国際結婚して一番のカルチャーショックは、毎日洗濯をせぬ事。老夫婦二人だと二週に一度するか、しないか。でも楽だから、すぐ慣れた。次に愕然としたのは、薄暗い卓で食事。例えばこないだも、「日が短くなったねえ。」とニックが言って、「そうねえ」と私が立って、香川京子のやうに台所からご飯や汁や漬物を取って来て並べ、食卓の上の電灯をぱちんとつけた。途端にニックが紐をチョンと引いて、電球二個点いてるのを一個にした。ひどい時はチョンチョンと二回引き、豆球にする。こんな薄暗い所でぼそぼそ食う飯まずい飯。心の中で、秋灯を明うせよ、秋灯を明うせよ、と立子の如く叫ぶ。最初にこれやられた時はいい方に考えて、ロマンチックがいいのかな? とキャンドル一杯テーブルに持って来たら、明る過ぎる、と叱られた。ニックの理想の夕餉は、ゴッホの「馬鈴薯を食べる人たち」。私の理想は、蛍光灯が明々と、すき焼きがグツグツと、皆でドリフ見ながら、生卵お代わり下さい、みたいな。
七年暮らしてやっと、暗い灯下で食べるラムチョップやジャガイモは成る程ヨウロップ的でよろしく、目刺しと漬物と豆腐の汁を暗がりで頂くのもまた侘び寂び、と慣れて来た。
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