徒然地獄編集日記OVER DRIVE

起こることはすべて起こる。/ただし、かならずしも発生順に起こるとは限らない。(ダグラス・アダムス『ほとんど無害』)

塩崎さん

2008-06-04 03:24:37 | LB中洲通信2004~2010
昼過ぎから『極道記者』『止まり木ブルース』の競馬記者・塩崎利雄さん取材。昨年秋に刊行した『実録極道記者 競馬無頼、7億賭けていまだ懲りず』が滅法面白く、丁度ダービーも終わったことだしお話を伺ったのである。

週末の夕刊紙はゲンダイと決めてからずいぶん経つ(ウィークデイは東スポと併読)。毎週土曜に掲載されている『止まり木ブルース』で健坊一家の物語を読み続けて20年、とまではいかないが、断続的に15年程度は経っている。そして、オグリの有馬記念でピークを迎えた競馬ブームの直後に、<日本のギャンブル小説・ピカレスク小説の傑作>と評価された『極道記者』が白夜書房から復刊され、間もなく当時役者として最高に脂の乗っていた時期の奥田瑛二と望月六郎監督によって映画化もされた。映画を観た一年後ぐらいに映画版の脇で出演していた役者さんを酒場で見つけ、一方的に熱く語ったのも懐かしい(名前は忘れちゃったけれど)。『極道記者』は70年代で、『止まり木ブルース』の連載がバブルを彷徨いながら加速していたのは80年代末から90年頃で、もうそれから15年以上経って、競馬の世界もいろいろと変わってしまったのだろうけれども、それでも健坊一家や留公たちは北品川の小さなバーの止まり木で生き続けている。

取材の最後に「止まり木ブルース」の生原稿も見せていただいたのだけれども、手書きで読みやすい<記者>の原稿だった。これだけで感動してしまうのである。だからこそ感動したのかもしれない。塩崎さんがこっち側に踏み止まっているのがちょっとだけわかったような気がした。
40年以上に及ぶ塩崎さんの記者人生はまだまだこれからも続く。その理由を2つほどお聞きした。書けるかどうかわからないけれども、これもまた非常に<漢>を感じさせるものだった。
8月号特集です。

敵か?味方か?/「ソ満国境2号作戰 消えた中隊」

2008-06-04 01:28:10 | Movie/Theater
ソ満国境2号作戰 消えた中隊
1955年/日活
監督:三村明
脚本:菊島隆三、黒澤明
出演:辰巳柳太郎、河村憲一郎、石山健二郎、島田正吾、島崎雪子
原作:井手雅人(「池の塩」)
<ソ連と国境を挟む北満州の小村を舞台に、偶発的な発砲事件によって悲劇が引き起こされる。昭和16年、黒竜江を挟んでソ連領と対峠する関東軍の国境監視部隊に香川大尉(辰巳)が赴任する。上層部が対ソ開戦を誘発しようと密談するのを聞いた香川は、その企てに引き込まれる。そんな中、国境で発砲事件が起き…。>
日本映画専門チャンネル

「敵か?」
「味方だ!」
満ソ国境を監視する国境監視部隊に関東軍の砲弾が撃ち込まれる。“反逆罪”に問われた岸中尉が目を見開いて望遠鏡を覘いていた監視台にも、ギャグ漫画のように砲弾が直撃する。こうして部隊はあっさり“消されてしまう”。
彼らはなぜ消えなければならなかったのか?

日本映画専門チャンネルの<没後10年特別企画 脚本家 黒澤明の仕事>、「ソ満国境2号作戰 消えた中隊」。満ソ国境を監視する関東軍国境監視部隊に赴任してきた、生真面目な香川大尉(辰巳柳太郎)。香川大尉は、現地の人々とゆるーく交流する岸中尉(河村憲一郎)と国境監視部隊を苦々しく思いながら、あるとき独ソ開戦の報を聞いた関東軍(の一部)上層部の密談を聞いてしまう。彼らは「独断専行あるのみ、責任を問われたら腹を切るべし」と、満ソ国境でノモンハン再現の絵図を描く。このとき昭和16年6月、まだまだイケイケなのである。
関東軍の冷徹な現実と、中隊と現地民の交流、慰安婦たちの(楽天的な?絶望的な?)逞しさが、対照的に描かれる(特に前半はゆるい国境監視部隊と生真面目な香川大尉のやりとりがユーモラスに描かれる)。
悲劇は中間管理職のように苦悩する香川大尉。そして……。

「敵か?」
「味方か?」
ふたつの現実に挟まれた生真面目な理想主義者は、廃人のようになるしかない。
この映画で描かれる、彼の、そのエレジィが感じ取れない人は不幸だ。
そういう人って、
「敵か?」
「味方か?」
って問われたときに、きっと平気でいられる人なんだよネ。

満州浪人の島田正吾が香川大尉の辰己柳太郎に自決を促すシーンが見所か。

<6月放送作品>
戦国無頼(1952年)
ソ満国境2号作戰 消えた中隊(1955年)
あすなろ物語(1955年)
日露戦争勝利の秘史 敵中横断三百里(1957年)
殺陣師段平(1962年)
ジャコ萬と鉄(1964年)
姿三四郎(1965年)
雨あがる(2000年)
海は見ていた(2002年)
ジャコ萬と鉄(1949年)
殺陣師段平(1950年)
どら平太(2000年)