ロック探偵のMY GENERATION

ミステリー作家(?)が、作品の内容や活動を紹介。
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ウクライナ戦争開始から2年

2024-02-24 22:13:48 | 時事

ウクライナ戦争がはじまって、今日で2年が経ちました。

ウクライナ側の反転攻勢もうまくいったとはいいがたく、戦線は膠着。厭戦ムードは漂っているものの、今のところ、両者とも矛をおさめる様子はなさそうです。


国際社会から支援を受けているかぎり、長期化すればウクライナが有利――とこのブログではいってきました。それは、基本的に変わりません。しかし、このところ、国際社会からの支援という前提条件が、だいぶゆらいできています。おもにアメリカの国内事情が原因ですが……トランプさんが再び大統領になれば、これは決定的な一打となりえます。アメリカからの支援が途絶えてウクライナがほぼ自力で戦うとなれば、じりじりと押し込まれていくのは自明です。そういう意味では、今年あたりが、いよいよ正念場ではないでしょうか。


私の個人的な見解としては……これも前からいっていることですが、いったん停戦したうえで、政治的プロセスでロシアの領土的野心をあきらめさせるという方向で考えたほうがよいのではないかと。
それはきわめて困難だという批判があるでしょうが、では軍事的プロセスだったら困難ではないのかという話にもなってきます。いずれにせよ困難であるなら、まだしも非軍事的なプロセスによったほうがよいのではないでしょうか。



文芸の世界にも忍び寄るAIの影……

2024-01-22 22:28:15 | 時事


先日芥川賞が発表されましたが、九段理江さんの受賞作「東京都同情塔」が、AIの生成した文章を使っているということでも話題になっています。
もっとも、作中で「AIの生成した文章」として出てくるのであって、小説としての文章自体をAIで書いたわけではないということですが……しかしやはり、小説の執筆にAIが使われ、それが芥川賞を受賞したということには、さまざまな議論が持ち上がっているようです。

この種の話は、ここ数年よく聞くようになりました。

昨年は、手塚治虫『ブラックジャック』の新作や、ビートルズの新曲がAIを援用して制作されるという話があり、このブログでも取り上げました。

実際のところ、AIはどうなのか……

最近、興味深い記事を読みました。

それは絵画に関する話なんですが、人間は、AIの描いた絵画を人間が描いたものよりも低く評価する傾向があるというのです。
AIが描いたものであるということを知らなくとも、です。
AIが描いたということを事前に知らされている場合それを見た人間がある種の忌避反応を示すことは、種々の研究ですでに知られているそうですが、この実験は、AIで描いたものと人間が描いたものを混ぜて提示し、その反応を確かめました。すると、AIが描いたものは総合的に低く評価されたというのです。つまり、AIが作ったものは、人間が作ったものに比べてどこか物足りない……のかもしれません。

しかし、昨年はそれに反するような話もありました。

写真コンテストで、AIの作成した写真が最優秀賞をとってしまったという話です。
問題の写真を出品したボリス・エルダグセンは、AI生成画像であることをあきらかにして受賞を辞退しましたが、この件はクリエイティヴ方面に大きな波紋を広げました。AI生成画像が賞をとってしまったということで、「所詮AIで作ったものには魂がこもっていない」みたいなこともいえなくなってしまったと……

