQUAREPUSHER
2 CELLOS


カマシ・ワシント~ン!!!来ましたねー!フジにカマシがやってくる!いやもうこれは奥の方で3時間とかやってもらいたい!!さらにロバートグラスパー、ジ・インターネットと、新時代のブラックミュージックが苗場に鳴るのを想像すると今からドキドキしちゃいます。さらにリオン・ブリッジズとコンブリオも来ちゃいますからね~。今年のフジロックは黒いのか!!




もちろんベン・ハーパーやG・ラヴも楽しみですし、アーネスト・ラングリンもまた観れるとは!!

ロック系ではバトルズ、コートニー・バーネット、ジェイク・バグあたりが楽しみですし、もちろんシガー・ロスやクーラ・シェイカーだって観たい!!


いやはや第1弾から濃すぎますよ!!!




とりあえず、黒い動画を貼っておきますね。

Kamasi Washington BRIC JAZZFEST Oct 15



The Internet - Full Performance (Live on KEXP)



Con Brio - Never Be The Same [Live at Viracocha]



Leon Bridges Performs "Twistin' & Groovin"



Robert Glasper Experiment - Smells Like Teen Spirit (Live on KEXP)

グラミー賞 ノミネート『BEST BLUEGRASS ALBUM』

2016-02-12 19:26:09 | カントリー
The Steeldrivers / The Muscle Shoals Recordings

グラミー賞ノミネート特集、第5回はブルーグラス。という訳で『BEST BLUEGRASS ALBUM』部門のノミネートは以下の5作品。

Dale Ann Bradley / Pocket Full Of Keys
Rob Ickes & Trey Hensley / Before The Sun Goes Down
Doyle Lawson & Quicksilver / In Session
Ralph Stanley & Friends / Man Of Constant Sorrow
The Steeldrivers / The Muscle Shoals Recordings


こちらも気になる作品が並んでいますが、中でも一押しはザ・スティールドライヴァーズ。ここ数年話題のブルーグラス・バンドですが、そもそもその界隈の第一線で活躍していたような人達が集まって結成されたようなバンドらしく、その演奏力は折り紙付き。実は前回紹介したクリス・ステイプルトンもザ・スティールドライヴァーズの元メンバーだったんです。しかもデビュー時よりクリスの強力なヴォーカルが注目されてたんですよね。ですが彼の脱退後もこうした力作を届けてくれている訳ですから頼もしい限りです。

さて、今作でまず目を惹かれるのが「The Muscle Shoals Recordings」というタイトル。サザン・ソウルの聖地マッスル・ショールズですよ! え?ブルーグラスがマッスル・ショールズ?と思われるかもしれませんが、このバンド、あのクリス・ステイプルトンが在籍していたぐらいですから、ブルーグラスとは言え、ソウルやブルースも視野に入れたアーシーなサウンドが持ち味でして、まさにマッスル・ショールズはもってこいな訳です。私なんかスティールドライヴァーズのマッスル・ショールズ録音と聞いて、これは聴かねば!と飛びついてしまいました。そしてさらにもう一つ理由があるんです。クリス・ステイプルトンの後任として加入したゲイリー・ニコルスはマッスル・ショールズ出身なんです。ゲイリーが参加して2作目となる今作で、彼の故郷の地が冠された訳です。

かのFAMEスタジオで腕を鳴らしていたJIMMY NUTTが録音とミックスでクレジットされていることから、おそらく彼のNuttHouse Recording Studioで録音されたと思われる今作。ギター、ベース、バンジョー、フィドル、マンドリンという、まさしくブルーグラスな弦の重なりに纏わり付くような南部フィーリング。ゲイリー・ニコルスによる、クリス・ステイプルトンとはまた違うしゃがれた声が、土の香りと共にソウルフルに響きます。また、男臭いサウンドのなか、紅一点タミー・ロジャースの枯れを伴うフィドルの音色と麗しいハーモニーも良いアクセントに。素人の耳には明確に捉えることは出来ないものの、ここにもきっとマッスル・ショールズの魔力が染み込んでいることでしょう。

プロデュースはスティールドライヴァーズ自身と、2曲で元ドライヴ・バイ・トラッカーズのジェイソン・イズベルも名を連ね、彼はスライド・ギターも弾いています。このザ・スティールドライヴァーズとジェイソン・イズベル、そしてクリス・ステイプルトンという現代の南部コネクション、なんか気になります。



