ロック探偵のMY GENERATION

ミステリー作家(?)が、作品の内容や活動を紹介。
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Bob Dylan, Billy

2018-10-02 16:51:27 | 音楽批評
今回は、音楽記事です。
ひさびさに、拙著『ホテル・カリフォルニアの殺人』ゆかりの曲を紹介したいと思います。

ボブ・ディランの、Billy です。

映画『ビリー・ザ・キッド/21才の生涯』に使われている歌ですね。

『ビリー・ザ・キッド/21才の生涯』は、いうまでもなく、西部劇のビリー・ザ・キッドを取り上げた映画で、ボブ・ディランは、この映画に曲を提供しています。
私は観ていて気づかなかったんですが、この映画には、ボブ・ディラン自身も出演しているそうです。
で、その映画のサントラのようなアルバムがあって、そのなかにBillyも収録されています。
なぜだか、Billy1、Billy4、Billy7と3曲あって、それぞれ歌詞は似通ってますが、別の曲になってます。



アメリカのロックは、西部劇をモチーフにすることが結構あります。
以前紹介したイーグルスの『デスペラード』なんかもそうですね。あれは、一枚丸ごと西部劇をイメージしたコンセプトアルバムになっていました。
アメリカにかぎらず、イギリスのバンドであるレッド・ツェッペリンの How the West Was Won とか、クラッシュの「七人の偉人」なんかも、元ネタは西部劇です。
開拓時代の西部の、ある種なんでもありの自由という空気がロックに合うんでしょう。
それは、以前このブログで書いた“白紙の自由”であり、ロックという音楽、ロックンローラーという人種と強い親和性があるのだと思われます。


で、どのあたりが『ホテル・カリフォルニアの殺人』ゆかりなのかということなんですが……
じつは、拙著『ホテル・カリフォルニアの殺人』において、このBillyという曲の一節が引用されています。

  ビリー、やつらはお前の自由が憎い

という詞ですね。
この部分、もともとの英語詞では、Billy, they don't like you to be so free となっています。
上に書いた訳は結構な意訳のような気もしますが、深い印象を残す名訳だと思います。

開拓時代の西部的な意味での“自由”、フロンティアとその消滅の歴史、そして今のアメリカ……そういったことを考えると、なんだかビリー・ザ・キッドと彼を追う保安官たちという関係を超えた深い意味合いが潜んでいるように聞こえてくるのです。それは、このブログでたびたび書いてきた現代アメリカに関する問題意識とつながっているようでもあり……そんなわけで、ボブ・ディランの有名な曲がいくらでもあるなかで、あえてそれほど有名でもないこの曲を今回はとりあげました。