バンクシーの作品が、オークションで“自壊”というニュースがありました。
このニュース、見出しを見た時には意味がわからなかったんですが、本当に“自壊”したんですね。
落札された直後に、絵に仕込まれていたシュレッダーで自動的に裁断されたという……まるでミステリー小説にありそうな展開です。
バンクシーというのは、正体不明の覆面アーティスト。
ブラーのアルバム『シンクタンク』のジャケットの絵を描いた人……といえば、UKロックファンならわかるでしょうか。
この人は、世界各地の紛争地帯なんかで壁にグラフィティを描くなどの活動をしています。たとえばイスラエルで、あの“分離壁”にグラフィティを描いたり……それは、社会の不公正であったり、紛争の悲惨さに世の中の目を向けさせるという意図をもって行われているように思われます。
彼の作品は美術品として高値で取引されていたりしますが、バンクシー本人はあまりそういうことを好ましく思っていないそうです。今回の作品“自壊”も、そういうことの表れなのかな……と思いました。
それはまた、美術品の価値とはなんなのかという問いかけかもしれません。
美術品市場では、キャンバス一面を一色に塗っただけの絵が100億円単位で取引されるようなニュースをたまに聞きます。そこに疑問をさしはさむと、美術がわかってないみたいにいわれるんでしょうが、ものの本によると、こういうふうになったのは、オークション会社が意図的に値段をつりあげけてきたためだといいます。
以前、オークションで4000円ぐらいで落札された絵が実はゴッホの作品で、それが判明したとたん値段が数億円になったという話がありましたが……絵の値段が絵そのもの価値で決まるのなら、誰が描いたものであろうが価値は変わらないはずであって、これはどうにもおかしな話です。しかもこの値段はオークションできまったわけで、そのオークションに出品した人も、いあわせた他の人たちも、みんなこの絵の価値は4000円ぐらいということで合意しているわけです。それがゴッホの絵だとわかったとたんに一気に価値が跳ね上がる。これはおかしい。
で、バンクシーに話を戻しますが、今回の“自壊”事件は、そういう状況に対する批判も込められているんじゃないでしょうか。
アートの世界も、行きすぎたカネもうけに侵されている。オークションはその象徴であって、そこで自分の作品が高値で取引されるということが我慢ならなかったんじゃないか……絵の“自壊”というニュースをみて、そんなことを思いました。