対抗は、ブルーグラス界の伝説ラルフ・スタンレーの最新作「Man Of Constant Sorrow」。バディ・ミラー&ジム・ローダーデイルをプロデューサーに、ロバート・プラント、エルビス・コステロ、ギリアン・ウェルチ、オールド・クロウ・メディスン・ショー、デル・マッコウリー、リッキー・スキャッグス達をゲストに招いた話題作です。また国際ブルーグラス音楽協会(IBMA)アワードで5度の『Female Vocalist of the Year』に輝く女性シンガー、デイル・アン・ブラッドレイによる7枚目のソロ作「Pocket Full Of Keys」、現行シーンを代表するドブロの名手ロブ・アイクスとギターの達人トレイ・ヘンスリーの強力デュオ作「Before The Sun Goes Down」、さらに大ベテラン、ドイルローソン&クィックシルバーの最新作「In Session」と、流石の充実振りですね~。

グラミー賞 ノミネート『BEST COUNTRY ALBUM』

2016-02-11 10:23:40 | カントリー
Chris Stapleton / Traveller

グラミー賞ノミネート特集、第4回はカントリー。という訳で『BEST COUNTRY ALBUM』のノミネート作は以下の5作品。


Sam Hunt / Montevallo
Little Big Town / Pain Killer
Ashley Monroe / The Blade
Kacey Musgraves / Pageant Material
Chris Stapleton / Traveller


何と言っても注目は、今年のグラミー賞において台風の目となるか?という注目が集まるクリス・ステイプルトン。何せこの初ソロ作「Traveller」は主要部門の『ALBUM OF THE YEAR』にノミネートされていますからね!さらにこの『BEST COUNTRY ALBUM』も含め計4部門にノミネートされている訳ですから、注目されない訳がありません。おそらくアメリカでのブレイク振りというのは凄まじいものがあるのでしょうが、悲しいかな、ここ日本にはそれがなかなか伝わってきません。案外、『ALBUM OF THE YEAR』のノミネートを受けて初めてクリス・ステイプルトンの歌を聴いたという人も多いのではないでしょうか?かくいう私もその一人だったり。

で、このクリス・ステイプルトン、良いんですよ!!髭にカウボーイハットは伊達じゃない!昨今のポップ・カントリーとは一線を画す、骨太な南部フィーリングにやられます。1978年、米ケンタッキー州の生まれ。父親は炭鉱夫という、なんかそれだけで音楽に対する実直さが伝わってきそうですよね。ナッシュヴィルに出ていくつかのバンドで活躍し、昨年の2015年に初のソロアルバム「Traveller」を発売。同年のカントリーミュージック協会賞 (CMA Awards)で『ALBUM OF THE YEAR』を含む3部門を受賞という、この年の最多受賞を成し遂げ、授賞式でジャスティン・ティンバーレイクと共演パフォーマンスをしたことで人気に拍車がかかったそう。またこれまでに数々のカントリー・シンガーに楽曲を提供するなど、ソングライターとしても名高く、かのアデルも彼の曲を歌っているとか。まさに時の人です。

1曲目タイトル曲「Traveller」から朴訥としたカントリー・フィーリングが気持ち良い!ダミ声混じりの泥臭い歌声が広大な米南部へとトリップさせてくれます。サザン・ロックな「Nobody To Blame」、郷愁を誘うスロー「Whiskey And You」、雄大な情景を感じさせる「When The Stars Come Out」、スワンプ・テイスト香る「Might As Well Get Stoned」、漢らしさに溢れる「Outlaw State Of Mind」、アメリカン・ロックに突き抜ける「Parachute」、そして絶品のサザン・ソウル・バラード「Tennessee Whiskey」などなど。激しくも味わい深いクリス・ステイプルトンの歌声に聴き惚れてしまいます。また彼の野太い声に寄り添うようにハーモニーを付ける奥方モーガン・ステイプルトンの存在も大きい。さらにロビー・ターナーのペダル・スティールやミッキー・ラファエルのハーモニカも良い味出しています。特に「Daddy Doesn't Pray Anymore」での鄙びたハーモニカは滲みますね~。プロデュースを務めたデイヴ・コブは、今回のグラーミーで『PRODUCER OF THE YEAR』にノミネートされています。

