ミセスローゼンの上人坂日記

ゆるゆると逃ぐる蜘蛛ある夜長かな


アメリカ大統領選は十一月。九月は角川俳句賞落選の時だ。たいてい選考会は八月末に行われるようで、九月一日までに連絡なければ落ちた、ということなのだが、その実際は、遥か夏の初めの予選段階で落ちているのであり、夏の間わくわく楽しみにしていた私ら、あるいは俺らって何?というスカタンの衆の生まれる季節なんである。三十代の私は野心、虚栄心、自己愛に塗れるあまり、落選を知って顎が外れる程驚いたものだが、五十の私はありがたいことに微笑んで落選を楽しむ余裕がある。マジで。というのも、身内贔屓で申し訳ございませんが、我が姉、うちの組長、夏井いつきの口癖である「チーム裾野」という言葉を知ってから、この余裕は生まれたような気がする。
俳句界のチーム裾野の一員であると自己認識した瞬間、世界がどっしりとはまるところにはまった、そんな安心感を覚えた。うまい俳句を作って認められることより、いい俳句を一年に一句でも世に送り出すこと、またいい俳句をがんがん世に送り出す人を応援すること、それが私の分相応であり、それ以上頑張らなくてもいいのであり、それってとってもスペシャルなミッションなんである、世界レベルで未来の地球や子供や大人や老人の幸福を鑑みれば! だからこの時期、桜紅葉の最初の黄色い一葉を見る頃、落選! Good Job Everyone! チーム裾野よ、keep going! と落選した全ての人と連帯しつつエールを送ることが楽しい。俳壇賞と飯田龍太賞も〆切すぐだしね。
余談だが、ご家庭で作るソース焼きそばに豆板醤と醤油を混ぜるとスパイシー中華風になる。野菜炒めにも、チャーハンにも、冷奴にも、納豆トーストにもいける、豆板醤は料理のチーム裾野だ。
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