しかし、これに関しても、案外ちょっと違う解釈ができるのかもしれません。
というのは、この手の賞の選考は、主観的、直観的な評価とは別に、ある種の技術論的評価が含まれているんじゃないでしょうか。〇〇の技術が使われるところが評価できる……みたいなことです。写真にかぎらず、こういったものの選考では、ある程度の客観性を担保しようということでそういう尺度がもちこまれるでしょう。で、AIが学習によって生成した画像は、そういう観点で評価されたときに点数を稼げるポイントをきっちりおさえていたんではないかと。おそらく問題のボリスさんは、「賞をとれるような写真」という指示をAIに与えて画像を作らせたのだと思われます。そうすると、AIは過去の受賞作を学習して「点数をとれるポイント」を見抜き、そういう要素をふんだんに盛り込んでくる。選考委員たちも、主観的にはそんなにいいとも思えないけれど、全体の構図に10点、露光の具合に10点……みたいな感じで採点していくとものすごい高得点になったから、最優秀ということになった、と。あるいは、そういうものをなくして、純粋に主観・直観で判断すれば、AIの作った作品は「なんか違う」と思わせるものになるのではないか……
つまり、結論としては、AIの生成するものは、点数稼ぎはできるけれど、魂はこもっていない、と。
もちろんこれは、ある種の生気論に近いものかもしれません。それに、現状そうであったとしても、将来には主観的評価でもAI生成作品が人間を凌駕するようになるのかもしれません。
しかし、やはり人間は機械にはどうやってもできないことができるんじゃないか……半ば願望交じりに、そう思います。



松本人志さん性加害問題について

2024-01-19 22:11:47 | 時事


松本人志さんの性加害報道の余波が広がっています。

松本さんや吉本興業サイドは事実無根としていますが、その「事実」がどこからどこまでを指すのかが曖昧であり、この二、三週間で、早くもその点でほころびが見えはじめているのが実態でしょう。もちろん現時点で断定的なことはいえませんが、女性を集めての飲み会が行われていたこと自体は事実のようです。そして、密室で何が行われていたかは第三者にはわからないということであれば、事務所側が「当該事実は一切ない」と言い切れる根拠がどこにあるのかという話になってきます。

そして、問題は松本人志さん一人にとどまらず、その後も文春砲が立て続けに火を吹き、芸人たちの「自粛ドミノ」が広がっていくのではないかと懸念されているということです。

ことここにいたってくると、どうしてもジャニーズ問題とオーバーラップしてきます。
問題の構図には相違点も多々ありますが……つまりは、ある一人の人間が強大な権力をもってしまい、周りがその行いを制止したなかったために、広く、かつ深刻な問題になってしまったということでしょう。問題となる行為がはじまったときに誰かが止めておけば、その時点で数人の芸人が活動休止に追い込まれるぐらいで済んだかもしれない(業界側から見れば)のに、止めなかったがために、お笑い界全体に幅広く影響が出かねないという……

ここから得られる教訓は――それにふさわしくない人間が権力をもってしまい濫用し始めたら、まわりはただちにそれを止めなければならない。止めなければ、どこかで必ず大きな問題を引き起こす。先になればなるほど、そのダメージは大きくなる……ということでしょう。それは、業界関係者のみならず、本人にとっても不幸なことです。
このブログでは時々近現代史の話なんかも書いていますが、これは戦前の日本を戦争に引きずり込んでいった国家主義勢力にもあてはまるわけであり、この国が抱えている致命的な問題が今回の問題にも示されていると思います。


また、この件に関する著名人の発言などには、男女間で際立った温度差が指摘されてもいます。
女性の場合は問題視する意見が多いのに対し、男性側は疑問を呈したり矮小化する意見が多いという……このへんは、我が国がジェンダーギャップにおいて世界的にも最低水準であることとつながっているように思われ、そういった点からしても、これは単にお笑い界のなかだけの問題ではないんじゃないかと。