ちなみに奥方のモーガン・ステイプルトンという名前、どこかで聞いたことあるな、と思いましたら、ガイ・クラークの「MY FAVORITE PICTURE OF YOU」でも美しいハーモニーを聴かせてくれている人で、その奇麗な声に私も気になっていたんですけど、その時は大した情報を得られなかったんです。まさかクリス・ステイプルトンの奥様とは。これは嬉しい発見でした。



対抗は、カントリーミュージック協会賞でクリス・ステイプルトンと最多受賞を分け合ったリトル・ビッグ・タウンでしょうか?個人的には麗しの美声の持ち主、ケイシー・マスグレイヴスやアシュリー・モンローを応援したいところ。それにしても、クリス・ステイプルトンに比べるとやはりポップですよね。サム・ハントは、モダンすぎて私の耳にはカントリーには聞こえないんですけど…。






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グラミー賞 ノミネート『BEST FOLK ALBUM』
グラミー賞 ノミネート『BEST AMERICANA ALBUM』
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グラミー賞 ノミネート『BEST FOLK ALBUM』

2016-02-09 23:13:25 | カントリー
Rhiannon Giddens / Tomorrow Is My Turn

グラミー賞ノミネート特集、第3回は、『BEST FOLK ALBUM』部門です。ノミネートは以下の5作品。

Norman Blake / Wood, Wire & Words
Béla Fleck & Abigail Washburn / Béla Fleck And Abigail Washburn
Rhiannon Giddens / Tomorrow Is My Turn
Patty Griffin / Servant Of Love
Glen Hansard / Didn't He Ramble

最注目は、現代に蘇るオールドタイムな黒人ストリングス・バンド、キャロライナ・チョコレート・ドロップスの紅一点リアノン・ギデンスです!! ここ1~2年の間に、ジョニー・キャッスのトリビュート作「Look Again To The Wind: Johnny Cash's Bitter Tears Revisited」、ボブ・ディラン「地下室」の新発見「The New Basement Tapes, Lost On The River」という2枚の話題作に参加し、USインディー・フォークの旗手アイアン&ワインとディランのカヴァー「Forever Young」をリリースしたり、映画「Inside Llewyn Davis」を記念したコンサート「 Another Day, Another Time」に出演したりと、にわかに一人の女性シンガー、リアノン・ギデンスとしての存在感を発揮しつつある彼女。しかも上記に挙げたプロジェクトの全てがT・ボーン・バーネットもしくはジョー・ヘンリー絡みという、巨匠からの愛され方もその才能の豊かさを物語っていますよね。

そんな彼女のソロ作としては初のフルアルバムとなる「Tomorrow Is My Turn」。こちらもT・ボーン・バーネットのプロデュース。ジェイ・ベルローズ&デニス・クロウチをリズム隊に配した彼のプロダクションは流石に見事。特にリズムをシェイクさせるジャック・アシュフォードのタンバリンが良いですね。ニーナ・シモンでも知られるトラディショナル「Black Is The Color」でのヒップホップとニューオーリンズを混ぜたような解釈も面白い。とは言えここでの主役はもちろんリアノン・ギデンスなのです。彼女のシンガーとしての魅力にフォーカスした作品といっても過言ではない、それ程に彼女の歌声が瑞々しく響きます。ドリー・パートン「Don't Let It Trouble Your Mind」、オデッタ「Waterboy」、シスター・ロゼッタ・サープ「Up Above My Head」、パッツィ・クライン「She's Got You」、エリザベス・コットン「Shake Sugaree」などなど、とにかく彼女の凛とした歌声に惹かれます。

さて、キャロライナ・チョコレート・ドロップスとしては、既に2010年にグラミーを受賞している彼女ですが、果たしてソロでの受賞なるか? そして3月には来日も決まっているのでそちらも楽しみです!





対抗として挙げたいのはパティ・グリフィン。近年はロバート・プラントのバンド・オブ・ジョイへの参加でも知られる彼女。そのプラントもゲスト参加した前作「American Kid」は多少ロック寄りでしたが、今作はフォーキーです。いや、フォーキーと言うより、これはアメリカーナですよね。寂寞とした悠久のアメリカーナ。素晴らしいの一言!

