北大の間宮さんから、Jeroen Jansz and Peter van Drunen (2004) A social history of pychology. (Blackwell Publisher)という本を教えてもらい、さっそく心理学の図書館で借りた。中世から現代までの心理学の歴史を、子どもと養育、狂気と精神的健康、仕事、文化のエスニシティ、非行と法律、社会的志向性のトピックスで論じています。社会歴史的発展のなかでの心理学の歩みを紹介している本だ。もともとオランダ語で出版された歴史心理学のテキストを、授業で使うなかで内容を精錬させてきたと序論に書いてあった。
Janszの学位論文Person, self, and moral demands.も所蔵されていたので合わせて借りてきた。この本も社会的・文化的な変化と人間の意識との関係を検討しようとしている。socialではなく、societalという用語を使っているところや、社会構築主義が個人の主観に重きを置きすぎているという批判に、独自性を感じた。
もう一つ、Kempというニュージーランドの心理学者が書いたMedival psychologyという本も見つけた。現代心理学が個別機能をバラバラに理解しようとしているのに対して、中世の心理学が人間を全体的にとらえる視点をもっていたと述べている。
3冊の本をパラパラと読んでいたら、再び、間宮さんから次のようなメールをもらった。
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昨日送信して帰宅してから、中井さんのまったくの新刊であるエッセイ集『時のしずく』(みすず書房)を読んでいたら次のようなくだりに出会いました。「ボランティアとは何か」という1998年の作品です。
「ベルギーのルーヴァン大学を中心とする新トマス主義のカトリック哲学は、『自己』を『他者からの贈り物』とするそうだが、この考えは、私にはどこか真実さが感じられる」(p115)
何かにつけてオランダやベルギーが登場する中井精神医学ですが、これは、「良心」と「自己意識」にかかわる議論の展開のなかに出てきました。
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このことをレンズさんに話してみた。ちょっとだけ関心を示したように見えた。今回は、話題提供にとどまったが、また別の機会に、ラテン語やギリシャ語を学んできたカソリック教徒であるレンズさんの心理学のなかに、どのように宗教・哲学が具現化しているのか、質問を準備して尋ねてみたいと思う。