徒然地獄編集日記OVER DRIVE

起こることはすべて起こる。/ただし、かならずしも発生順に起こるとは限らない。(ダグラス・アダムス『ほとんど無害』)

心の居留地/「スモーク・シグナルズ」

2005-12-19 05:38:32 | Movie/Theater
スモーク・シグナルズ 
SMOKE SIGNALS
1998年/アメリカ
監督:クリス・エアー
原作・脚本:シャーマン・アレクシー
出演:アダム・ビーチ、エヴァン・アダムス、アイリーン・ベダード、ゲイリー・ファーマー/他
<ネイティブ・アメリカンの映画人が監督・脚本・主演を手掛けた歴史上初の作品。1998年、22歳のビクターは10年前に母と自分を捨てた父を憎んでいた。そんなある日、彼は今まで何の連絡もなかった父が、遠くアリゾナの地で死んだという知らせを受ける。遺灰の引き取りを拒むビクターだったが、幼なじみの“火をおこす”トーマスに説得され、2人は生まれてはじめてアイダホの居留地を出て旅立つ。>

「インディアン、嘘つかない」という言葉は、「ゲルマン魂」ぐらい眉唾な日本語なのだけれども、この映画のインディアンは嘘をつく。いや、インディアンに限らず、登場嘘に固められて真実は何重にもコーティングされている。それが90年代の居留地に住む若者の屈折した現実なのだろうし、アメリカのインディアン(ネイティヴ・アメリカン)に限らず、いつまで経っても真剣に人生に向き合わず、笑って誤魔化しながら現実を先送りにしているような人間にも通じる。ま、“居留地”の方がぬくぬく生きやすいという言い方もできるし。(現実的に定義などできないが)ニートの在り方なんて、まさにコレと同じような……。

嘘や屈折した感情にコーティングされてしまった父親の真実を一枚一枚剥いで行くような、若きネイティヴ・アメリカンのロードムーヴィー。少々消化不足なエピソードが観られたけれども、90分ほどの映画なので、テンポよく展開していくのは好印象。投げ出された問いかけに答えはない。