徒然地獄編集日記OVER DRIVE

起こることはすべて起こる。/ただし、かならずしも発生順に起こるとは限らない。(ダグラス・アダムス『ほとんど無害』)

なぜ彼らは“若さ”を言い訳にしないのか/第34節 大宮戦

2012-12-03 02:08:08 | SHIMIZU S-Pulse/清水エスパルス11~14


土曜日は日本平で今シーズンのリーグ最終戦大宮戦
かたや11月の4連敗によってリーグ戦の“可能性”をすべて失ってしまった清水。こなた例年通りの残留ラインのコントロール役をきっちり果たして前節残留が決定した大宮。今シーズンはガンバが巻き込まれているだけに残留争いが例年以上に注目を集めている。
ざっくり言うと、まるっきり消化ゲーム以外の何ものでもない。
そうなると、このゲームは自分たちとの戦いになる。どういうテーマを設定してこのゲームに臨むのか。
大宮のチョヨンチョルは「両チームともミスが多くて、パスがつながらなかった」とは言うが、ゲームの主導権は、後半30分過ぎを除けば、どう見たってほとんど清水が握っていたのは間違いがない。大宮の人たちには悪いが、格は確実に違っていたと思う。
ちなみにチョは「グラウンドが濡れてたのもミスの原因になったと思います。アップのときは濡れてなかったのに、始まってみたら濡れててボールがすごくすべった。いつもだったらつながるパスがつながらなくて、ストレスのたまる試合でした」というが、高速パスワークを活かすために雨が降っていなくてもゲーム前やハーフタイムに散水するのは日本平の恒例で、そんなものは大宮のスカウティング不足というものだろう。
ピッチの状態が悪いのを有効利用するチームがほとんどの中、日本平は管理の行き届いた最高のピッチを最大限に活かしているのである…と勝ったのならば(キリッと誇ることもできたのだろうが、またしても「内容は悪くないが」という結果になった。
ということで後半30分過ぎあたりからのスタンドは野次が怒号に変わりはじめ、実に雰囲気が悪かった。ある意味、花試合ともいえる最終節なのに、だ。

アフシン「それは選手たちがミスをしたくない、ミスを恐れてしまうという点が出ていたと思いますが、そこはまだ若さがあるからだと思います。チームでボールを回すということ、そして片方のサイドで詰まったときは、ボールを下げてまたサイドを変えていく。ただ、それは前にボールをつなぐという意図を持って下げるようにしています。しかし、多くのポジションにはまだ新人の選手が多く、プレッシャーがかかると力を抜いてプレーできないのかもしれません」(J's GOAL 12月1日付

アフシンは「100%のプレー(パス)」を求める。それはリスクマネジメントに他ならないのだけれども、矛盾するようだが、その一方である程度のリスクを負ったチャレンジがなければゲームを動かす両輪にはならない。今シーズンのベストゲームのひとつであるホーム鹿島戦は確実にそれができていた。このチームは状態さえよければそれができるチームだと信じて疑わないのだが、現状のように“ワンタッチ”と言いながらリスクを避けるための手数の多いパスを繰り返していてはゲームは動かない。悪いことにミスも増える。一見ゲームの主導権を握り、コントロールしているように見えて(事実大宮にはカウンターしか“手”はなかった)、実はその「100%」のはずのパスにミスが頻発してしまうのは、やはりリスクを恐れるメンタリティが抜け切っていないからではないか。
チャレンジした上でのミスならばスタンドだって納得するだろう。例えアフシンが怒ろうがスタンドは擁護する。リスクを恐れた上でのミスだからスタンドから怒声が上がるのだ。チャレンジには拍手で応えるし、それでも野次るような馬鹿にはそれをかき消すような声援で応えよう。
そんなときの“若さ”は言い訳にしたって構わない。リスクを恐れたり、ミスを若さの言い訳にするのではなく、チャレンジを若さの言い訳にして欲しい。むしろ言い訳にしろと言いたいのだ(本人が言わなくたってオレが書く)。

ベルデニック(大宮)「今日はリーグの中で一番アグレッシブなチームと対戦したと思っています。そういう相手に対してはクイックにプレーすることを選手たちには試合前に求めていましたが、(中略)なかなか自分たちの思うような形には持って行けませんでした。タッチ数が多くなり、相手のプレッシャーを受けることで、我々が勝利をたぐり寄せるような状況になりませんでした」(J's GOAL 12月1日付

要するに清水は、アグレッシヴなチェイスや高速パスワークはある程度できていたものの、シンプルで大胆な展開に欠けたという意味では大宮同様“タッチ数が多”かったんだよなァ…と思う。
スタンドが盛り上がったのが、サポーターに熱くアピールし盛り上げ続けたキャラのロングスローだけというのでは寂しい。
川崎戦に続いて勝たなければならなかった内容だったと思う。

清水、新潟、大宮はオレンジ互助会と呼ばれる。この対戦はほぼ毎回、焦れるような展開でエンタテイメント性に欠けるゲームになる(見方によっては実に熱いゲームなんだけれども)。今シーズンの新潟の残留はやっぱり、どう考えたって清水戦の勝利が大きかったよなあ、とつくづく思う。本当にオレンジ互助会だ。

ゲーム終了後は拍手の少ないセレモニーになった。思ったよりは野次は少なかったけれども、ちょっとした寒々しさが漂っていたのは事実だろう。それでも、やっぱり社長やアフシン、浩太が「天皇杯」という言葉を口にしたとき、オレは拍手せずにはいられなかった。これだけいろんなことが起こったシーズン(今年も!)に、やっぱり何も残らないなんて我慢できるわけがない。
シーズン振り返りは天皇杯終了後。
オレたちには元日の国立に立つべき理由がある。