徒然地獄編集日記OVER DRIVE

起こることはすべて起こる。/ただし、かならずしも発生順に起こるとは限らない。(ダグラス・アダムス『ほとんど無害』)

2010年が終わらない

2011-01-13 04:49:39 | SHIMIZU S-Pulse/清水エスパルス06~10
ドラスティックな変革を迎えた清水。12日、ついに健太エスパルスを支えた両翼の移籍が発表された。
早い時期から噂が出ていた淳吾、12月に入って名前が挙がり、まさかとは思っていた兵働、そしてこの一週間ほどで急に具体的になった一樹。まず一樹の場合はこの変革(チャレンジ)の時に、この決断をするというのがまったく意味不明で、理解に苦しみ、呆れもしている。
淳吾は……天皇杯決勝後にゴール裏と口論をする姿をYOU TUBEで観てこれも呆れてしまった。いくら理由があったとはいえ、ちょっとお話にならない。
問題は昨季のキャプテンを務めた兵働だ。スポーツ紙の移籍報道に対して「ガセ」と話したという情報もあり、天皇杯の勝ち上がりで、そして決勝前後のコメントでも残留のニュアンスを残していた。しかし移籍コメントやブログを読む限りでは予想以上に早い段階で決断していたようで、決勝直後(しかも終了直後だ)の報道で感じたように、キャプテンからしてこれではゲーム前からチームはすでにバラバラだったのではないかと改めて思ってしまう。フロントの問題を指摘する声もあるが(そして憶測の域は出ないが、それは何となく理解できる)。

定型文でいくらでも綺麗事は言える。彼らはコメントで揃いも揃って<成長>を口にしている。
しかし彼らはリーダーだった健太の下で、最後まで紳士だったフローデの下で、寡黙な兄貴分だったテルの下で、西部の下で、そして圧倒的なスターだった伸二の下で、このチームで求められていたような<成長>はできなかったのか。これは他サポが煽り気味に言う<逃亡>ではない。自分が本当にチームの矢面に立たなければならない局面で無責任にも<逃げた>としか思えないのだ。現時点では。もちろん彼らにも、清水エスパルスで何も成し遂げられなかった挫折感はあるだろう。健太がチームを去るという、チームのひとつのサイクルの終わりも自覚しているだろう。しかし、それにしても、である。特に兵働については(半ば覚悟していたとはいえ)予想外だったし、残念としかいいようがない。
今週中にSの極みで彼のインタビューが掲載されるらしい。移籍話はまたそれを読んでから改めて。
2010年シーズンはまだ終わらないなァ…。

藤本淳吾選手 名古屋グランパスへ完全移籍決定のお知らせ
兵働昭弘選手 柏レイソルへ完全移籍決定のお知らせ
原一樹選手 浦和レッズへ完全移籍決定のお知らせ

ちなみに彼らが去った後の戦力についてはまったく悲観はしてません。悪しからず。

(1月14日追記)
Sの極みのインタビューを読んだ。
イチやテル、西部の話をするならば、要するに「清水というクラブを支える気がない」ということだろう。
君は一体清水で本当に「成長」してきたのか、訊きたいものである。

金の話をするならば、スポンサーに限界がある以上、やはりこのチームはタイトル(賞金)を獲るしかなかったのだ。「優勝を目指すがギャラが上がるので優勝しない方針」はかつて強化部長の口から漏れた、悩ましい清水の現状なのだけれども(これはこれで、サポやファンを馬鹿にした実に腹立たしい方針なのだが)、少なくとも、タイトルを獲ったのならばクラブと交渉する資格はある。夏過ぎから交渉を始め、12月の柏からのオファーを受けるまで悩み続けても仕方がない。しかしタイトルは獲れなかったのだ。
君はプロスポーツの世界に生きる男ではなく、結局サラリーマンだったのか?
とても「ありがとう」等と言える心境にはなれない。流行りの0円移籍で、この男は何も残さずチームを去る。