個人的にこの部門は両女性シンガーの一騎打ちの様相なのですが、冷静に考えれば、受賞に最も近いのはベラ・フレック&アビゲイル・ウォッシュバーンかもしれません。何せ過去にいくつものグラミーを受賞しているベラ・フレックですからね~。そして70歳代後半になるギターの名手ノーマン・ブレイクがオリジナル曲で構成した新作「Wood, Wire & Words」、さらに映画『once ダブリンの街角で』主演で知られるグレン・ハンサードのソロ作「Didn't He Ramble」と、興味深い作品が並んでいます。

グラミー賞 ノミネート『BEST AMERICANA ALBUM』

2016-02-08 20:36:26 | フェス、イベント
Punch Brothers / The Phosphorescent Blues

グラミー賞ノミネート特集、第2回。前回のブルースに続いて今回はアメリカーナです。アメリカーナと言いましてもその定義はなかなか曖昧で、かくいう私も実はよく知りません…。イメージ的には、フォークやカントリーを中心に、現代的な視点で描かれたアメリカン・ルーツミュージック。と言ったところでしょうか?という訳で、『BEST AMERICANA ALBUM』のノミネート作は以下の5作品。

Brandi Carlile / The Firewatcher's Daughter
Emmylou Harris & Rodney Crowell / The Traveling Kind
Jason Isbell / Something More Than Free
The Mavericks / Mono
Punch Brothers / The Phosphorescent Blues


今回注目するのは、ブルーグラスの新世代と賞され続けて早幾年、ルーツ・シーン最重要人物の一人、天才マンドリン奏者クリス・シーリー率いるパンチ・ブラザーズの「The Phosphorescent Blues」。ここ数年、ヨー・ヨー・マ達との「The Goat Rodeo Sessions」や、エドガー・マイヤーとのデュオ作「Bass & Mandolin」、バッハを取りあげたソロ作「Bach: Sonatas and Partitas, Vol. 1」、さらにはニッケルクリークの再始動作「A Dotted Line」と、天才、異才、鬼才振りを遺憾なく発揮し続けて来たクリス・シーリーですが、いよいよその本丸パンチブラザーズの最新作です。フルアルバムとしては4枚目。これがブルーグラス部門ではなくアメリカーナ部門にノミネートされる辺りに、パンチブラザーズの立ち位置が伺い知れますね。マンドリン、バンジョー、ギター、ベースという編成はやはりブルーグラスな訳ですが、まるで室内楽のように美しく、プログレのようにスリリングで、それでいてとてもロマンチックだったりもする。いきなり10分越えの「Familiarity」に始まり、軽やかに絡み合う弦の音色が美しい「Passepied (Debussy)」、ポップソングとしても魅力的な「I Blew It Off」、ロックなグルーヴが炸裂する「Magnet」、ブルーグラス・バンドの面目躍如な「Boll Weevil」などなど。各人の超絶技巧とそれを纏めるアレンジが素晴らしいのはもちろん、歌心に溢れる楽曲と巧みなコーラス・ワークにも惹かれます。プロデューサーはT・ボーン・バーネット。ドラムスでジェイ・ベルローズも参加しています。


対抗はエミルー・ハリスとロドニー・クロウェルのデュオ作となりそうですが、そちらについてはまた後日。また元ドライヴ・バイ・トラッカーズのギタリスト、ジェイソン・イズベルによる5枚目のソロ作「Something More Than Free」も気になります。この人の飾らない篤実な南部フィーリングは素晴らしいですね。そしてエモな歌声とオルタナティヴな感性が魅力のシアトル出身の女性シンガー・ソング・ライター、ブランディ・カーライルの5作目「The Firewatcher's Daughter」。さらにアメリカーナと呼ぶにはあまりにもラテン色が強いながら大変興味深い存在ではあるマーヴェリクスの最新作「Mono」がノミネートされています。

アメリカーナと一口に言っても、なかなかヴァラエティに富んでますね。

グラミー賞 ノミネート『BEST BLUES ALBUM』

2016-02-07 21:51:34 | ブルース
Buddy Guy / Born To Play Guitar

いよいよグラミー賞授賞式が近づいてまいりました。主要4部門を誰が受賞するのか?各方面で予想など騒がしくなってきましたが、「ルーツな日記」的に気になるのは、もっともっと奥の方。例えば『BEST BLUES ALBUM』部門とか。という訳で『BEST BLUES ALBUM』部門、ノミネートは以下の5作品。

