行成薫の『名も無き世界のエンドロール』を読んだ。小説すばる新人賞受賞作。
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幼馴染の城田とマコト、そこに小5の時に転校してきたヨッチの3人は大の仲良しだった。20歳の時、城田とマコトの勤める板金屋に派手な女が犬を轢いて損傷した赤い高級車の修理を依頼に来る。派手な女は金持ちの令嬢でモデルのリサ。この時からリサに近づくためのマコトの「プロポーズ大作戦」がはじまる。
城田の一人語りのこの作品だが、ヨッチの語りの短編「ポケット」も収録。
この作品のポイントは時系列を入れ替えて語られていることで、それがすべて。そこに著者のミスリードが隠されていて、ちと騙された感がある。有名な映画のセリフがやたらと出てくるのがけっこう好きだ。まずまず面白くて一気に読了。以下思いっきりネタバレを含むので未読の方は読まないように。
なんだか違和感を感じつつも、ミスリードに引っかかってしまった。「プロポーズ大作戦」はマコトがリサにプロポーズする計画に見えるように時系列を入れ替えたのが著者の戦略だが、真相は次の通り。マコトがヨッチにプロポーズする予定のクリスマスイブ、ヨッチは信号無視した車に轢かれて亡くなる。自分の勤める板金屋さんに修理依頼に来たリサの車の塗装でヨッチを轢いたのはリサだと確信。「プロポーズ大作戦」はリサへの復讐計画だった。
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