タイトルを獲り続けることで、勝ち続けることで、賞金を稼ぎ続けることで、チーム、そしてクラブの求心力を維持し続ける鹿島アントラーズは本当に素晴らしいクラブだと思う。いや、マジで。
健太のチームもそうなるべきだった(なれる可能性はあったと思う)。
そうなっていたら、こんな呆れた事態にもならなかっただろうし、情けない話を聞くこともなかっただろう。
今季、ゴトビ監督が率いる清水は本当にチャレンジするチームに「変わる」だろうよ。
このチームが一番「成長」できて、「チャレンジ」できるチームだと信じている。
そして、そこで、本物の男(プロ)が育ってくれることを願っている。

あ、具体的には書かないけど静岡県の抱えている危険性を理由に移籍を決断したのならば兵働さんに謝罪する用意はありますよ(笑)。

欲求不満のナビゲーター/「ブラインドネス」

2011-01-13 03:32:23 | Movie/Theater
ブラインドネス
Blindness
2008年/カナダ=ブラジル=日本
監督:フェルナンド・メイレ
出演:ジュリアン・ムーア、マーク・ラファロ、伊勢谷友介、木村佳乃
<突然、視界が真っ白になって失明する伝染性の奇病が世界中で蔓延。一切の介護もなく精神病院に強制隔離された患者たちは…。F・メイレレス監督による震撼サバイバル・パニック・サスペンス!ノーベル賞作家ジョゼ・サラマーゴの寓意に満ちた傑作小説『白の闇』を「シティ・オブ・ゴッド」「ナイロビの蜂」の俊英監督が映画化、極限状況下に置かれた人間たちが本性をむき出しにする熾烈なサバイバル模様を描いた衝撃作。>(シネフィルイマジカ

と、解説を読んでしまうとパンデミックネタのパニック・エンタテイメントのようにも見える。事実、ネット上のレビューはこの手の宣伝文句に釣られて観てしまったであろうレビュワーの恨み節の嵐。賛否両論は当たり前、それだけ物語の設定がキャッチーなんだと思う。前提として<謎>の解明やヒーロー、ヒロインの活躍で<奇病>が解決するような展開を望んでいると完璧に肩透かしを食らう。
しかしそれは主題ではないので仕方がない。作品では誰もが<謎>から逃れることができないのだ。むしろ、観る者を終始イラつかせる<唯一目が見える主人公>はストーリーを判り易くするためにナビゲーターとして設定されたのかとも思える。彼女は<世界>を救う神ではなく、愛する旦那に寄り添う人間でしかない。ということで、彼女の何がイラつかせるかといえば、<唯一目が見える>くせに、憤りながらも感染者の凌辱や暴力をただ受け入れてしまうから。しかし彼女は結局何もできないのだ。<唯一目が見える>からこそ、彼女はこの暴力に溢れた<世界>では、圧倒的に孤独で、ヒロインにもなれずに、無力感を味わうだけのナビゲーターになるしかない。
それは結局観客と同じ視点なのだ。何もできない彼女は、<目が見えない>感染者だらけの<世界>でイライラし続ける。

前半は理不尽に隔離された施設での陰湿で破滅的、エゴ剥き出しの密室(隔離)劇がこれでもかと描かれる。そして後半、<解放>された感染者は、既に破滅してしまっていた本当の世界でゾンビのように廃墟の町を徘徊する。そのまんま、誰もが思い浮かべるであろうロメロ的なゾンビ描写。
描かれるのは破壊と再生。オレは、解放までぐいぐいストレスを溜めた挙句の、唐突な再生のラストシーンで鳥肌が立ってしまったクチなので全然オッケー。ジュリアン・ムーアと同化しました。
ただし最初に再生するのがあの人というのは何だかなあとは思うがw
あと木村佳乃の脱ぎっぷりの悪さを批判していた人がいたけど、完全に同意です。

原作も読んでみたい。