Cedric Burnside Project / Descendants Of Hill Country
Shemekia Copeland / Outskirts Of Love
Buddy Guy / Born To Play Guitar
Bettye LaVette / Worthy
John Primer & Various Artists / Muddy Waters 100


なんだかんだで注目はバディ・ガイ。もうすぐ80歳になろうとしているとはとても思えない、生命力に溢れたブルースを聴かせてくれます。ギターの暴君ぶりはもちろん、歌声も衰え知らず。脂ぎったブラック・フィーリングにロックな勢い、そこに年齢を重ねた渋みが良い塩梅に加わり、バディにしか成し得ない豪腕ブルースを生み出しています。ギタリストとして一生をブルースに捧げるような人生を振り返る「Born To Play Guitar」に始まり、ZZトップのビリー・ギボンズと共にロックする「Wear You Out」、キム・ウィルソンのハープが疾走する「Too Late」、ジョス・ストーンとのスウィンギーなデュエット「(Baby) You Got What It Takes」、ヴァン・モリソンを招きB.B.キングに捧げた「Flesh&Bone」などなど、要所要所に魅力的なゲストを配しながら、全てを飲み込むようなバディ・ガイのギターとその歌声は、まさに人生をブルースに捧げたリヴィング・レジェンドの存在感。またその破格なエネルギーを、太く躍動感溢れるボトムでがっつり支えるプロデューサー、トム・ハンブリッジのサウンド・プロダクションも流石です!! 今回受賞すれば、おそらく2010年の「Living Proof」以来、7個目のグラミーとなるはず。


対抗は、マディ・ウォーターズ生誕100年を記念したトリビュート・アルバム「Muddy Waters 100」でしょうか。こちらは歴史あるマディ・ウォーターズのバンドの最後のギタリストだったジョン・プライマーを中心に、ジェイムズ・コットン、ボブ・マーゴリンというマディ・バンド卒業生の他、ビリー・ブランチ、ケブ・モ、ジョニー・ウィンター、デレク・トラックス、ゲイリー・クラーク・JR.などなど、多彩なゲストが参加。それでいて散漫にはならず、まるでマディ・ウォーターズの魂ここにあり!と感じさせられるような、太く濃い、一本の筋の通った力作であります。

そして前作に引き続いてのノミネートとなるシェメキア・コープランド 。故ジョニー・コープ ランドの実娘という出自も折り紙付きの彼女は、グラミー受賞で名実共に新たな「ブルースの女王」となるか? いやいや、ベテランさんも黙ってはおりません。今年の1月で70歳になったベティ・ラヴェット。ジョー・ヘンリーのプロデュース作「Worthy」ではディラン、ビートルズ、ストーンズのカヴァーなどを、旨味たっぷりの激渋な声で歌っております。さらにノース・ミシシッピ・ヒル・カントリーの今を伝えるセドリック・バーンサイドのノミネートも嬉しいですね!!

そそるライヴ 2月編

2016-02-07 10:30:06 | そそるライヴ
関東近辺にて2月に行われるライヴ、フェス、イベントのなかで、気になるものをピックアップしてみました。

2/03(水)J-WAVE 上原ひろみ『SPARK』PREMIUM LIVE @ヤマハ銀座ビル6F コンサートサロン(要招待券)
2/03(水)THE PEE WEE ELLIS FUNK ASSEMBLY @丸の内 コットンクラブ
2/04(木)NEW ORLEANS MARDI GRAS in TOKYO featuring CHA WA @ブルーノート東京
2/08(月)<文春トークライブ>上原ひろみ @紀尾井ホール
2/11(木)ROY AYERS UBIQUITY @ブルーノート東京
2/12(金)Bitty McLean With Home Grown @代官山 UNIT
2/15(月)José James @ビルボードライヴ東京
2/18(木)上原ひろみ『SPARK』発売記念スペシャル・イベント @東京都内某所(要招待券)
2/19(金)JOHN TROPEA BAND @ブルーノート東京
2/19(金)A.J. CROCE @丸の内 コットンクラブ
2/20(土)Al McKay Allstars @ビルボードライヴ東京
2/21(日)KOOL & THE GANG @ブルーノート東京
2/22(月)Macy Gray @ビルボードライヴ東京
2/27(土)バイユーゲイト10周年FEST! @吉祥寺 club SEATA




お出かけの際は事前のご確認をお願いいたしま~す!