自民党が政治刷新本部立ち上げ……

2024-01-11 21:37:55 | 時事


昨日、自民党が政治刷新本部を立ち上げるというニュースがありました。

昨年持ち上がった裏金問題、逮捕者まで出る事態に、さすがに何かやらないとまずいというところでしょうか。

しかし、今さら感はぬぐえません。
そして、その顔ぶれ……これで政治刷新などといわれても、何も期待できないというのが正直なところです。


その一方で、国内においてはさまざまな課題がもちあがっています。
大阪万博、辺野古の基地建設、震災対応……これらに対するいまの政府の動きを見ていると、何を優先するべきで、何をするべきでないのか、その判断がまったくトンチンカンといわざるをえません。優先すべきことを後回しにして、どうでもいいこと、むしろやらないほうがいいんじゃないかということばかりを強引に推し進めるという……
辺野古に関しては、これまでこのブログで何度か書いていましたが、最近はアメリカの知識人ら400人あまりが共同で批判声明を出すということがありました。この中には、映画監督のオリバー・ストーンなども含まれているそうです。
辺野古基地に対しては、推理作家らが批判声明を出したり、クイーンのブライアン・メイが批判したりといったこともありました。工事に使用する土に戦没者の遺骨が混じっているとか、地盤が軟弱とか、さまざまな問題が指摘されています。にもかかわらず、あくまでも工事を進めようとする……その姿勢には、疑問を抱かざるを得ません。

そして、大阪万博は、人員不足や資材価格の高騰というかたちで震災復興の足かせになるという指摘もあるなか、とにかく何が何でもやるという姿勢。それでいて、生活に困っている被災者には20万円を貸し付けます、というばかにしたような対応……各方面から怒りの声が沸き上がるのも、無理からぬ話です。
政治を刷新するというのなら、そういうところも含めてやっていただきたい。まあ、期待はできないでしょうが……



2023年を振り返る パレスチナ紛争

2023-12-27 22:51:08 | 時事

今年のできごとを振り返る記事です。

2023年のできごとを振り返るとなれば……パレスチナ紛争のことを考えないわけにはいかないでしょう。

ハマスによる攻撃が行われ、それに対してイスラエル側が反撃し、大きな紛争に発展しました。
今なお、この紛争は続いています。


パレスチナ紛争には、もう数十年にもわたる経緯があります。
そのなかにおいて、報復の連鎖が続いてきました。もう、どちらが先に手を出したというような話ではなくなっているのです。

そのなかで、そもそもの発端と、両者の圧倒的に非対称な関係を考えれば、現状イスラエル側の行動が度を越しているといわざるをえないんじゃないでしょうか。

そして重要なのは、このパレスチナ紛争の件を、安易に反ユダヤ主義と結びつけないことでしょう。
そこを混同すると、話がややこしくなってしまいます。反ユダヤ主義やホロコーストを批判することは、いまイスラエルが行っている軍事行動を批判することとなんら矛盾しない。というよりも、むしろベクトルは同じだと私は思います。

ここで、名曲を一曲。
ソウルフラワーユニオンの「パレスチナ」です。

SOUL FLOWER UNION - PALESTINE [2021/6/19 LIVE IN KYOTO]

先述の文脈で考えるとかなり際どいと思える歌詞もありますが……世界のさまざまな問題を透徹した目で見て歌い続けてきたこのバンドだからこそ、こういうふうに歌っているということなんでしょう。

ソウルフラワーユニオンの曲をもう一曲。
カーティス・メイフィールド(インプレッションズ)のカバー「ピープル・ゲット・レディ」です。これまでにこのブログで何度か紹介してきた曲ですが、こんな日本語詞バージョンもあります。

ピープル・ゲット・レディ

原詞では、汽車はヨルダン行きと歌われます。
ある考察によると、ここでいうヨルダンというのはヨルダン川のことであり、かつてアメリカの黒人奴隷解放団体がオハイオ川のことをそういう隠語で呼んでいたという歴史を踏まえたものらしいです。
オハイオ川=ヨルダン川のむこうは自由州であり、そこには自由が待っていると……
その隠語としてヨルダン川という地名が選ばれたのは、もちろん聖書をもとにしてということでしょう。ヨルダン川のむこうは、“約束の地”とされているのです。
しかし、いまの中東において、ヨルダン川が隔てているのはイスラエルとパレスチナであり(今回紛争の舞台となっているガザ地区はまた別ですが)、そこには憎悪が渦巻いている……どうにかならないものかと思わずにはいられません。